【菅・小沢共同会見】(1)小沢氏「政治家の責任で政策決定を」
(産経ニュース 2010.9.1 21:37) http://p.tl/sKRO

 菅直人首相(民主党代表)と小沢一郎前幹事長は1日、都内のホテルで共同記者会見した。菅氏は「やるべきことは1に雇用、2に雇用、3に雇用だ」と強調。小沢氏は「経済を再生させていくためには、国民主導の、政治主導の政治を実現しなくてはいけない」と語った。


 会見の詳細は以下の通り。


 【小沢氏冒頭発言】


 「このたびの代表選挙に立候補することになりました小沢一郎でございます。今回の代表選挙は野党のときの代表選挙とは違いまして、民主党の代表、そしてそれは国政を預かる責任者ということになるわけでございますので、私といたしましても自分自身、そのような重要な職責に自らが耐えうるかどうか、いろいろと熟慮したわけでございますけれども、多くの仲間の皆さま、そして全国の皆さまの激励をいただきまして、あえて立候補する決意をいたしました」

 「その理由は、今日の日本の社会を見てみますと、戦後の民主主義というものは、必ずしも十分に正確に理解されないままに今日に至ったということが1つの大きな日本社会の精神的な構造の一因をなすものだとは思いますけれども、特に今日の政治経済の不透明化、危機的な状況の中で、日本の社会は卒業しても就職できない若者たちやら、あるいは自殺者が絶えません。また親殺し、子殺しの連日のニュースもございます。そういう日本の社会が崩壊しつつあるのではないかという強い認識の中で、それを立て直し、あらゆる意味で、特に経済を再生させていくためには、国民主導の、政治主導の政治を実現しなくてはいけないというのがわれわれの主張であり、昨年の総選挙において、国民の皆さんにお約束し、そして政権を委ねられたのだと思います」

 「私どもはその意味において、個々の約束した政策の実行ももちろん大事でございますが、その前提として、政治主導、国民主導の政治、官僚任せでない、政治家が自ら責任をもって決断し、自らの責任で実行すると。そういう政治行政、国会も同様でありますが、そういうものに変えていくというのがわれらの主張であり、理想であったはずであります」

 「今日、菅総理の下で、一生懸命みなさん、がんばっておられることは十分承知いたしておりますけれども、来年度の予算編成の、たとえば例を挙げてみますと、結局財源がないということで、歳出の1割削減と。これは一律1割削減という形で方針が決められたようであります。私どもの主張しているところは、いろいろな予算の中で無駄を省き、われわれの主張する政策を実行するために、その中から政治家が予算を作っていくということであったと思いますし、そうしなければ今日の困難を解決することはできないと思います」

「私はそういう意味において、もっと政治家が自らの責任で政策決定を、予算の決定をすることのできるような、そういう体制をつくらなければならない。そのことを強く感じまして、今日の代表選挙に立候補し、自ら国民との約束を果たしていきたいということで、みなさんの審判を仰ぐことになった次第であります。どうぞよろしくお願いいたします」



【菅氏冒頭発言】


 「菅直人でございます。大変厳しい経済社会情勢の中で、代表選を行うということで、国民の皆さんから、政権運営しっかりやれという声をいただいております。私は現職総理大臣という立場でありますので、総理大臣の職務は完(かん)璧(ぺき)を果たして、がんばっていきたいと、こう考えております。本日も朝から防災訓練、静岡に出かけまして、小中高生とともに、土(ど)嚢(のう)やあるいは簡易担架の製作などを一緒にやってまいりました。また、きょう、この後は、スペインのサパテロ首相とも会談をして、今、スペインは大変な財政的な立て直しを図っておりますが、こうした議論もさせていただこうと。総理の職分だけは全力で実行していきたいと。まずこのことをご理解いただきたいと思います」

