●民主マニフェスト、首相「修正」小沢氏「原点」
(読売新聞 2010年8月31日22時16分)  http://bit.ly/auwbFr


 民主党代表選での菅首相と小沢一郎前幹事長の激突では、2009年衆院選の党政権公約(マニフェスト)の修正の是非や、「政治とカネ」の問題が大きな争点になりそうだ。


 民主党はマニフェストで、国の総予算207兆円を全面的に組み替え、無駄遣いを根絶することで、総額16・8兆円(2013年度)の財源を生み出し、中学卒業まで1人当たり2万6000円を支給する子ども手当の支給や高速道路の無料化などを実現すると掲げた。しかし、実際に政権に就いてみると、財源捻出(ねんしゅつ)はままならなかった。このため菅政権は、子ども手当の満額支給を見送るなど、マニフェストの修正もやむを得ないとの方針に転換した。

 この路線変更を、小沢氏は強く批判する。「選挙を通じて約束したことはやり遂げなければ、皆さんの信頼を勝ち取れない」と述べ、“原点回帰”を訴える。小沢氏支持の議員の多くは「財源を生み出すムダ削減の努力が足りない」などとして、参院選で消費税率引き上げに言及した菅首相を批判している。

 「政治主導」の象徴だった国家戦略局をめぐっても、小沢氏を支持する議員の間では、菅首相が「首相のシンクタンク機能」に格下げする意向であることを批判し、予算の骨格を策定する司令塔となるよう求める声が出ている。

 一方、首相を支持する議員からは、小沢氏が抱える「政治とカネ」の問題に決着をつけるよう求める声が相次いでいる。

 首相自身も31日の記者会見で、「政治とカネの問題で、混乱したり左右されたりしないような政治をぜひ作っていきたい」と強調した。仙谷官房長官も記者団に「クリーンな民主党を作りたい。若い方々を中心に、その思いは強いのではないか」と述べた。

 これに対し、小沢氏を支持する議員からは「小沢氏は今までも『政治とカネ』の問題についてはしっかりと説明してきたし、これからもしっかり説明する」(田中美絵子衆院議員)と擁護する声が上がる。「身内の悪口を言って、排除しようとするのは許せない」との反発も出ている。このため、「政治とカネの問題を言い出せば、感情的になって、代表選後も深刻なしこりが残りかねない」と懸念する声が出ている。



●民主代表選:消費税・普天間争点に
毎日新聞 2010年8月9月1日 0時24分)   http://bit.ly/bLZb0m


 菅直人首相と小沢一郎前幹事長は、09年の衆院選マニフェスト(政権公約)の見直しや消費税増税をめぐり、立場の違いを明確にしてきた。首相は31日、鳩山由紀夫前首相を加えた「トロイカ」体制からの脱皮を鮮明にしたことで、独自色を強めそうだ。一方、小沢氏は「マニフェスト順守」が柱で、首相の財政再建路線に批判を集中するとみられる。外交・安全保障政策では、普天間移設問題や日米関係などを巡り論争が繰り広げられることになりそうだ。【西岡省二、竹島一登】

 ◇財政 増税「大いに議論を」…菅氏 公約重視 内需拡大…小沢氏
 「経済、財政、社会保障の強化が必要。消費税のあり方は大いに議論していく」。首相は31日の出馬記者会見でこう言い切った。参院選敗北後、党内の批判を恐れて消費税に関する積極発言を封印してきたが、小沢氏との一騎打ちが固まり、消費税を対立軸の柱にすえる狙いがのぞく。

 民主党は8月30日、党税制改正プロジェクトチームで消費税論議を開始した。首相の陣営のうち、岡田克也外相は代表時代、社会保障を支えるための消費税増税を主張。31日の菅選対の会合後、前原誠司国土交通相も「消費税を上げる時期、制度設計は避けられない問題。議論の一つになる」と争点化すべきだとの考えを示した。

 「首相という職務を持つ中での候補者だ」。首相はこうも語り、選挙期間中も経済対策の実現に努める姿勢をアピールした。日本経団連などが首相続投を支持したこともあり、円高や雇用対策に重点を置くことになる。

 一方、小沢氏は参院選の最中から首相の消費税発言を「政権を取ったらカネがないからできないなんて、そんなバカなことがあるか」と強く批判してきた。09年公約の履行は、鳩山グループとの連携の象徴でもある。小沢氏支持の新人議員は31日、「マニフェストの理念にもとるのが菅政権だ」と早速批判のボルテージを上げた。

 経済政策では、小沢氏は8月25日に東京都内で行った「小沢一郎政治塾」での講演で為替相場に触れ「当面は円高に振れていく。外需に頼りきりの日本経済は打撃を受ける」と語り、内需拡大策を柱にすえるべきだとの考えを強調した。09年公約の子ども手当、農業の戸別所得補償、高速道路無料化など、いずれも家計に直接働きかける政策で、首相とは対照的に「原点回帰」を訴えるとみられる。

 ◇基地 辺野古案に否定的…小沢氏 日米共同声明継承…菅氏
 外交面では米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題を含む日米関係や、台頭する中国への対応が2大焦点となりそうだ。

