【公開討論会・詳報】(1)小沢氏「日本人の精神崩壊、始まりつつある」(2日午後)
(産経ニュース 2010.9.2 13:49)  http://bit.ly/bd9Osy


菅直人首相(民主党代表)と小沢一郎前幹事長は2日、日本記者クラブ主催の公開討論会に臨んだ。菅氏は「お金にまみれた政治文化を変えなければならない」と強調。小沢氏は「官僚任せの政治行政ではなく、政治家が主導する政治を実現する」と訴えた。

 公開討論会の詳細は以下の通り。


【小沢氏冒頭発言】


「このたびの民主党の代表選に立候補することになりました小沢一郎でございます。先ほどお話ありましたように、民主党の代表は今日では政権運営の最高責任者を選ぶということにあります。したがいまして、私自身、今日のような大変厳しい、困難な時期にトップリーダーとして、その責任を果たすことができるのかどうか、今回の代表選に出馬すべきかどうか、思い悩みました。しかし、一方で、今日の日本の社会を見るときに毎日、毎日、人殺しの話、親殺し、子殺しにはじまりまして、そういう本当に信じられないような報道がなされております。また、自ら命を絶つ自殺者もいっこうに減る気配がありませんし、高齢者の行方も分からないという問題も出てまいりました。こういう状況はまさに日本社会、日本人の精神的な崩壊が始まりつつあるということのシンボリックな状況ではないかというふうに考えております」

「加えて、今日の経済の停滞が学校を卒業しても就職できないという若者たち。これがたくさん増えております。そして、最近その経済がさらに一層、不透明感を増し、景気の後退が進むのではないかということが言われております。私どもはそういう中にあって、昨年の総選挙でこういう経済をはじめとする政治経済、そして社会全体の停滞を打破するためにマニフェスト(政権公約)を掲げ、官僚任せの政治行政ではなくて、国民主導、すなわち国民が選んだ代表が、政治家が主導する政治を実現するんだということを訴えて政権を委ねられたと思います」

「この今日の困難を乗り越えて、そして本当に私たちが掲げた国民の生活が第一と。国民の生活を守ると。そういう政策を実行していく。そのためには国民の代表である政治家が自分自身で決断し、そして自分自身の責任をもって実行していく。こういう政治を作り上げることが、いろいろな施策を実行する上において、まず最大の前提だと思っております。私はそのことを最大の主眼としつつ、経済の再生、国民生活の再生、そして地域の再生。そういった問題を主眼として取り組んでまいりたい。そのように考えております」


【菅氏冒頭発言】


「菅直人でございます。総理大臣に就任して3カ月に達しようとしております。こういう経済の厳しい中ですので、この代表選挙の間も総理大臣としての仕事は一切手を抜かないで、あわせて選挙戦を戦いたいと思っております。きょう午前中にも規制改革について、これはまさに政治主導でやらなければならない分野でありますが、副大臣会議の中で大胆にやってくれということの指示をいたしておきました。私は大きな点で2つの変革を行わなければならないと思っております」

「1つは行政、役所の文化であります。つまりは、今までのお役人は、お役所のために働くけれども、国民のためにちゃんと働いていない。私の取り組んだ薬害エイズも患者さんや国民よりも、自分たちの天下り先のために行動したために大変被害が拡大した。それを根本から変えなければならないと思っております。そしてもう1つは、お金にまみれた政治。政治文化を変えなければならない。この2つの文化を変えられるかどうか。私はこの選挙戦を通して、国民のみなさんに訴えていきたい。クリーンでオープンな政治を目指していきたいと思っております」

「特に難しい時代であるからこそ、多くのみなさんが政治に参加をする。政党というのは、国民が政治に参加するための、いわば土俵だと。公共財だと。そういう意味で多くのみなさんの声を政党が受け止めて、それを政策に変えていく。全員参加の政治、熟議の民主主義が必要だ。こういった新しい政治文化を作っていきたいと思っております」