 「私の政権が誕生して3カ月足らずが経過をいたしました。この間に参議院選挙などがございましたので、いよいよこれからが菅政権としての本格稼働の時期に入ったわけであります。8月後半から全国各地を視察をしてまいりました。本当にですね、地方の状況、特に雇用の状況が大変厳しいということを、それぞれの地域でお聞きをいたしました。私はまず、やるべきことは1に雇用、2に雇用、3に雇用だと考えます。つまり仕事がないということは人間の尊厳にかかわることでありまして、仕事があることによって尊厳が保たれ、そして安心な生活になってまいります。先日、犯罪を犯した方が社会復帰をする、それを支えられている保護司のみなさんともお話をしましたが、仕事のない人は3分の1近くが再犯になるけれども、仕事のある方は再犯率は極めて低いということもお聞きしまして、そうなんだと改めて思ったところであります」

「少し具体的に申し上げますと、この雇用を生み出せば、経済の成長につながります。また、働く人は税金を払っていただいて財政再建にもつながります。介護や、保育の分野で働けば、社会保障が充実することにもつながるわけであります。京都のジョブパークでは新卒者の支援の取り組みがしっかり行われている。私たちの内閣の中にも、新卒者支援の特命チームもスタートさせました。また、北九州では低炭素型雇用創出産業立地、つまり中国や外国に企業を出そうかと思っていたけれども、私たちが出した補助金によって、国内に立地をすることにしたという、LED(発光ダイオード)、あるいはリチウム電池の会社をお訪ねいたしました。さらには、(兵庫県)芦屋では、介護といっても家庭におられるお年寄りの介護ということから、単独で生活をしておられる高齢者に対して、24時間ブザーを押せばすぐに駆けつけてくれるという、そういう介護をやっている大きな集合住宅を見てまいりました。私は介護保険制度を導入するときの厚生大臣を務めましたが、これからは第2弾目の、つまりは単身高齢者が安心して暮らせる介護というものに進んでいきたいと考えております。そういったことをやるために政権をぜひこれからも担当させていただきたいと思います」

 「その中で、クリーンでオープンな民主党を作っていきたいと思います。私の初出馬は、1976(昭和51)年、ロッキード事件といわれたあの選挙でありまして、もう政治にお金のことがまつわるような古い政治からは、ぜひ脱却しなければならない。このように改めて強く感じているところであります。そして今回の選挙は、党代表を選ぶだけではなくて、いずれの候補者が総理大臣としてふさわしいのかという選択を、国民の皆さんに選択していただく選挙だと私は理解をいたしております。ぜひ、国民の皆さんには直接投票権がないまでも、それぞれの地域に民主党の党員・サポーター、国会議員、地方議員がおられますので、皆さんの意見を、そうした皆さんに伝えて、国民の皆さんの声で新しい総理大臣をお選びいただきたい。私もそれに向けてがんばり抜きたいと思います。どうかよろしくお願いを申し上げます」



【菅・小沢共同会見】(2)菅氏「消費税含む議論が重要」 http://p.tl/9WKN


【脱小沢】

 --今回の代表選の争点について。これまでの党内論議を見ていると、人事をめぐる「脱小沢路線」の是非が中心になっているとの指摘がある。首相、小沢氏、それぞれこうした現状にどのような見解を持っているか聞かせてほしい。さらに今回の代表選の最大の争点は何と考えるかも聞かせてほしい


 小沢氏「最初の質問でございますが、代表選挙といいますか、党内の政策論争等について、そのようなとらえ方をするのは間違いだと思います。マスコミの諸君、皆さんにも、ぜひそういうレベルでのとらえ方ではなくして、政策的な論争という観点でとらえていただきたいと。私どもも、そういう心掛けで今後とも政治にあたっていきたいと、そのように思っております」

「それから争点につきましては、今さっき申し上げましたように、やはり去年の総選挙で約束した、国民の皆さんに。そのことを、いっぺんに全部が全部できるわけじゃありませんけれども、着実に実現していくということが大事だと思います。そして、その約束の最大の原点は、個々の政策の実現はもちろんですが、それをするためには官僚に任せっきりのやり方ではダメだと。やはり国民の代表である政治家が決断し、実行していくと。政治主導の政治、国民主導の政治を作らなければならないと」