 普天間問題では、菅首相は名護市辺野古への移設を盛り込んだ日米共同声明を鳩山前政権から継承している。31日には日米専門家協議が代替施設の滑走路2本をV字形に配置する案と1本にする案を併記する報告書を公表し、共同声明履行のプロセスを一つ進めた。

 これに対し、小沢氏は「きれいな海を埋め立てるのはダメだ」と発言した経緯があり、辺野古への移設に否定的な考えを示してきた。共同声明の見直しも視野に入れているとみられ、「小沢首相が誕生した場合には普天間飛行場の国外移設を主張することになる」(民主党の川内博史衆院議員)との期待感も出ている。川内氏によると、小沢氏は「普天間問題は代表選の争点になる」と語ったとされ、争点化は必至だ。

 親米派で知られる前原国交相は31日夜の前原グループの会合で「小沢氏はマニフェスト重視といいながら、外交では日米合意をひっくり返すのか」と警戒感をあらわにした。

 一方、対中政策では、小沢氏の中国重視が際立っている。昨年12月に民主党国会議員約140人を率いて訪中。胡錦濤国家主席は「中国人民の古き友人」と最高の賛辞を贈って歓待し、新人議員とのツーショット写真の撮影に応じた。小沢氏側も中国側も双方が「最重要」と考える間柄だ。

 菅首相は中国との戦略的互恵関係の進展を訴えるなど、ここ数年の対中外交を踏襲する立場を取っている。6月の代表選出馬の際、日米関係とともに「アジアの中で最も日本との関連が深い中国との関係も重視していく」と明言し、首相就任後もその姿勢に大きな変化は見られず、日中関係が安定基調にある。




●消費税が争点に 首相、再び増税論議を提起
(産経ニュース 2010.8.31 23:43)   http://bit.ly/cec2N8


 菅直人首相が31日の会見で、消費税について「社会保障財源としての消費税のあり方を大いに議論していくことが必要だ」と述べたことで、消費税論議が再燃する可能性が高まった。自身の「消費税10%」発言が参院選大敗を招いたことから、いったんは増税論を封印した首相。だが、代表選が増税に消極的な小沢一郎前幹事長との一騎打ちとなったため、対立軸を明確化しようと“もろ刃の剣”を再び持ち出した格好だ。

 首相は7月末の記者会見で「代表選でそのこと(消費税増税)を約束にするようなことは考えていない」と語っていたが、それからわずか1カ月で、発言をがらりと修正した。

 もともと増税をめぐる両氏の考え方は対照的だ。財務相を経験した首相は「経済成長、財政健全化、社会保障の強化を一体的に進める」と主張し、財政再建に向け消費税を含めた税制の抜本改革に意欲を示している。そこからは、財政再建と社会保障改革を一気に片づけて「本格政権」を構築したいという思惑もかいま見える。

 一方、小沢氏は「行政の無駄削減」を重要視しており、「消費税増税は次期衆院選まで凍結する」という考え方を崩していない。さらに、小沢氏はマニフェスト(政権公約)の完全実施を持論にしており、財源不足を理由に公約修正を進める首相を痛烈に批判。代表選では「財政再建」や「マニフェスト」をめぐる経済論争も焦点となりそうだ。



●批判の一方、「政界再編」期待の野党…小沢氏出馬
(読売新聞 2010年8月31日21時28分) http://bit.ly/anh3Ly


 民主党代表選の構図が菅首相と小沢一郎前幹事長との一騎打ちで固まったことを受け、野党各党からは31日、「国民不在の権力闘争だ」などとする批判の一方、政界再編につながることを期待する声も上がった。


 自民党の大島幹事長は党本部で記者団に「首相の座にしがみつきたい菅氏と、影響力を残したい小沢氏の争いにしか見えない。国民目線が失われ、権力闘争にうごめく姿は、政治の信頼を失墜させている」と批判。石破政調会長は「同じ政党の中に、政策も政治手法も全く違う方々が併存していたことが不自然。この機会に政策や政治手法が鮮明になることは日本の政治にとっていいこと」と語った。

 公明党の山口代表は、国会内で記者団に「代表選に至らず、物事が決められていくのは分かりづらいと思っていた。正々堂々と政策論争を含めて戦っていただきたい」と、話し合いで無投票にならなかった点を評価した。民主党の衆院選マニフェスト(政権公約)に関しても「2人の考え方が違うと言われているので、論争して結論を出してほしい」と訴えた。

 みんなの党の渡辺代表は国会内で記者団に「動機不純の仁義なき戦いをやっているだけだ。万が一、小沢氏が勝てば、国会で(『政治とカネ』の問題などを)徹底追及する」と述べた。同時に、「民主党分裂は必至だ。アジェンダ(政策課題)にのっとった政界再編であるべきだ」と強調、政界再編のきっかけとなることに期待感を示した。

 菅、小沢両氏の仲介役として動いた鳩山前首相に対する疑問の声も噴出した。たちあがれ日本の藤井孝男参院代表は「『私が首相を辞めるから、あなたも辞めなさい』と小沢氏を辞めさせた(と言ってきた)のに、舌の根も乾かぬうちに、今度は小沢氏を『応援します』とはどういうことか。国民をバカにしている」と酷評した。