小沢一郎へのアドバイス その6


(THE JOURNAL: 宮崎学 2010年10月25日)  http://p.tl/ctAw


 原稿の〆切りを守らない宮崎学である。

 口うるさい編集者の手前、しばらく我慢していたが、少し書きたくなった。

 これまでのアドバイスに従って弘中弁護士に刑事事件の弁護を依頼したようだ。それはよろしい。ただ検察審査会議決の執行停止、指定弁護士選任の仮差し止めの方はまずいぞ。東京地裁、東京高裁と負け続けている。代理人になっている弁護士は、則定衛、川原史郎のヤメ検2人と、かつて小沢の秘書をしていた南裕史だが、国との闘い方を知らないようだ。ヤメ検はやめておけと何度も言ってきたのに放置するから、この結果は自業自得ではある。

 物知りの話によると、弁護団は次のような主張をしている。

 検察審査会は「検察官の公訴を提起しない処分の当否の審査」(検察審査会法第2条)を担当するとされているのに、今回の議決では、告発がなく、不起訴処分の対象にもなっていない事柄が起訴すべき「犯罪事実」と突然認定された。検察審査会法に違反した議決とそれに続く指定弁護士の選任は「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない
と定める憲法第31条に違反している。

 これに対し、裁判所は「刑事裁判で主張しろ」と言っている。論理はとってもシンプル。犯罪事実という刑事裁判の話は、刑事裁判で主張しなさいよということだ。

 だったら刑事裁判では争えない、次の主張で勝負すればいい。

 東京地裁から選任された3人の指定弁護士は検察官役を務めるが、改正検察審査会法によれば、起訴状に書く「公訴事実」は検審の議決に拘束され、検察官のように自由に決める裁量がない。議決に違法な点があっても見過ごして起訴しなさいという規定だ。これは刑事裁判の一方当事者の適格の問題であり、憲法31条や「裁判を受ける権利」を保障した32条、「公平な裁判所による迅速な裁判を受ける権利」を定めた37条などに違反している。改正検察審査会法は違憲立法である。

 最高裁への特別抗告でこの主張をぶつけてみろ。また、新たに指定弁護士選任取り消しの訴訟を東京地裁に起こし、最高裁まで争え。

 実は、指定弁護士の権限は立法段階でも論点になったそうだが、法務省が「指定弁護士ごときに検察官と同等の裁量を与えるのは許されない」として制限したという話も聞いている。

 さらにもう1点。憲法は「公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利」(第37条)を保障しているが、裁判員制度の導入に当たり、政府は国会答弁で「憲法は裁判官の独立や身分保障を定めているので、37条の『公平な裁判所』は基本的に裁判官を想定していると考えられる。ただ裁判官以外の者が加わることを禁じていない」という解釈を示し、裁判員法は合憲としている。裁判に国民が関与することに抵抗してきた最高裁も、裁判員の多数だけで有罪にできない(裁判官1人以上を含む過半数で有罪を決める)制度で一応矛を収めた。起訴は裁判の一部であり「検察官が行う」(刑事訴訟法第247条)とされ、例外として、裁判官による特別公務員暴行陵虐事件などの付審判手続きがある。改正検察審査会によって、例外がもう一つ増えたが、裁判官の関与がない。

 裁判官はもともと、国民などというものは、とんでもないバカで何も分かってない、自分たちを中心に司法は動いていると考えている。だから「やはり裁判官や検察官じゃないと駄目です」とくすぐってやればいい。この点だけは、ヤメ検も検事当時、自分が権力と誤解していたから分かると思う。裁判員制度と改正検察審査会法をからめて、国民の司法参加が合憲か違憲かを問いなさい。

 ところで最初のアドバイスに書いたように、東京地裁や東京第5検察審査会に対し、職権で議決をやり直すよう求める申し立てをしたんだろうな。これも重要だぞ。

 それにしても、どんどんややこしくなるなあ。アドバイスを書くのも疲れる。でも本業の合間に気が向いたらまた書いてやろう。