「その上で、やるべき政策課題。私は1に雇用、2に雇用、3に雇用と、このように申し上げております。つまり、雇用こそが今の経済のこの低迷、あるいは社会の不安感、あるいはある意味での社会保障の問題点を変えていくキーになる。鍵になると考えるからであります。つまりは、雇用というのは仕事ですから、仕事が増えれば経済が大きくなり、あるいは税収が増えていく。介護や医療、あるいは保育といった分野の雇用は、社会保障の充実にもつながってくる。そして雇用こそが人間の尊厳、将来の不安に対して、最も必要最小限の必要なものでありまして、そういう意味では不安の解消にもつながってくると思います。そういった観点から、この日本を元気な日本に立て直し、そしてまさに生活が第一の日本にしていくためにがんばってまいりたい。このように思っているところであります」



【公開討論会・詳報】(2)小沢氏「一律シーリング10%削減は国民への約束と違う」
http://bit.ly/aEcRtf

菅直人首相(民主党代表)と小沢一郎前幹事長は2日、日本記者クラブ主催の公開討論会に臨んだ。公開討論会の詳細は以下の通り。


【雇用】


 菅氏「今、申し上げましたが、私は今の日本社会の多くの矛盾を解決していくキーになるのは雇用だと考えております。特に近年、大卒、高卒の新卒者の雇用が大変厳しい。しかし一方では、中小企業などは、もっと若い人を採りたいという人もあります」

「こういったことを解決するために、今、雇用に対する、特に若年雇用に対する特命チームをつくって全力をあげているところであります。これについて小沢さんとしても重視をされていると思いますが、どのようなかたちで雇用をとらわれているのかお尋ねをしたいと思います」

 小沢氏「あの、雇用の問題は、もちろん、基本的に大変大事なわれわれの政治テーマだと思います。ただ、先程来、菅さんもいろいろ、雇用を中心にしていろいろ申し上げ、お話しなされておりますけれど、何の政策を実行し、実現していくためにも、今までの役所に丸投げ、官僚依存の政策決定をやっていたのでは、何も有効な手だてはできないと思います」

「私どもは、そういう意味で、ですから国民主導の、国民の生活が第一と、生活に目を向けた政策を実行するためには国民主導、政治主導の政治の実現が大事であるというふうに訴えてきたゆえんだと思っております」

「特に雇用につきましては、私は日本経済の体質としては、1つは外需に頼らないで済む、最低、内需でもって最低の経済成長をやっていける、そういう経済の体質にしなくてはいけないと思っております。アメリカや中国、その他の外国の経済が上下するたびに日本の経済、昔から『アメリカがくしゃみすると日本が風邪をひく』といわれておりますが、いまなお、その体質が変わっておらないのではないかと思います」

「従いまして、菅さんもおっしゃったように、社会福祉関係の事業というのは、非常にこれからの大きな成長産業だと思いますし、それを育てていく、支援するということが1つ大事だと思います」

「それからもう1つは、自民党政権下で非常に格差が広がっております。雇用の格差もその1つであります。従いまして、私は、特に大企業につきましては、その収益の再配分をきちんと社員のみなさん、雇用の、いわゆる従業員・社員のみなさんにもっと手厚く配分することによって、私は雇用を確保することがもっともっと有効にできるのではないかと思っております」

「それからもう1つは、やはり地方が非常にさびれて衰退しております。そういう意味で、私が申し上げておりますのは、補助金と呼ばれるような政策経費、あるいは裁量的経費と呼ばれるものが、ほぼ30兆円、22年度の予算でもございます。その中で、私は全部、全部、地方へ移せとは言いませんけれども、かなりの部分を地方へ交付金として交付できると思っております」

「ま、公共事業なんか例にとると簡単に分かるんですけれども、そういうことによって、地方の経済の活性化、地方での雇用の創出、地場産業の育成、そういうことを実現できるのではないか。というふうに思っております」

「ですから、このことに、思い切って、こういったことに切り込んでメスを入れないといけないし、官僚の既得権のところに大ナタをふるう勇気を持たなければならないというふうに考えておりまして、そういう意味で、単なる雇用に対するいろいろな補助とかそういうものだけでなくして、全体のトータルとしての日本経済の活性化と雇用の安定というものを図っていくべきであると考えております」

