岸博幸(慶大大学院教授)「確実な衰退か、一発逆転を選ぶのか。答えは明らかです」 [私は小沢一郎を支持する]
(日刊ゲンダイ 2010/9/13)

菅さんは40点。小沢さんは20点か80点

経済産業省の元同僚たちは、「菅さんて楽だよね」って言っています。「この政権は楽」と思われたら負け。「嫌だけどしょうがない」と思われるような存在にならないと、大臣や官邸は絶対物事を動かせません。
しょせん官僚は「自分は安全圏にいたい」という人種ですから、政治家が「責任を取る」と言わないと、みんなリスクヘッジしてしまう。小沢さんは、「政治家が責任を取れば官僚は動く」と言っています。自分の実体験から考えても、その通り。(小泉政権で)不良債権処理をやっていた時、僕らが考えた手法はドラスチックだったから官僚は嫌がった。しかし、竹中平蔵が議論して、官僚を納得させて、「責任は自分が取る」と言ったことで、官僚は真剣にやってくれた。官僚って優秀だから、自分の腑に落ちれば一生懸命やる。
僕は、小泉さんと小沢さんはダブる部分があると思う。政策の理念は違っても、手法はすごく近い。その集約がまさに「政治家が責任を取れば、官僚はやってくれる」。これは100%正しい。逆に、菅さんは絶対自分で責任を負おうとしない人。だから、官僚は動かない。その差は大きい。小沢さんは、長い経験から、一番大事なところがわかっている。国難の時は、そういう人が総理をやるべきです。
菅さんは経済認識もひどい。「雇用」は、経済が成長した結果生まれる派生需要です。まず経済をよくしなければ、抜本的解決になりません。
小沢さんは地方経済の問題をかなり深刻に考えています。一括交付金化でいくらでも財源があるというのは少し無理があるかなと思いますが、経済認識は正しい。
小沢さんの言っている地方分権も正しい。アジアのグローバル競争は国同士の競争ではなく、都市間競争です。現在、パフォーマンスのいいシンガポールの国土は奄美大島と同じ。人口は福岡と静岡の間ぐらい。県や市レベルなんです。地方がもっと権限と財源をもって、独自の政策をやって、自分の地域の魅力を高めれば、シンガポールみたいになれる。それを霞が関が、47都道府県よーいドンでやろうとしたら絶対無理です。
菅さんは合格ラインの50点に達しない40点の生徒。小沢さんは、20点の可能性もあるが、80点の生徒になるかもしれない。確実に衰退する政策か、一発逆転のある政策を選ぶのか。答えは明らかです。


●きし・ひろゆき
1962年生まれ。一橋大経済学部卒。元経産官僚。小泉・竹中時代に不良債権処理など構造改革の立案に関わり、竹中総務大臣の秘書官を務めた。