悪の張本人は仙谷由人だ [民主党代表選 小沢が勝つ全真相]

(日刊ゲンダイ2010/9/1)

代表選をめぐり、事態がこじれにこじれたのも、仙谷官房長官の存在が元凶だ。周囲には「オレの首で(事態が)収まるのなら、いつでも辞める」とカッコいいことを言っておきながら、ウラでは“謀略戦”に熱中していた。
「意に沿った情報をタレ流すマスコミを通じ、『小沢が出馬すれば、民主党は割れて壊れる』と分裂危機を煽り、主戦論に傾く小沢支持派にブレーキをかけ、小沢の自発的な出馬撤回に追い込もうと画策したのです」(民主党関係者)
事実、仙谷のもくろみどおりに民主党内は右往左往し、仙谷本人も最後まで「小沢は出馬しない」とタカをくくっていた。しかし、それが結果的に小沢に腹をくくらせた。「セクト活動政治家」らしい視野の狭さだ。
「策士策に溺れるの典型です。仙谷氏は菅内閣の発足以降、反小沢派の急先鋒として小沢派を徹底的に干し上げ、官邸を牛耳ってきましたが、それで何の実績を残したのか。マニフェストの修正や、現役官僚の天下り容認など政治主導とは名ばかりの官僚主導路線を突き進んだだけ。脱小沢の先の党内ビジョンや国家構想は感じられず、単に小沢憎しの感情だけで動いている。その程度の政治家なのです」(政治評論家・山口朝雄氏)
菅の無投票続投に失敗した仙谷は早速、「若い議員を中心にクリーンな民主党をつくりたいとの思いは強いのではないか」と小沢をあてこすった。政権のスポークスマンとしての立場をわきまえず、いつまで反小沢派のスポークスマンを続けるのか。

◇泣き落としに失敗した菅は窮地に追い込まれた
最後の最後に行ったサシの会談で、2人はどこまでホンネをぶつけ合ったのか。ま、全容はなかなか出てこないだろうが、昨日の小沢の会見で気になるやりとりが明らかになった。
「小沢氏のしゃべりは、主語を明確にしないので本当に聞きづらいのですが、(菅が)サミット出席を引き合いに出して、総理の激務を強調したり、民由合併以来の(仲だから)と泣き落としに入ったくだりに言及したときは、はあ、と思いましたね。せっかく、人払いをして2人だけで会ったのに“菅(首相)はこんな泣き落とししかできないのか”。小沢はその時点で、完全に見限ったと思いますよ」(ベテラン政治ジャーナリスト)
当日になっても会談に「応じない」と言っていた小沢をようやく引っ張り出したのに、昔話と首相の激務を引き合いに出して、暗に「降りてくれ」では話にならない。国民は、2人だけの最終会談でどんな真剣勝負が行われるか、固(かた)唾(ず)をのんで見守っていた。だから、民放各局も生中継したのだ。
それが、こんな低レベルの内容だったことを暴露されてしまった。この小沢発言を聞いた国民、有権者は、菅の狭量さを痛切に感じ取ったはずだ。致命傷である。
もちろん、2人の会談内容はそれだけではないだろう。ただ、言ってはならない、やってはならないことを、現役総理は知らなかったようだ。権力争奪に泣き落としは通用しない。愚かだ。

◇どちらが勝っても代表戦をやる大きな意味がある
政権与党・民主党の代表選は、事実上の“首相選出”選挙である。この選挙は、国会議員以外に、地方議員やサポーターにも投票権があり、ある程度の世論を反映させることができるシステム。それだけに候補を一本化せず、党の顔である菅・小沢の直接対決が実現した意味は大きい。
井田正道氏(前出)がこう指摘する。
「国民の目の前で開かれた代表選が繰り広げられることになりました。2週間の選挙戦の中で、2人の候補者によるマトモな政策論争が期待できる。“修正民主党”な菅総理と、“マニフェスト民主党”にこだわる小沢前幹事長の路線追求選挙は見どころがいっぱい。国民からすれば、民主党という巨大政党を率いて、この国をどういう方向に進めていくのかをジックリ判断できるのです。逆に言えば、政治も経済も危機的な状況にある中で、有権者がこの戦いをどうとらえるか。この国の民主主義にとって極めて大きな意味を持つ選挙ですね」
菅、小沢のどちらが勝とうが、それは結果。代表選を行うことで、双方が政策、政治哲学、理念をぶつけ合うことに大きな意味があるのだ。有権者は両者の言い分を吟味し、国民生活とこの国の将来を託すにはどちらがいいのかを、自分自身の問題として真剣に判断する。それが日本の民主主義、政党政治の成熟につながるのである。