民主党は代表選びを間違えた 小沢派は脱党か 代表選をやり直せ

(日刊ゲンダイ2010/9/28)

菅に投票した国会議員206人、党員・サポーターの国と国民に対する罪は極めて重い

─小沢に投票し首相にしておけば、今の無能民主政権と全く違う国政の様相になっていた
─このまま放置していたらこの国は自民党政権の延長線上で劣化衰退するのは必至だと専門筋「世論調査が大好きな大新聞テレビはなぜ緊急調査をしないんでしょう。いま実施すれば、たぶん菅内閣の支持率は大暴落ですよ。それほど今回の対応はブザマのひと言。私の周りの人は、みんなア然としていますよ」
こう語るのは、元レバノン大使で評論家の天木直人氏である。
中国漁船の船長釈放をめぐり、右からも左からも、野党からも党内からも「弱腰だ」「最低だ」とののしられている菅内閣。10日前の改造内閣発足では60%を超える支持率だったが、もう半分以下に暴落したのは間違いない。見通しの甘さ、信念のなさ、対応の悪さと、すべてにおいてスッカラカンの菅内閣に、だれもがサジを投げた感じだ。
軍事ジャーナリストの神浦元彰氏はこう言った。
「どんなリアクションがあるか。落としどころをどうするか。そういうことも考えて中国人船長を逮捕したのならまだしも、何の見通しも持っていなかったわけです。呆れてしまいますね。海上保安庁から第一報を受けた当時の前原国交相が、後先を考えず、強硬論を主張し、政府はそれに引っ張られた。ところが、温家宝首相にガツーンと言われて、慌てふためいた仙谷官房長官が収拾に動いた。その間、菅首相はずっとカヤの外。関係者に聞くと、後で新聞を読んで経緯を知り、何をどうしていいのか分からない状態だったそうです。もともと前原さんという政治家は、4年前の民主党代表時代の偽メール事件といい、昨年の八ツ場ダムといい、食い散らかして進むだけで、総合判断のできない人。そんな人に高度な外交問題を任せ、総理には判断能力がない。ハッキリ言って、菅内閣は政権の体をなしていないのです」


◆総辞職秒読みの菅は自爆解散に走る
こんなアマチュア内閣だから、 あさって30日の中国漁船問題集中審議とそれに続く臨時国会が“地獄”になるのは間違いない。
「菅内閣は支持率が高い。しかも“脱小沢”が売りだから、野党は攻めにくかった。しかし、思わぬ敵失で大きな攻撃材料ができ、世論も菅内閣に批判的になったから、ガンガン攻めてきますよ。とくに今回は、内閣のまとめ役である仙谷官房長官をターゲットにできる。那覇地検に政治判断を負わせた無責任ぶり、責任転嫁のずるさは国民だれもが呆れています。政権の司令塔である仙谷官房長官が集中砲火を浴びてズタズタにされたら、この内閣は一気に壊れかねません。中国との貿易がさらに悪化したり、フジタ社員の解決が長引けば、菅内閣は八方ふさがりの中で行き詰まるしかない。支持率急落が続く中で、年内いっぱい持つかどうかの展開になるでしょう」(政治評論家・浅川博忠氏)
バカ丸出しのスッカラ菅内閣が退陣に追い込まれるのは結構。絵に描いたような無能無策なのだから自業自得だ。
しかし心配なのは、政権しがみつきに命をかける菅が、気が狂って自爆の解散・総選挙に打って出ることだ。そうなったら、民主党は衆院でも大きく過半数を失い、政界は野合でグチャグチャになっていく。せっかくの政権交代がわずか1年余りでパーになるのである。これは最悪だ。

◆だから小沢を総理にしておけばよかったのだ
それだけに、民主党は代表選びを間違えたと言うしかない。蓮舫とか江田五月は、自分たちのバカさ加減が嫌になっているはずだ、きっと。
2週間前の代表選で、国家観もビジョンも経験もある小沢を首相に選んでおけば、今の無能政権とは全く違う国政になっていたはずである。
「船長は釈放された。にもかかわらず、中国は対決姿勢をエスカレートさせている。これが不気味です。菅内閣が問題を長引かせたせいで、振り上げた拳を下ろせなくなってしまった中国は、日本企業の活動制限にまで動くかもしれません。そうなったら、デフレ大不況の日本経済はドロ沼です。中国嫌いの前原外相が大きな顔をしている菅内閣に、日中関係修復は望めません。その点、小沢氏が首相になっていたら、ここまで問題をこじらせるヘマはしない。中国ばかりか、アメリカだって小沢氏には気を使うから、問題自体起きなかったと思います。国家の危機にあっては、定見と重みをもった政治家が首相でないと、国も国民生活も成り立たないのです」(経済アナリスト・菊池英博氏)
きのう、党内の議員たちが菅首相へ抗議の声を上げたが、その程度のことではノーテンキ首相は気にもしない。小沢グループ200人は倒閣のために、離党に動くか、代表選のやり直しを叫ぶときなのである。

◆このままだと世論は自民党へ流れる
このまま無能内閣を放置していたら、この国は自民党政権の延長線上で衰退していくだけである。それだけはハッキリしている。前出の天木直人氏もこう語る。
「前原、枝野、玄葉、野田といった大臣や幹部を見ていて、この子ども内閣でまともに政権を運営できるのか不安でしたが、中国漁船の一件で、菅内閣の幼稚さが露呈された。幼稚な政権は、その場限りのことしか考えないし、困れば相手の言いなりになる。もともと菅首相は政権維持だけが目的の人だから、これからも何でも丸のみして生き延びるつもりでしょうし、官僚やアメリカ、メディアは御しやすいから、支えようとするでしょう。自民党時代と同じ構図ですが、それは亡国の道です。この国政の劣化を食い止めるには、小沢さんに立ち上がってもらうしかありません」
今度という今度は、代表選で菅再選を支持した民主党議員206人も目が覚めたはずだ。目が節穴だったことに気づいただろう。党員やサポーターも含め、空き菅首相を選んだ連中の責任は極めて重い。
このままだと、中国ケシカラン論の単純なナショナリズム拡大の中で、世論は間違いなく、「どっちもダメなら、アマチュアの民主党より、経験のある自民党の方が無難」の方向へ流れていってしまう。そのときに民主党が後悔しても、手遅れなのである。