 「それが官僚依存のままであれば、自民党と同じ、自民党政治と同じことになってしまうんで、私は今日の現状を見るときに、やはり政治家が自分の責任で政策の優先順位を決め、そして約束した政策を実行していくということが若干、国民の目から見ると、去年の総選挙以来の主張と、ちょっと実態は違うんじゃないか、というところに国民の皆さんの期待がちょっと薄れてきている最大の原因があるのではないかと思っておりますので、そこを私はなんとしても政治主導を実現しうるような政府・与党、そして国民との皆さんの約束を実行していく、着実に実行していくということが大事なことだと思っています」


菅氏「今回の選挙は、先ほど申し上げましたように、次の総理大臣にいずれの候補者がふさわしいかという、私はそれが国民の皆さんにとっての最大の判断の、まさに争点だと思っております。その中で私ども昨年政権交代を実現してから、私も副総理として、そして現在は首相としてマニフェストの実現に全力を挙げてまいりました。マニフェストには2つの面があります。つまりは、「子ども手当」をはじめ、これとこれをやりますという約束と、もう一方で、それに必要な財源はこういう形で捻(ねん)出(しゅつ)しますという、こういう中身になっております」

 「このマニフェストを作られた当時、小沢さんが代表でありまして、私も、例えば従来の5%の消費税から、3%プラスしようという議論が以前はありましたけれども、それをやめて5%のままでいくといった議論がありましたので、本当に財源は大丈夫ですかということをいろんな関係者にお尋ねをいたしました。そのときにお答えは、大丈夫だと。政権をとれば、カネなんて出てくるんだからと。こういうふうにお答えをいただいたと思っております。私たちもそう考えて徹底的に事業仕分け等を進めてきております。しかし、初年度においては、必ずしもすべてのお約束を実行するまでの財源に至りませんでしたので、そこでガソリン税については、その理由を当時の鳩山(由紀夫)首相のほうから説明をされて、現状の税率にとどめたということもあるわけであります」

「そういった意味で、この政権が誕生して、そして事務次官会議を廃止する、そして政務三役を作る。そういう形で小沢さんも幹事長として鳩山政権にかかわってこられて、そして6月に至ってお2二人が辞められた中で私が引き継ぎをいたしました。政治主導のまさに政治というものを、まさにこれから本格化する。その段階に入ってきているわけであります。そういった意味で、従来、ある長く自民党に籍を置いた元大蔵省の方が予算委員会の席で言われておりました。自分たちも大蔵省時代にはなんとか財政健全化を言ったんだけれども、最後のところで、もう政治が高度の判断で決めたんだから、カネのほうはなんとかしろ。こう言われて、やむなく赤字国債を積み上げた結果が、今日のようになった。これは国会の席の中で発言された中身でありますけれども、私も多少長い政治経歴を持っておりますけれども、そういう財務省任せというのは、一般の方は財務省は健全化をやってきたんだと思われている方は大間違いです。財務省こそ野放図な財政をまさに放置してきた張本人でありまして、そういった意味でそういう財務省主導を改めなければならないというのが私の政権のまさに眼目だと考えております」


【マニフェスト】

 --昨年の衆院選マニフェストを変えずに堅持すべきだと求める声が党内にはある。経済、財政情勢の変化などから、期限内の実現が困難な政策もあると思うが、これを修正することへの考え方を聞く。特に、消費税について、上げるべきか。上げるとすれば、なんのために、いつごろ、どのぐらい上げる必要があるのかの考えを聞かせてほしい


 菅氏「まずマニフェストについては、今も申し上げましたように、できるだけ誠実に実行していく。4年間をかけて実行するというお約束でありますので、その基本的な姿勢はしっかりと守ってまいりたいと思っております。と同時に、どうしても単年度や2年目でできないことについては、その理由をきちんと国民の皆さんに説明して、ご理解をいただくという、こういうことが必要であろうと。このように思っております」