菅氏「私も8月後半からずっと地方を回って、地方の疲弊を実感してまいりました。しかし、中には日本で立地しようか、外国に出ようかというときに、日本で立地をしてくれれば、低酸素型の産業については最初のリスクマネー、一部応援しますと、それによって、北九州などでリチウムの電池の会社とかですね、国内立地を選んでくださった方もあります」

「ま、そういったことで、内需にもつながる、雇用にもつながる、その点では私も小沢さんと同じようなかたちのことを今、内閣として実施しているところであります」


【社会保障と財源】


 菅氏「そこで第2点に移りたいと思いますが、私は社会保障のあり方については、大きく2つの考え方があるのではないかと。つまりは、ある程度、負担してでも将来が安心できる社会を目指していくのか。負担はできるだけ小さくして、あとのことは自己責任でやっていくという社会を選ぶのか。私はやはり、前者の、ある程度、負担しても、将来安心できる、老後も安心できる社会をつくることが国民のみなさんの多くの願いだと思っております」

「まあ、そういった意味で、社会保障とその財源の問題については一体として議論をしていく必要があるだろうと。こう思っております。これに対して小沢さんとしてはどのようなお考えをお持ちか、お聞かせください」

 小沢氏「あのー、負担と福祉の問題につきましては、私は何割まで負担していいのか、とかいう議論ではなくて、それは相対的な問題だと思っております。日本社会において北欧型のような非常に大きな負担をするという福祉のあり方というは、私はちょっと無理ではないかと思っております」

「ですから、一定のもちろん負担していく、ということは当然でありますけれども、その意味においては、私は、その、お互いの負担とその効果と結果ということを勘案して決めていかなくてはならないと。そのように思っております」

「まあ、具体的な話として言えば、私、この、代表選にあたってのメモにも申し上げておりましたが、まあ、年金は一元化して新しい制度をスタートさせたいというが1つでありますが、そのほかの老人医療、あるいは国保、あるいは介護、あるいは生活保護といったものは、トータルで13兆円、4兆円という規模になっておりますが、これは地方へのほとんど補助といいますか、不足分の補填(ほてん)であります」

「私は、実体は全部、地方自治体が、市町村がやっているわけです。ですから、これも、例えば介護や老人の医療やケアについても、厚生省でいろんな、あの、かたちのものを全部、特養がどうだ、どうだどうだということを決めたものを、市町村に押しつけるという言葉はいけませんが、やってその通りやれ、と、こういう話になっています」

「私はそれぞれの地域、それぞれの市町村でみんな事情が違うと思います。ですから、本当に国保も全く黒字のところも中にはあります。それで、医療も、ですから、病院にかかる老人も本当に少ないというような施策をきちんと自分たちで行っているところもあります」

「それは特例ですけれども、そういった十数兆円の経費もですね、実体として市町村がやっているならば、私は、これは今すぐとはいえないですけれども、市町村にむしろそのお金と権限を任せて、それぞれその市町村で老人医療はどうする、介護はどうする、というような知恵を出して、お金を有効に使い、自分立ちの郷土を、ふるさとを作り上げていくと。こういうやり方が、私は将来、いいのではないかと思っております」


【予算編成】


 小沢氏「私は先ほども最初のあいさつの時に申し上げました、われわれの最大の主張は、官僚の行政から、官僚の政治から、国民主導、国民の代表の政治家主導の政治に改めないと何事もわれわれの言っていることは実現できないということを訴えてきたはずであります」

「その中で、例えば予算編成、今、来年度の予算編成、進行しております。これはまさに、最初から民主党がつくる予算の最初の予算でございます。この予算編成にあたってですね、この間、いわゆる一律にシーリングと、10%カットという決定がなされました。これではまったく今までの自民党政権下と同じ手法、同じ結果しか出てこないのではないかと私は思っております」

