郷愁を誘うイラストに心惹かれて読んでみました。
Obadiahを何と発音するのか分からず、オバディアと呼んでいました。
オバダイアだそうです。クェーカー教徒につけられる古い名前だそうです。
タイトルは「なんじの友達、オバダイア」という意味。
thyって何ぞやと思うと思いますが、それについてはまた後で。

(今回はお話の最後まで触れています。最後は知りたくないなぁという人はあらすじと最後にある英単語についてだけ読んでください。)

「誰かと友達になる事」に必要なことを教えてくれる一冊です。



「Thy Friend, Obadiah」
作:BRINTON TURKLE


あらすじ
少年オバダイアは困っていました。一匹のカモメがずっと彼の後をついてくるからです。
おつかいで蝋燭を買いに行くときも、たらを買いに行くときも、家族でお祈りに行く時も、寝る時ですらもカモメはオバダイアをずっと見つめています。そのことを兄弟にからかわれてオバダイアはうんざり。しかしカモメなんて嫌いだ、と言ったその日からカモメはオバダイアの前に現れなくなります。



なんでもオバダイ(6歳らしい)が主人公の本は他にもあり、シリーズものだそうです。この本はそんなオバダイアシリーズの一冊。
表紙を初めて見た時は、「このカモメがObadiahで、きっと死ぬんだろうな」と不謹慎なことを考えていました。そう思う程表紙のイラストはどこか切ない。
中のイラストも切ない。カモメがじっとオバダイアを見つめている姿なんてとてもいじらしい。オバダイアがカモメに石を投げつけるシーンでは胸がきゅっと締め付けられました。そしていつカモメが死ぬのかとハラハラしながら読んでました。

結果的にカモメは死にませんでした。ぴんぴんしてます。
すみません薄汚れた心で読んで、という感じですね。
なので安心して読んでください。ティッシュとか用意しなくて大丈夫です。

ただ勝手に涙を通じて命の尊さとか友情とかを教える本だと思っていたので、
読み終わった時には
「何を教えたい本なのかな...?!」と混乱していました。カモメが何故オバダイアの後を追っていたのかもわからない。

でも追っていた理由なんて重要じゃないのだと何回か読んでやっと気付きました。
全ての行動に理由を求めるのはよくない癖ですね。
重要なのは「歩み寄ること」なんですね。

理由もわからず、どこに行くにもくっついてくるカモメにうんざりしてたオバダイア。
私なんかは鳥がくっついてきてくれたら喜びますけどね、6歳くらいの男の子だとそうもいかないらしい。
オバダイアは5人兄弟の下から二番目。他の兄弟たちはいいおもちゃを見つけたとばかりにカモメを指差して「ほらお前の友達がいるぞ(笑)」とからかってきます。カモメを利用したジョークのひとつやふたつ言えれば丸く納まりそうなものですがそこは6歳、真っ向から友達じゃない!とマジ切れします。大変素直でよろしい(適当)

しかしカモメに石をなげつけるのは大変よろしくない。投石、ダメゼッタイ。
けなげなカモメちゃんはそれでもオバダイア小僧の後を追います。

しかしある日、オバダイアがおつかいで小麦粉を買いに行こうとするとカモメの姿が見当たりません。季節は冬で雪が積もっていたので、雪が嫌いなんだなと結論付け、カモメがいないことを喜ぶオバダイア。腹立つボーイだな。

製粉所のジェイコブさんはとても優しい人で、1セントをオバダイアにあげます。
そしていいます、「無駄遣いしちゃだめだよ」
1セントを無駄遣いするって逆にどうすればいいのって感じですが、つまりは貯金するんだよってことですね。

ところがどっこい、帰り道凍った道にすべってオバダイアはすってころりん。
1セントもポケットから転がり落ちてどこかに行ってしまいました。

服が濡れたせいで寒さに震えながら家路を急ぐオバダイア。たくさんの鳥たちがそんな哀れなオバダイアを屋根の上から見下ろしていますが、あのカモメの姿はありません。

小麦粉を台無しにしたことをお母さんに怒られしょんぼりオバダイア。慰めを求めるように彼の部屋の窓の外を見ます。オバダイアが家にいるとき、いつもカモメは彼の部屋の窓から見える納屋の煙突にいるのですが、やっぱりいない。

次の日も、次の日も、その次の日もカモメは現れない。
毎晩オバダイアは窓の外を見ますが、カモメは煙突に戻ってきません。

もう完全にカモメは死んだと思っていたので涙ぐみながらページをめくりました。

上でも述べましたが、生きてました。

ある日オバダイアが波止場に行くと、ひょっこりあのカモメが姿を現しました。嬉しい(私が)
しかし久しぶりにみたカモメちゃんの嘴にはなんてこった、釣り糸が絡まってる・・。

