衆院解散で政権を作り直せの声 (日刊ゲンダイ2011/2/1)

どっちが悪党なのか

国会はもう解散・総選挙をした方がいいのではないか。ようやく始まった予算委員会を見ていると、そんなヤケッパチ気分になる。

民主党は審議前から、「取り込めるものがあれば取り入れる建設的な国会にしなければならない」(菅首相)と予算案の修正をにおわせ、予算を早く通さないと国民生活に重大影響が出ると脅してきた。これには連立を組む国民新党の亀井静香代表も「最初から修正、修正というのはおかしな話だ」と怒っていたが、始まる前から修正を口にするなんて前代未聞の与党だ。予算案こそが、政党の理想を具現化するものではないか。それなのに、菅は「中身」よりも「とにかく通過」しか頭にない。
改めてハッキリしたのは、権力亡者の正体だ。国民生活よりも政権維持。何かをやりたいのではなく、ただ権力にしがみつきたいだけということだ。

それが予算審議の最初からあからさまになったのだが、一方の自民党だって同じ穴のムジナだ。菅政権を解散・総選挙に追い込むために、どんなイチャモンでもつけて予算審議を長引かせるつもりだ。
小沢一郎元代表が強制起訴されたきのう(31日)も、さっそく証人喚問要求をしていたが、よくやる。自民党幹部は「これから毎日、首相に『あなたはどう判断するのか』と聞ける」と言ったというから、またぞろ「政治とカネ」で国会を空転させるつもりだろう。
国民はもうウンザリなのである。

◆予算を“人質”に党利党略のデタラメ

ねじれ国会でカギを握る公明党も、何がしたいのかよく分からない。とりあえず、菅政権を追い詰めたいのだろうが、かといって統一地方選前の解散にも及び腰だ。だとすると、どこまで「菅降ろし」に本気なのか。常に権力の周辺にいて、チョロチョロしているヌエ政党だけに、こちらも党利党略なのである。政治評論家の浅川博忠氏が言う。
「3党にはそれぞれの思惑があるのです。民主は予算案の修正でも何でもして、とにかく年度内に通したい。さもないと4月から地方の一括交付金も滞り、統一地方選は惨敗だからです。
一方、自民の狙いは解散。しかし、公明党にとっては解散が早すぎるのは困る。統一地方選から最低2カ月は間隔が欲しい。自民はイケイケで、与謝野経財相の問責、菅首相の任命責任と攻め立てるシナリオで、そうなれば菅政権は死に体になっていくのでしょうが、公明党はどうするのか。今、コブシを振り上げているのは、条件闘争かもしれません」
菅は「熟議の国会」などとホザいていたが、お笑い草だ。
予算を“人質”に党利党略の有象無象がガヤガヤとやり合っているのが予算委だ。その結果、何が置き去りにされたのか。予算次第で直撃を受ける国民生活なのである。

◆国民生活と景気回復を考えない国会は不要

改めて言うまでもないが、政治とは国民生活のためにあるものだ。国民の暮らしと安全を守ることが第一義で、景気を良くしてくれない政府なんて不要だ。
それなのに、与野党ともに国民生活ソッチノケで、くだらない政争に明け暮れている。こんな政党はゴメンだし、目障りだ。とっとと消えてなくなって欲しい。それが国民の正直な気持ちだ。
経済アナリストの菊池英博氏も「今の与野党の争いは見るに堪えないアホらしさ」と切り捨てる。
「だって、そうでしょう。国民のための経済政策をめぐって、予算委員会で論争しているのであればイザ知らず、民主も自民も大増税路線は一緒だし、ここまで日本経済をメチャクチャにした超A級戦犯は誰なのか。自公政権で経済の司令塔だった与謝野馨さんですよ。その人がシレッと民主党の大臣席に座っている。国民はアホらしくて、見ちゃいられません」

別に野党・自民党に「民主党の醜聞追及をするな」と言っているわけではない。与野党の権力闘争は健全な姿ではある。しかし、その前提として、政策論争がなければおかしい。各政党ともに実現したい政策があって、そのための権力闘争なのである。
ところが、民主、自民の経済政策はほとんど同じで、だから、与謝野が入閣した。そんな両党が「悪いのはお前だ」「こっちに権力をよこせ」とやり合っている。「いい加減にしろよ」である。
「自公政権の失敗は緊縮財政の結果、デフレを加速化させ、税収が上がらなくなったところにリーマン・ショックが重なったことです。その失敗を反省し、民主党政権は『国民生活が第一』という一大政策転換をし、約7兆円の補正予算も組んだ。しかし、鳩山、小沢氏は反主流派に転落し、菅政権はあろうことか、自公政権と同じ失敗を繰り返そうとしている。政権交代はまったく無意味なものになってしまいました」(菊池英博氏=前出)

民主党がいまやるべきことは政権交代の原点に戻ることだ。鳩山・小沢路線への回帰なのだが、その小沢はきのう、強制起訴され、政治活動は小休止。この間、菅一派はますます、自公路線に舵切りし、しかし、国会では空疎なドンパチが繰り返されるのだろう。
やり切れない話だ。

◆新しい政権を一から作り直した方が効果的

菅政権にとっては、正念場は3月だ。予算案と関連法案が野党多数の参院で通るのか。否決されたら一気に政局だが、国民はもう3月まで待てない。こんなくだらない国会の結果、予算が執行できず、経済混乱ではたまらないのだ。無意味な与野党対立で国民に迷惑をかけるのであれば、今すぐにでも解散・総選挙をしたらどうだ。新しい政権を一からつくり直した方がよっぽど効率的というものだ。
もちろん、解散すれば政界はグチャグチャになる。民主も自民も過半数なんか取れっこないし、どっちが勝っても参院では再びねじれが待ち受けているからだ。だったら、大連立でも政界再編でもいいじゃないか。与党と野党の違いもはっきりしないような今の国会よりは、はるかにマシというものだ。

前出の浅川博忠氏が言う。
「早期解散となれば、政界は何が起きても不思議ではありません。政策や主張が合えば、民主党と自民党の一部が合流してもいい。実際にそれを口にしている自民党幹部もいます。小沢新党も可能性が出てきます。本人は裁判があるから動きにくいだろうが、菅路線との違いを明確にすれば、ひとつの集団ができる。国民にとっても、その方が分かりやすいかもしれませんよ」

法大教授の五十嵐仁氏(政治学)もこんな指摘をする。
「民主党も自民党も内部に政策的なねじれを抱えています。政界再編をするのであれば、両党が分裂してスッキリした形になって欲しい。TPP参加や消費税増税などを主張する都市型政党と、農村や地方を大切にする政党という色分けもあり得ます」 そうやって、スッキリした形で国民に信を問い、新たに政権をつくり直すべきなのだ。

国民生活と経済発展のための政治をやらなければ、日本もエジプトのようになる。




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