「役所の中でもって政策の優劣、あるいは予算配分についての優劣を、お役所自身が財務省といえどもつけることはできない。従って、結局は全部一律削減だ、ということになってしまってきたのが従来の自民党政権下の予算編成でありました」

「今回もこの一律10%削減というシーリングのことを聞きましたときに、結局、同じようなことをやっているのではないかと。これではちょっと、国民に約束したことと、現実の民主党政権のやっていることと違うんじゃないかという感じが、私、個人的に持ちました。この点について最高の責任者である菅総理のご意見を伺いたいと思います」


【公開討論会・詳報】(3)菅氏「真摯な姿勢で臨めば野党も応えてくれる」
http://bit.ly/bcCwEM


菅氏「昨年9月、これは小沢、当時の幹事長とともにですね、政権交代を実現をして、最初にやったことは事務次官会議の廃止、そして副大臣政務官を含めた政務三役会議を設立いたしました。私も長年、自民党の政治を見てまいりましたけども、また私も厚生大臣をやって経験もありますけども、そういう政治の中では、ほとんどの役所のことは、官僚がおぜん立てをして、ある意味では大臣はそれをわかりましたといえば全部が動くという、そういう形でありました。それを根本的に変える、まさにこれこそが国民主導の政治ということでスタートしたわけであります」

 「この1年間、試行錯誤がありました。しかし、例えば前原国交大臣はこれまでの公共事業、18%を大きく切り込みました。一方では、福祉や教育はプラスをさせました。これこそが政治主導なんですね。基本的にはそういうやり方を今後も続けていこうということで予算編成も進めているわけであります。ですから、この部分を前と同じにして、この部分は新たにどうしていこうといういろんなやり方については、これは小沢さんの方がいろんな時代のことをご存じですからおわかりでしょうけどれども、私は政治主導になったかどうかというのは、ちゃんと予算編成が終わったところで評価されるべきものであって、何か個々のプロセスのこの段階だけで、物事を見るというのは、それは木をみて森を見ないやり方だと」

 「さきほど、規制緩和のことも申し上げました。そして。小沢さんご自身も言われましたが、地方主権の問題、まさにこういう国の形の本丸にどこまで踏み込めるか。私は政権交代の選挙などを通して、明治維新の逆の改革をやるんだと。つまり、明治維新というのは、分権国家であった幕藩体制をですね、そのままでは外国の植民地になるから、中央集権国家にして、そして近代化を急ぐ。当時のあり方としてはそうせざるを得なかったわけですけども、それから140年たった今日の日本は、そういう中央集権国家の、霞が関縦割り中央集権国家の、そのマイナスが今の日本の停滞につながっているわけですから、その国の形をまさに根本から変えて、地方主権の国家に変えていくんだ。これは私が、初出馬以来、言い続けたことでありまして、そのことの本格的な作業に入っている、このようにご理解をいただければありがたいと思っております」


小沢氏「あのー、今、菅総理のお話をお聞きしましたが、菅総理は最初から、あー、副総理として、また財務大臣として、今は総理大臣としておられるわけであります。私はその経過を垣間見る立場でしかありませんけれども、どうしてもこの手法、やり方というのは、旧態依然として同じようなやり方をしているのではないかという気がしてなりません、心配してなりません。それからさっきから言っておりますけども、いわゆる地方主権、地域主権、これを確立するためにはやはり地方の身の回りのことについては、霞が関から権限と財源を地方に移す以外に方法はないんです。ですから、これをやりきれるかどうかということが、私は根本の、政策の根本にかかわる問題だと思っておりますので、そういう意味でちょっと今の流れは、昔と、自民党政権下と同じような官僚主導の予算編成のやり方ではないかと、そう感じたもんですから、質問をさせていただきました。違う質問に移っていいですか?」


