「小沢首相」に世論はどう出るか [民主党代表選 小沢が勝つ全真相]

(日刊ゲンダイ2010/9/1)

問題は、小沢が代表選に勝利して、首相になった場合の世論である。
世論調査を見ても分かるように、小沢は人気がない。いつも「政治とカネ」の問題で突っつかれ、「民主党代表に誰がなればよいか」の設問では、菅に50ポイント以上の大差で負けている。この調子では小沢内閣の支持率も最悪スタートになりそうだが、世論調査の内情に詳しい明大教授の井田正道氏(計量政治学)は、こう指摘する。
「現状で言えば、当初は低支持率が予想されます。しかし、今回の代表選で本格的な政策論争がスタートすると、どうなるか分かりませんよ。小沢氏の主張が国民の理解を得られれば、支持率上昇の可能性は十分あります」 そもそも、何も仕事をしていない菅内閣の支持率が40%以上あるのも変な話だが、「世論」とは何なのか、国民は疑ってかかった方がいい。前出の小林弥六氏が言う。
「大マスコミの言う世論など蜃気楼みたいなもので、実体はありません。質問の仕方や対象で回答はいくらでも変わる。小沢嫌いの大マスコミは今、官邸と官僚と結託して反小沢キャンペーンを展開しています。それよりも、直近の選挙の方がはるかに民意を反映していると思いますよ。国民は昨夏の衆院選マニフェストに賛同して民主党に政権を託しました。そして、この夏の参院選では、マニフェストを改変した菅民主党にノーを突きつけた。それが本当の国民の意思ではないか。ならば、原点回帰を主張している小沢氏を支持する声が高まる可能性は大です」 小沢を応援する国民の機運が高まれば、大マスコミもインチキ世論調査は続けられなくなる。

◇この結末は国と国民にとってプラス
「会談物別れ、対決へ」「民主党分裂に危機感」と、大マスコミは2人の泥仕合をバカみたいに煽り立てている。さらに「『国民無視』厳しい目」と、ウンザリした様子で報じた新聞もある。
だが、民主党の両雄が争うことになった今回の代表選、この国と国民にとって、そんなに悪いことなのか。答えはノーだ。法大教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう指摘する。
「自民党時代は幹部たちの話し合いで次の総裁が決まり、密室談合政治、政権たらい回しと非難されたものです。しかし、今回は正規の手続きに基づいて代表選を行う。無投票再選ではないし、悪いことをしているわけでもない。国民にとっては、むしろ両者の主張する政策の違いがハッキリ分かる点でメリットは大きい。消費税は上げるのか、上げないのか。普天間はどう決着をつけるのか。政治主導は続行するのか。民主党が昨夏の衆院選マニフェストで国民に約束した路線はどうするのか。これらがしっかり報じられることが重要なポイントです。しかし、大マスコミは権力闘争ばかりを煽って、肝心の政策論争を報じようとしない。これではいけません」
本当だ。互いの考えをどんどん主張し、競い合えばいい。それが民主主義の基本だし、党が分裂するような話でもない。この代表選は国と国民にとっては大きなプラスなのだ。

◇スキャンダル暴露合戦どうなる
「もう政治とカネの問題で日本の政治が混乱したり、左右されることがないようにしたい」――菅首相の宣戦布告だ。
出馬会見で、わざわざ「ロッキード事件」を持ち出し、田中角栄を師に持つ小沢とは「政治の生い立ちが違う」と強調してみせた。14日間の代表選では、自らのクリーンさをアピールするため、徹底的に小沢の「政治とカネ」をあぶり出す考えだ。
すでにネガティブキャンペーンのきな臭さが漂い始めている。一部メディアが追及している小沢代表時代の党内のカネの流れの問題だ。
「当時の山岡賢次国対委員長をはじめ、小沢派4議員に4年間で計36億円が『組織対策費』名目で支出されていたのです。この問題は、反小沢派の小宮山洋子・党財務委員長を中心に過去の帳簿をひっくり返し、調べ上げたもの。組対費は使途を明かす必要のないカネですが、菅陣営は小沢嫌いのメディアと連動し、『不透明なカネが小沢派に流れた』『党のカネを大量に配って派閥をつくっている』と、追及を加速させていくつもりです」(民主党関係者)
小沢陣営は「菅陣営は党の帳簿をマスコミに漏洩している」とカンカンだが、手をこまねいているわけではない。すでに仙谷官房長官の事務所費スキャンダルが炸裂したが、「仙谷以外にも前原氏ら複数の菅陣営の中心メンバーの疑惑をつかんでいるようです」(政界関係者)とも、ささやかれている。
党を二分する一大抗争の火ぶたが切られた以上、両陣営とも何でもアリ。スキャンダル合戦の泥仕合は、ますます過熱しそうだ。