日銀 追加金融緩和 代表選目当てバレバレ たった1日で化けの皮はがれた菅首相の円高対策

(日刊ゲンダイ2010/8/31)


◆二の矢三の矢はあるのか?
日銀がようやく動いてきのう(30日)、追加の金融緩和策を決定した。年0・1%の固定金利の新型オペレーションによる資金供給を、これまでの20兆円から30兆円に拡大するというものだ。
しかし、効果はたった1日すら持たなかった。為替相場は、緩和策発表前こそ1ドル=86円に迫る円安傾向に振れたものの、発表後は再び84円台まで円高が進行してしまった。株価も伸び悩み、終値は前週末比158円高の9149円だった。
なぜ思ったような効果が出なかったのか。第一生命経済研究所主席エコノミストの嶌峰義清氏はこう言う。
「ただでさえ対応が後手後手に回った上、緩和策が市場の予想の範囲内だった。市場を出し抜くためには、利下げもセットで行うなどすればもう少し効果があったかもしれません」
三井住友銀行チーフストラテジストの宇野大介氏は、さらに手厳しい。
「何のための緩和策なのかハッキリしない。政府の追加経済対策に合わせて円高対策も、という菅内閣の要望で行われただけで、本来の金融政策の目的になっていないのです」
急にバタバタと政府が追加経済対策をまとめたのは、民主党代表選向けの菅首相のパフォーマンス。だから、今回の日銀の金融緩和も「菅首相の顔を立てるため」とマーケットは見透かしているのだ。
今の円高は、そもそも米景気後退によるドル売りが発端だ。しかもFRB(米連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長は追加緩和を示唆している。そうなったら、ますます円高が進む。日本もさらなる緩和策が必要になる。二の矢、三の矢はあるのか。東海東京証券チーフエコノミストの斎藤満氏はこう言う。
「米国が次なる手を打ってきたら、日本も国債買い増しや、金利を0~0・1%レンジに下げるなどの対抗策を打つしかない」
前出の宇野氏は、米経済が立ち直らない限り円高は続くのだから、発想の転換が必要だと言う。
「円高を逆手にとって、米国企業を安くM&Aするなど、海外に円資産を買ってもらうことを考えた方がいい」
しかし、無為無策で知恵のない菅首相じゃ、今後も期待薄だ。