 --「はい、どうぞ」


 小沢氏「えー、2番目には、沖縄の普天間の問題でございましたが、日米合意を、私は別に白紙に、昨日も言いましたが、白紙に返せといっているわけではありません。日米間の合意は、きちんとそれなりに尊重されなければならないと思っております。しかし、地元沖縄では、絶対反対という声が県民の大多数と思います。そうしますと、日米合意を現実に実行に移していくということは非常に難しい状況が現状ではないないかと思います。そういう現状をみて、私としては、沖縄県も、またアメリカ政府も納得のいけるような、何か知恵を出すために、もう一度県民みなさんやアメリカ政府のみなさんとも、いい知恵を出しうる、そういうための話し合いをしたらどうかなと、そういうふうに考えているということでございますが、総理大臣としてこの点いかがお考えでしょうか」

菅氏「この普天間をめぐる問題、鳩山前総理が本当に苦労されたことはみなさんもご承知の通りです。その中で、最初は県外、国外ということをいろいろ模索をされ、いろいろな案を検討された中で、5月の段階で日米合意という形で、沖縄の中に代替施設を設けるということを同意をされました。私はこのことが、沖縄のみなさんにとってなかなか受け入れ難い合意であるということは、重々承知をいたしております」

 「しかし、1年にも及ぶこの議論、ある意味で迷走した議論をですね、このまま続けておくことは、単に日米関係だけではなくて、日本のいろいろな政策決定に障害を起こしてきた。そういう中で鳩山総理はいわば、政治とカネの問題に加えて、この問題での責任を取って辞任をされたわけであります。それを引き継ぐ私としては、まずは鳩山前総理が合意をされたところを原点として、そこからスタートすることが、日米間においても、あるいはこれからの政治運営においても、必要だろうということで、それを踏まえてという言い方で今日まで来ております」

 「しかし同時に、沖縄における負担の軽減、これは普天間の移転にかかわる問題が多いわけですけども、それだけではありません。北部の訓練場の半分が返ってくる、これも10年間止まっております。また、普天間との関連で言われている嘉手納以南の返還の問題もあります。また、これと並行してグアムへの海兵隊の移転、大規模な移転も予定されているわけでありまして、私はそういう沖縄の軽減につながることは、まず優先的に進めることはできないかということで、今話し合いを進めております。そして、将来、それが遠い将来になるのか、近い将来なるのかわかりませんけども、さらなる沖縄の負担軽減を考える、そういう時に意識のあり方ということは当然ながら、あらゆる問題を考えなければいけない、考えるべきときにくると思っております」

「私は小沢さんが昨日の会見でも、日本、沖縄とアメリカの両方が納得できる知恵があるという趣旨のことを言われました。本当に、そういう知恵、私もぜひ教えていただきたいと思うんですね。まあ、鳩山さんもそういう知恵を求めてたいへん苦労されたわけでありますので、ぜひこの場でですね、その知恵の一部でも国民の前でお披瀝(ひれき)をいただければと思っております」

 小沢「私は、鳩山内閣で日米合意された、そのことを原点として尊重していくことには変わりありません。ただ、このまんまでは進まないんじゃないかと、だから何か知恵を出さなくては、両方が納得する知恵を出さなくてはいけないんじゃないかということを申しているだけでおります」


【政権運営、ねじれ国会への対応】


 --小沢氏からお願いします


 小沢氏「国会運営ですか?」

 --「えー」


 小沢氏「はい。あのー、この間の選挙で44議席という、参院大敗を喫してしまいました。従って、何を、政策を法律化して通そうと思っても、数だけでは到底できません。そして今、野党各党とも、菅政権にいろいろな政策で協力するということはできないという趣旨の話を各党ともしております。それがまあ、現実だと思います。そうしますと、衆院で圧倒的な多数で、言うまでもないですが、参院の国会運営、自分たちの主張を通すためにはやはり野党の賛同を得なければならないと思っておりますけども、野党のみなさんがそういう趣旨の政治スタンスをとっていることについて、菅総理としてどのようにこれを打開していかれるのか、お聞きしたいと思います」

