岡田官房長官 小沢幹事長という手もある  (日刊ゲンダイ2010/12/4)

政権浮揚には小沢復権しかない


◆政権にかじりつくなら小沢一郎にヒレ伏す以外なし

─またグズ菅は仙谷をクビにできずにモタモタオロオロ。追い詰めてからの改造では支持率はゼロに近づくだろう

3日午前に飛び出した仙谷官房長官のビックリ発言に、永田町がどよめいた。柳田前法相の辞任で兼務となっている法相ポストについて、「任命権者から何も言われていない。法相に専任せよ、となるかもしれない」と記者会見で漏らしたのだ。「人間の体はひとつしかない」との物言いもダメ押しとなり、「ついに官房長官を辞める気になったようだ」と政界に衝撃が走った。
ところが、午後の会見で「すべては人事権者の首相の意思だという一般論」と辞任を否定。法相専任の考えも「まったくない」と強弁した。これにはみんなズッコケた。「法相で閣内に残れるか観測気球を上げた」とか「仙谷を切れと首相に進言している身内を牽制した」とか、いろんな解説も聞かれた。ただ、予想される結末はどれも同じ。「仙谷が大臣を続けられる可能性はゼロ」というものだ。
「仙谷官房長官の辞任は既定路線です。問責決議案が可決した大臣が閣内に居座るようなことになれば、来年の通常国会は、冒頭から野党の審議拒否で空転します。法相として居座るのも不可能。野党が譲歩せざるを得ないような交換条件が見つかれば別ですが、最低でも馬淵国交相と2人は代えざるを得ない。民主党内のコンセンサスもできています。仙谷さんだって百も承知でしょう。さすがに続けられるとは思っちゃいません。でも、問責可決ならすぐに辞任という前例はつくりたくない。それで粘っているのです」(政治評論家・有馬晴海氏)
菅首相もグズグズしている。この日も内閣改造について「全く考えていない」と明言した。「仙谷続投」のポーズを崩さないのだ。



◆自慢の口が命取りで大新聞も敵に回した疫病神

まったく呆れてしまう。仙谷の辞任を先延ばしすればするほど、菅内閣の支持率は落ちていく。国民は、菅にはリーダーシップがないと思っている。共同通信の世論調査によると、「首相に指導力がある」はわずか1・1%だ。その上、首相の腹一つで決まる人事にモタモタ、オロオロしていては、上がり目はない。「やっぱりダメだ」となる。それが菅には分からないのだから致命的だ。
仙谷は大した政治家ではない。民主党の代表や幹事長をやっていないし、官房長官としても力不足だ。弁護士だから理屈をこねるのは得意なのだろう。その達者な口が命取りになったのだから世話はない。「“柳腰”というシタタカで強い腰の入れ方もある」と言葉の使い方を間違えたり、新聞報道に基づき質問した野党議員を「最も拙劣な質問方法だ」と挑発したり。ねじれ国会の難局を乗り切る調整能力を発揮するどころか、失言や暴言を連発し国会審議を“妨害”し続けた。
おかげで3日に閉幕した臨時国会で成立した法案は、37本のうち14本。成立率は、この10年で最低の37・8%というテイタラクである。
この程度の実力でもやり手に見えるのは、ほかの民主党議員がだらしないだけである。
中国漁船衝突事件や尖閣ビデオの対応でも下手を打ち、「反小沢」で共闘していた大新聞まで敵に回した。国会での取材撮影に対して「極秘資料を“盗撮”された」とクレームをつけてからは、もはや修復不可能な状態である。
一人前の顔をしてシャシャリ出るくせに、やることなすことデタラメばかり。こんな疫病神のような官房長官など、さっさとクビにすればいいのだ。



◆寝技ができない幹事長も官房長官はやれる

「石にかじりついても」という菅が本気なら、道はひとつしかない。小沢元代表に頭を下げ、「国民の生活が第一」の路線に戻すことだ。経験も能力もない連中が「反小沢」というだけで注目され、重要ポストを独占した政権に未来はない。仲間を批判するだけで、みんなに評価されて出世する。そんな企業はどこを探してもないだろう。
いまの民主党政権のように、実績と無関係に権限が与えられる組織は珍しい。これでは百戦錬磨の官僚にやりたい放題やられるのも当然である。政治主導を実現できるような陣容になっていないのだ。
菅が首相を続けるのを前提とすれば、小沢は官房長官が適役だ。長年の政治活動で築いた政財界の人脈や外交チャンネルを駆使し、官僚も黙らせることができる人材はほかにいない。ただ、検察審査会による強制起訴を待つ身では限界もある。裁判で無罪を勝ち取り、みそぎを済ませるまでは、閣僚を務めるのは難しいかもしれない。
だったら、岡田幹事長でもいい。実際、永田町に流布されている内閣改造リストには、どれも「岡田官房長官」と記されている。

「原理原則を重んじる岡田氏は、融通が利かない政治家です。根回しが下手で、寝業や腹芸もできません。そのため、党内をまとめながら野党と調整し、その一方で選挙戦略を地方も含めて練らなければならない幹事長職は、本来、得意とするポストではないでしょう。むしろ、政策を前面に出して正々堂々と渡り合うことができる官房長官ポストの方が向いています」(政治評論家・山口朝雄氏)
岡田は小沢とも悪くない。岡田が衆院選で初当選したとき、自民党の幹事長は小沢だった。岡田にとって小沢は「政治の父」だ。それは今も変わらない。



◆岡田の「脱小沢」と仙谷の「反小沢」は別物

国会招致をめぐり会談したときも、岡田は小沢に礼を尽くし、低姿勢を貫いた。小沢も悪い気はしなかっただろう。岡田に年齢をたずね、「そうか。もうそんなトシか。早いなあ」と笑みを浮かべたという。
「岡田の“脱小沢”と、仙谷らの“反小沢”は違う。小沢はそう考えています。岡田だって、小沢を国会に引っ張り出そうなんて考えていません。本気なら、幹事長命令を振りかざし、離党や除名も辞さない態度を示すでしょう。小沢が公認候補に総額4億4200万円の資金を配ったことについて聞かれ、“説明が必要”と踏み込んだが、岡田には仙谷のように政治的に葬ろうなんて発想はありません。2人はうまくやれますよ」(政界事情通)
民主党は、コップの中で権力闘争をやっている場合ではない。党内のモメ事がなければ目立てないような連中は片隅に追いやって、国民のために仕事ができる体制を整えるべきだ。
財務省の言いなりになり、バカの一つ覚えのように「財源がない」とマニフェストを後退させ、増税路線に向かいだしたウソつきたちに任せていては、国民の暮らしは良くならない。
いまこそ、国民との約束は何が何でも果たそうとする小沢の出番なのである。




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