なんでも釣り糸から魚を盗もうとしたらしい。
罰が合ったんだよと憎まれ口をたたきながらも、オバダイアは釣り糸を取ってあげます。そしてカモメは元気よく飛んで行きます。その姿を見送るオバダイア。オバダイアはツンデレ。


オバダイアに釣り糸をとってもらう時のカモメのちょっと申し訳なさそうな顔とオバダイアの優しそうな顔がとても印象的。かわいい(カモメが)

その夜オバダイアが寝ようとすると、あの納屋の煙突にカモメがとまっているのに気づきます。
煙たく感じていた前とは違い「寒くないかな」とカモメのことを案じます。
そして温かい羽根を持ってるから大丈夫だよ、と慰めてくれたお母さんにオバダイアはいいます。
「あのカモメは僕の友達なんだ」
「彼を助けたから、僕も彼の友達だよ」








しつこいですがカモメが死ななくてよかった。
正直一週目ははて?と思っていたのですが、とても良い絵本でした。

途中でちらりと触れましたが、「自分から歩み寄る」ことの重要さをオバダイアから学びました。
釣り糸をとってあげるという行動をすることによって、自ら関わりを持ち、そして自分の行動によって喜ぶ姿を見て友達だと思えた。
私たちはよく第一印象だけで相手を判断して、関わりを持つ事をさけようとします。
でもほんのちょっとのきっかけで人の印象なんて変わるんですね。
だから自分から少しでも関わろうとすること、歩み寄ることが大切なんですね。
自分のしたことで喜んだり笑顔になってくれたら、ちょっと苦手かもと思ってた人でも嬉しいですもんね。

そして「忍耐」も人付き合いに大切なことなんだと学びました。
オバダイアがカモメに対して感じていたように、私たちは他者を
うざったく感じることもあるし、めんどくさいと思うこともある。迷惑かけられることもある。
他人の考えることってよくわからない。だから友達、人と付き合おうことは時に忍耐力が必要になることもありますよね。
でもやっぱり会えなくなると寂しいし、助けたり助けられたりすることによって結びつきが強くなっていく。そこが人付き合いの醍醐味ですよね。

私もアメリカに来て、未だに自分から話しかけたり関わる事があまりできていません。見た目や印象で勝手に性格を決めつけて、関わることも多々あります。
そして上手く英語が話せないので、せっかく話しかけてもらっても分からなくて、流してしまうことも結構あります。

でもそれじゃいけないとこの絵本を読んで思いました。
もちろんこれからも英語が分からず話に困る事もたくさんあると思いますが
それでも自分から、一歩でも歩み寄る事が大切ですね。



なのでまずは私に全く懐かないホストファミリーの猫様と友達になれるように頑張ろうと思います。
え?人間?・・・あ、見てカモメが飛んでる!


英単語について
 
 この絵本の英語はとっても古く、またクェーカー教徒の用語が多かったので、中々普段の生活ではお目にかかれない単語ばかりで勉強になりました。
 タイトルにもあるThyは「なんじの、そなたの」という意味。
 yoursの古いversion というところですね。クェーカー教徒が用いる、または古い詩等に登場する
古期英語だそうです。
thou:なんじは、そなたは (二人称単数主格)
thee:なんじを(に)    (目的格)
thy:なんじの、そなたの   (所有格)
 
 文中にでてくるのはtheeとthyだけです。主格thouの出番は残念ながらありませんでした。

First Day: 日曜日 
 Meeting: 礼拝の集会

上二つもクェーカー教徒が使う用語となります。クェーカー教徒の方はFirst DayにMeetingに行くそうです。

以下はクェーカー教徒関係なく、興味を持った単語になります。

1.blacksmith: 鍛冶屋
2.giggle: くすくす笑う
3.feel better: 気が晴れる
4.It serves A right for B: AがBした罰だ

もっとたくさんあるのですが、キリがないのでとりあえず4つ。


1.blacksmithはよく絵本で見かけます。よく見かけるのに中々意味を覚えられない笑
blackとあるのでもちろんwhitesmithもいます。whitesmithはブリキ職人、銀メッキ職人だそうです。
2.giggleはニヒルな私の心が反応したのでチョイスしました。この「くすくす笑う」は人を馬鹿にする笑い方を指します。
3. feel betterは体調がよくなったという意味でよく使いうし、耳にします。でも身体だけでなく精神的にも回復したときにも使えるそうです。
4. It serves A right for これもニヒルな私の心が反応したのでチョイスしました。オバダイアが魚を盗もうとして嘴に釣り糸がからまってしまったカモメに言った言葉です。私も誰かの悪口言う時に使おうと思います。嘘です。

重要なことを言い忘れていました。カモメはsea gullと言います。

 
 

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