菅氏「私はですね、先の参院選で大きく議席を減らし、敗退したことについて、その責任を痛感いたしております。しかし、このことで、何かもうこれで政治が進まなくなったとはこのように思ってはおりません。ある意味では、新しい局面が生まれる可能性がある。つまり、自民党が参院が少数でねじれた時期もありました。今回逆の時期もあります。つまりは、自民党もあるいは他の野党も、自分たちが全部反対すれば法案は通らない。しかし、本当に国民のためにどうすればいいかということをですね、考えたときに、私は謙虚に話し合いをすれば、大きい問題であればあるほど、共に責任を感じて何らかの合意形成を目指すということはありうると思っております」

 「私が例に出しますあの金融国会の時、当時自民党が過半数割れを起こして野党、私が代表する民主党、そして小沢さんが代表された自由党、公明党で金融再生法案を出しました。この法案が通らなければ長銀、日債銀が破綻(はたん)して金融恐慌になるのではないか。そういう中でありましたので、私は徹底的な議論をいたしまして、わが党、野党の案に自民党が全面的に賛成されるのならば、それを政局としては扱わないで、政策合意をしてもいいと申し上げましたが、100%野党案を賛成するという形で成立をし、金融恐慌を避けることができました」

 「それについて、小沢さんからは政局にしないなんていうこと言うのはおかしいと言われましたけども、私は今でも日本のため、世界のためにはその選択は間違っていなかったと思います。これからの政権運営においても、そういう真摯(しんし)な姿勢で臨めば野党のみなさんも必ず応えてくださると、このように考えております」


【公開討論会・詳報】(4)小沢氏「参院過半数、6年ではとても無理」
http://bit.ly/9524AL


【ねじれ国会への対応】


 小沢氏「あのもちろん、今、総理がおっしゃったように私どもが本当に国民のための政策だ、法律案だということでもって、野党の皆さんと合意することができるものもたくさんあると思います。ただ、今、お話があったように、あのときも野党案を丸飲みしたというのが現実でありました。本当の危機的な状況の中ではそういうことも、当然、お互いにあり得ることではございますけれども、自分の政策、主張を野党とは違う基本的に考え方の違う政策、主張というのは現実的にはできなくなってしまうわけでございますので、その意味についての国会運営というのは大変厳しいものではないかと思っております」

「もちろん、ぼくは選挙の結果のいかんにかかわらず、一兵卒として協力することは党員として当然ではありますが、なかなかわが党が野党で、過半数をもっておったときの自民党政権下でわが党がもっておったときの、国会の状況をみてもおわかりの通りだと思いまして、そういう意味では私はここがリーダーとしての手腕が問われるところであって、本当に真摯(しんし)に一生懸命、野党に対して話をすれば、一定限度の理解はえられるということは、そう思いますけれども、本当に主張、政治的な考え方の違う問題についてはまったく動かないということになりますので、そういう意味で大変、厳しい国会運営になっていくのではないかということを心配しておりまして、このリーダーとしては打開策をきちんと考えておかなくてはならないだろうというふうに思っておりますものですから、そういう質問をさせていただきました。


 菅氏「私は先ほど申しあげましたようにですね、今の日本の行き詰まりはこの1年、2年の行き詰まりではありません。約20年間にわたる行き詰まりです。それは景気対策をやっても一義的にはよくなっても成長には戻りませんでした。あるいは社会保障についても少子高齢化がなかなか止まらなくて不安感が高まってます。財政の状況はいろいろな見方はありますけども、いずれにしても膨大な借金が積み上がっていることが事実であります。こういう大きな課題、金融国会の金融破綻(はたん)に匹敵する課題、あるいはそれをこえる課題であるからこそ、私はたとえば二大政党の一方が多少力を持っていても、それをこえてこれなかったために、それが今日のこの行き詰まりがあると私は思っております」

「ですから、この大きな行き詰まりをこえるためにはある意味では、党をこえた合意形成、国民の合意形成が必要になる。熟議の民主主義といってまいりましたけれども、この間、私どもが野党でねじれ国会のときにはやや率直に申しあげて政権交代を目指すという政治的な目的のためにかなり行動したことも事実でありますから、そういう意味ではそれぞれがそういう行動をとった上で今日の状況をむかえて、ある意味の新しい局面にきたわけですから。そういうより大きな課題こそが、私は天の配剤だと申しあげているんですけれども、こういう中で合意形成ができると、私も30年間、国会におりますので、自社さ政権、いろいろな政権、ご一緒した方もあります」

