[小沢裁判]きょうにも「検察官」役決定  (日刊ゲンダイ2010/10/20)

第2東京弁護士会は本気でこの人物を推薦するつもりか

◆「小沢逮捕」のウワサも飛び交う異常事態

裁判になれば、「100%無罪」と専門家が口をそろえる小沢「強制起訴」裁判。だから本人も離党をせず、受けて立つ

つもりだが、そうも言ってられなくなっている。
裁判で小沢と対決する「検察官」役の指定弁護士に、恐るべき顔ぶれが並ぶ可能性が強い。特捜部OBの弁護士・五十嵐紀男元特捜部長と若狭勝元副部長。さらにもう1人が、検察審で強引な議決を出させた吉田繁実弁護士だ。東京地裁の要請を受けて第2東京弁護士会はきょうにも指定弁護士を推薦するが、本当にこの3人だと、小沢本人を立件できなかった東京地検特捜部の“敵討ち”をすることも大ありなのだ。その流れを押し戻せるのは、石川知裕議員だけになっている。
この吉田弁護士に対しては、懲戒処分請求が弁護士会に出ている。提出したのは、ジャーナリストの宮崎学氏だ。
「吉田弁護士は今回、明らかに審査会をミスリードした。日弁連作成の審査補助員マニュアルでは、補助員は『議論が明らかに間違った方向に進んでいると認められる場合は適切な助言を行い、是正する』とし、例として『証拠によらないで、被害感情だけから、一定の結論・判断を採ろうとしている場合』などが該当するとしている。しかし、吉田弁護士は、議論を是正するどころか、犯罪事実を加えるなどムチャクチャでした。これは到底、納得できません」
吉田弁護士は学習院大を卒業し、88年に弁護士登録。第2東京弁護士会で刑事弁護委員長や副会長を歴任し、刑事事件のベテランとされる。だが、「国選」が多い。昨春、傷害事件の被告人として吉田弁護士の弁護を受けたA氏はこう憤る。
「国選だったのですが、面会するなり『大学教授のオレが出てくれば誰も逆らえない』『オレの言うことを聞いていればいい』という態度で、私の話にほとんど耳を貸さない。裁判でも『検察の証拠を認めないと、アナタの言い分も認めてもらえないよ』などと、検察の主張に沿うように誘導するのです。あまりにヒドイので弁護士会に解任請求し、その後、無罪となりました」
吉田弁護士に取材を申し込んでも、事務所は「取材は受けていない」と言うばかり。にもかかわらず、大マスコミに対しては「政治資金規正法の立証は難しいのは分かっている」などと“解説”している。小沢弁護団が議決無効を求めて提訴した際も「検察官の起訴に対し、不服申し立てをするようだ」と、すっかり“検察官気取り”だった。注目事件の検察官役になるのが楽しみで仕方ないようだ。だが、犯罪事実を付け加える乱暴をしてまで強制起訴議決に持ち込んだ審査補助員がこのまま「検察官役」に就いていいのか。ある弁護士がこう語った。
「第2弁護士会がまともな感覚なら、評判が芳しくない吉田氏を選ぶことは考えにくい。もし選ばれてしまったら、『議決書を作った自分の判断が正しいことを立証してやろう』と、吉田氏が強引な裁判を行う可能性もあります。実際、関係者のガサ入れや、小沢逮捕もあり得るなんてウワサも飛び交っている状態です」
第2東京弁護士会はこんな“問題”弁護士を本当に選ぶのか。取材を申し込むと「質問はファクスで」と言ったまま回答ナシだった。「法と証拠にのっとり、人権を守る」ために存在する弁護士会だが、小沢裁判だけは異様な“例外扱い”になっている。


─石川知裕議員は早く会見しないと手遅れになるゾ

◆その検察調書が小沢を不利にしている

検察審が小沢を強制起訴した大きな根拠が、石川知裕衆院議員(無所属)の検察調書だ。となれば、石川議員は緊急に記者会見を開いて、「私が検察に供述した内容を、検察審の11人や弁護士はオーバーに受け止めてしまった。実際は違う」と報道陣にきちんと説明した方がいい。
今年1月、政治資金規正法違反で逮捕された石川議員は、検察の取り調べに対し、4億円を収支報告書に記載しないことを小沢に報告し、了承を得たと供述したことになっている。この「石川供述」が、検察内部で、小沢を共謀・共犯で起訴できるかどうかの議論の的になった。最終的には、「石川供述は具体性に欠ける」として不起訴処分になったのだが、先月の検察審でシロウト11人は逆に「合理的に説明している」として、強制起訴にした。
「それについて、不思議なことがあるのです。石川議員は、自分の検察調書が親分の小沢氏を苦しめてきたことを百も承知している。本人は、検察調書に不満があるそうで、自分の公判では検察調書を否認するという。ところがですよ、保釈され、国会活動に戻った今年5月の検察の再聴取のときに、“以前、お話ししたとおりです”と自分の供述を変えなかったそうなのです。“自由の身”であるのに、検察調書に文句を言わなかった。それがために検察審の11人は、再聴取でも石川供述はブレていない、小沢氏に報告し、了承を取ったのは間違いないから共謀が成り立つと、強制起訴にしたわけです」(司法記者)
石川議員の真意はどこにあるのか。知っているのは本人なのだから、洗いざらい、しゃべることだ。検察調書の真偽を説明し、検察審11人の“誤解”を解けるのは、石川議員だけなのである。黙っていると、小沢裁判まで強引に進められ、手遅れになってしまう。



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