小沢一郎 逆襲シナリオ (日刊ゲンダイ2011/1/6)

周囲の議員に「私はルビコン川を渡った」と語り、高揚している菅首相は国民生活そっちのけで“小沢切り”に血道を上げている。

国民が選んだ代議士である小沢一郎元代表に対し、議員辞職を迫っているのだから、トチ狂っているとしか思えないが、それでは小沢はどう出るのか。狂気の菅・仙谷コンビに対する逆襲シナリオ――。

◆菅・仙谷コンビに突きつける

小沢は菅が「出処進退」という言葉で議員辞職を迫った4日、BS11の番組(収録)に出た。「僕のことなんかどうでもいい。国民のために一生懸命何をやるかが問題だ」と語っていたが、その時の様子をBS11キャスターで政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏はこう言う。
「小沢さんは自分のことや国内の問題だけではなく、もっと大きな理念の話をしました。菅さんとは次元が違いすぎて話が噛み合わない、言葉が通じないので仕方がない。こんな割り切りと達観の境地にいるのかなと感じました」

小沢嫌いの新聞はやたらと「小沢が追い詰められた」と書いているが、小沢の受け止め方が違うようだ。「コイツはしょうがない」と菅にサジを投げたのである。もちろん、小沢にはまだいくつもの“逆襲シナリオ”がある。まずは、いくら菅が吠えても無視するシナリオ(1)。
「仙谷さんは、『出処進退は過去の例を参照しながら』とか言っていますが、そもそも検察審査会による『強制起訴』は過去に例がないのです。今回は、『裁判で白黒ハッキリさせろ』という意味での強制起訴です。それで離党や議員辞職を迫るのはムリがある。勧告決議には高いハードルがあるし、小沢さんも動かないでしょう。そうなれば、逆に菅執行部の指導力が問われることになるのです」(鈴木哲夫氏=前出)
小沢邸で行われた元日の新年会には、120人の国会議員が集まった。小沢嫌いの大メディアは「昨年の160人より少ない」と書くが、菅サイドは、一兵卒の小沢の元にこれだけの人数が集まったことに焦りまくっている

◆イザとなれば単独離党のウルトラCも

政治ジャーナリストの野上忠興氏は、エキセントリックな菅執行部の議員辞職要求は「恐怖の裏返し」とみる。小沢サイドはこうした相手の動きを冷静に観察、分析し、次の一手を考えている。
「菅首相は内閣改造をちらつかせ、人事で小沢グループの結束にクサビを打ち込もうとするでしょう。しかし、小沢グループは懐柔されないでしょうね。彼らが政権への協力を拒めば、菅政権は立ち往生。輿石参院会長が、『菅首相、勝手にどうぞおやりなさい』と言うだけで、参院は動かず、国会対策も何もできなくなります」

こうした非協力作戦がシナリオ(2)なら、“ウルトラC”の切り札、シナリオ(3)もある。ズバリ、小沢の単独離党だ。
「小沢氏が離党すれば、菅首相は何も手出しできなくなる。もちろん、小沢氏がハグレガラスになってしまえばそれまでですが、グループの結束が固ければ、党の外から仲間の議員たちに指令を出せる。彼らが行動を起こせば、『内閣不信任案』も通る。小沢グループが乱を起こし、宮沢内閣を不信任に追い込んだ1993年パターンです。菅政権は気が気じゃない国会運営になる。
小沢氏は党外からフリーハンドを操りながら、裁判で無罪になった後、民主党に戻ればいいのです」(野上忠興氏=前出)

選挙で揺さぶる“奥の手”シナリオ(4)もある。地方選挙で連戦連敗の菅―岡田執行部は、13日の党大会で血祭りに上げられるのは間違いない。小沢の強みは地方組織と民主党の最大の応援団「連合」を押さえていることだ。両者がタッグを組んでノロシをあげれば菅執行部はグラグラになる。
小沢はさまざまなシナリオを見越している。



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