「たとえば、子供手当ては公明党が賛成いただいて、現在の法案もできているということもありますし、やはり財政健全化についても自民党も中期目標などではわが党と一致をした意見を出させていただいておりますので、もちろん、簡単だとは思っておりませんけれども、まさに真摯(しんし)に政局ではなくて、国民のことを考えて話し合おうという、その呼びかけをきちっと。既に多少の努力はしておりますけれども、させていただいたときには他の野党の皆さんもですね、国民の皆さんのことを考えて、そういう話し合いに参加をしていただけるものと思っています」


 小沢氏「国会運営についてこれ以上は何もありません。ただ、今、繰り返しますが自分たちが国民に約束した主張を実行していくためにはやはり参議院でも過半数を有するということは本当に大事なことだと思っております。このままですと、仮に民主党政権が続くとしても、もう、最低でも6年、とても6年じゃ無理だとは思いますが、9年、12年の歳月をかけないと過半数というのはなかなか難しいという結果が現実だと思っておりますし、また、われわれが政権をめざしておったからというお話がありましたが、今、自民党は政権の奪還を目指して頑張っていることだと思いますので、状況は立場は変わりましたけれども、同じことだと思います」


【政策調査会】


 司会「時間がまいりましたので、続いて菅さんの質問、お願いします」


 菅氏「私は冒頭にも申しあげましたように、クリーンでオープンな政治、クリーンでオープンな民主党というものを実現し、発展させたいと思っております。昨年、9月に政権が発足するときに小沢、当時の幹事長の強い主張もあって、政策調査会が廃止をされました。当時私は『調査会を残すべきだ」と申しあげたんですけれども、代表、幹事長がこれを「廃止だ」ということで廃止になりました。今回、6月の代表選に立候補するにあたって政策調査会を復活するということでお約束をし、そして現実に復活すると同時に、政調会長の玄葉さんに閣内に入っていただく、閣僚になっていただくというかたちで党と内閣の政策の一元化、つまり党は提言というかたちではありますけれども、政調会長が内閣に入るというかたちで、よりその影響がしっかりと政府に及ぶようにということで、ひとつの、一元化の一つのありかたとしてそういう選択をさせていただきました。私は多くの党内の皆さん、あるいは国民の皆さんがですね、政策を民主党にいろいろ提言する窓口がすべての国会議員に広がったことを喜んでいただいていると思っております。そういう意味で、小沢さんにお聞きしたいんですが、小沢さんが代表になられたときはまた政調会を廃止をされるのか、今の形で存続を認められるのか、お聞かせを下さい」


 小沢氏「私が政調会というものをやめるべきといったことは、事実ではありますし、いまなお、そう思っております。それにかえて、政府与党一体という観点で、政策会議というのを設けました。その政策会議には部署別に、各省庁別に誰でも参加できると、ある意味でその政調部会の役割も果たしていくということで設けられたものであります。その運営がですね、副大臣や政務官が大変忙しいということもあったやに聞いておりますけれども、ただ単に、形式的な形におわってしまって、本当に政策論議が全員参加でやれる状況じゃなかったということは実態のようでございます。ですから、最終的にその政策会議の副大臣、政務官だけじゃなくて、各委員会の理事の人も一緒に入って、党と政府の両方がその運営について相談し合いながらやろうということに私、たぶん、まだ、幹事長のときに提案をいたしまして、それが軌道に乗り始めた矢先であったように思っております」