 「消費税につきましては、私は必ずしも消費税に限りませんけれども、社会保障のあり方と、その財源というものを一体で議論する必要がある。このように考え、税調、あるいは党の機関で議論を始めていただくように指示をいたしております。つまり、どこまで社会保障の水準を維持、発展させるのか。多少の負担をしても安心できる社会を作っていくことを重視するのか、逆に負担はできるだけ小さくして、そういう社会保障などは、もう個人の自己責任に大部分を任せるのか。大きく言えば2つの道があると思いますが、私はやはり多少の負担をしても安心できる社会を作ってもらいたいというのが多くの国民のお考えだと思いますし、私自身の考えでもあります。そういったことについて、社会保障のあり方と財源問題を一体で議論する。その議論の中には、当然ながら消費税も含めた議論をしていくことが重要だと。このように考えております」


 小沢氏「私たちは3年前の参院選挙でも、また昨年の政権を委ねられた総選挙におきましても、まずは政治主導、国民主導の政治を実現することによって、今まで官僚にすべて任せておった予算の作成、配分。これについても政治家が優先順位をつけて、そして必要なもの、必要でないもの、あるいはわれわれが約束して実行しなければならないもの、そうでないもの、そういうことをきちんと政治家が判断して、そして行政の無駄をまず増税の前に、消費税の論議の前にまず徹底的に無駄を省く。そういうことによって、われわれの主張する政策の財源にあてるということを私たちは国民の皆さんに約束してきたはずであります」

「今日の状況をみると、まだ政権が成立して1年でありますから、それがすぐ、すべて何でもかんでもできるということではないとは思いますけれども、今言った行政の政策の優先順位のつけること、また無駄を徹底的に省くことということについては、まだまだ行われていないというふうに考えております。例えば、地域主権と並行して考えております補助金の一括交付金化。これもまだまったくできておりません。私はこれが実現することによって、地域の経済活動の再生と雇用の増大、そしてまた予算の無駄遣いを相当程度省くことができると思います。民主党の時代、私より以前の、合併する前の民主党の時代に各首長さんに尋ねたアンケートあります。自由に使えるお金があったならば、今もらっている補助金のトータルの7割で今以上の行政をやることが十分可能だというアンケートの結果でありました。私の近しい首長さんに聞いてみますと、本当に自由に使えるならば、今の補助金総額の5割で十分やっていけると。もっと立派にやってみせるという話がありました」

 「ですから、そういうことを考えますと、霞が関ですべて決めて、そのメニューに従って行政、予算配分が行われる。この仕組みを政治主導でもって変えていかないと財源ができない。また行政の合理化もできないということだと思いますので、そういったことを勇敢に実行していくことが、まず第一でありまして、それを徹底的にやっても、なおかつわれわれの主張する約束した政策は実行するのに財源が足りない、あるいは社会保障関係費の増大に対応できないということになった場合に、それは消費税のことも国民の皆さんに負担していただくということも考えなくてはいけないけれども、まず今回のこの任期中は、鳩山前首相もお話ししておりましたが、無駄を省く。予算を、国民の血税を有効に使う、生かしていくということに全力を挙げると。消費税はその後だというお話をなさったように記憶いたしております」

「私はそういう意味で、まず行政の無駄を省くと、予算の無駄を省くということに全力をまず挙げるというのが国民の皆さまとの約束であったと思いますので、その方針であやらなくてはならない。そう思っております」




●民主党代表選 共同記者会見 ビデオ

民主党代表選挙に立候補した小沢前幹事長と菅総理大臣は、1日午後そろって記者会見し、小沢氏が、政治主導の態勢を確立して、さきの衆議院選挙の政権公約を着実に実行する考えを示したのに対し、菅氏は、雇用問題に集中的に取り組むとともに、クリーンでオープンな民主党をつくりたいと主張しました。

(NHK ニュース 9月1日 18時35分)  http://p.tl/59zO