「私はその意味では、政策会議がみんなが参加し、そして十分に議論が尽くされ、政府と与党、政府と国会とそれぞれの部署の人たちがきちんと話し合える形をとれればそれが一番いいと思っております。政調部会が復活いたしましたけれども、結局、2つできてしまいまして、どちらがどうなのかと、いまだ有効に機能しているという声をあまり聞いておりません。それからもう一つは、政調部会というのは自民党政権の下で党と政府、政府といっても中身は官僚ですけれども、それとのお互いのある意味でこれだけ党が主張して、これだけ予算を変えたとか予算を取ったとかいうたぐいの、お互いのできレースのようなかたちでの存在だったものですから、そういうイメージが強く、どうしても政調というと、働いてしまいますので、これは党と政府が異質のものだと、どちらかというと対立するものだという意識の中で、私は作られてきた自民党の政調部会だと思います。いわゆる明治以来の超然内閣的な感覚の下で、政府、大臣やなんかいますけれども、バックはすべて官僚、お上と。それに対して党がいろいろと意見をいえるようにするとの発想がどうしても見え隠れしてきたのが、政調会じゃなかったかと思っておりまして、私はそういう意味で本当の政府与党一体化ということであれば、政策会議を効果的に、効率的に運用することによって、私は政調、その他の部会に変わる、あるいは全員参加の議論が十分できると考えております」


 菅氏「小沢さんがいわれた、まさに、かつての自民党はですね、内閣のほうは大臣はいるけれども、副大臣、政務官がいませんでしたから、ほとんどが官僚でコントロールされ、閣議も事務次官会議でコントロールされ、つまり、まさに内閣の側は官僚内閣だったわけです。それに対して、自民党の政調は党という立場ではありましたが、それが族議員化することによって逆に官僚と直接結び付くと。これが一番の問題点であるということで、私たち民主党がまさに政治主導の内閣をつくろうと、それは内閣の側も事務次官会議をなくし、そして政務三役会議をつくって政治主導にすると同時に、党のほうも族議員的なやり方はとらないで、政策提言という形で政調を復活するというかたちで進めてきているわけです。そこでもう一つ、特にその中で小沢さんにお聞きしたいのはこの本来の議院内閣制の下で、内閣を運営するには100人を越える国会議員が内閣に入る方が望ましい、事業仕分けなどでももう少し党のほうから人を参加をさせてもらいたいと。現在、出されている政治主導法案もそういう内容になっております」

「どちらかというと、小沢さんは事業仕分けでもいったん決まっていた議員が参加するのが、それは1年生議員がそういうことに出すのは早いといってですね、止められて、非常に率直にいって内閣の側は政治家は数を含めてですね、不足して苦労したこともですね、いろんなことが進んでいない一つの大きな原因になっております。そういった意味で私は小沢さんがいわれたことはもっと内閣の中にも、国会法などをかえてですね、国会議員が参加できるようにすべきだと私は思っているんですけれども、それに対するお考えも合わせて聞いておきたいと思っております」


 小沢氏「私がもう10年、20年前からそういう主張をしてまいりました。そして、副大臣、政務官という仕組みをメディアの皆さんにからかわれながら、なんとしても成立したいといって自自連立のときに作ったものであります。そういう意味で私はこれが有効に働けば、これが政治主導の成果をあげることができると思っております。100人とか、200人とかいう数字は別ですけれども、ブレアさんのときにはいろんなものを作って200人以上になってひんしゅくを買ったといわれておりますけれども、もっと充実させるということについては私は大賛成でございます。それから幹事長のときに、増員するのに文句をいったとおっしゃいましたけれども、別にそれについて文句をいったわけではありません。全部、それぞれの国会やら党やらなんだの全部、ポストが決まってからまたこう、引き抜くという話になると、また玉突きやらなんやらこっちやらそっちやらでということになっちゃうんで、それは困るから、あの時点では最小限にしてくれということを申しあげただけであります」

「ですから、政府の人事と、副大臣以下の、そして党や国会の人事というのは本来は同時に、一緒に同時並行的に統一して進めていくべきだというのが私の持論でありまして、それぞれが好きなようにやってしまいますと、そういう、後で問題が生じてくるということであります。基本的に、政治主導のために副大臣、政務官これをもっと増員していいと、すべきだという点については賛成でございます」