菅では不況脱出は到底不可能 (日刊ゲンダイ2010/8/31)

代表選回避、菅続投で本当にいいのか

─この国難にどちらが首相にふさわしいのか。表向きの貯金がわずか2000万円の菅と、堂々と10億円以上を築き上げた小沢一郎

─結局、小サラリーマン気質や市民運動家体質では壮大なこの国の経済運営は無理だろう。世論が小沢一郎を追い詰めているが、古今東西、右も左も、実力ある政治家は善でもあり悪でもあった

民主党は代表選をやるのかやらないのか。なんだか、怪しい雲行きになってきた。全面対決だと現職首相が負ける恐れがある。泡を食った菅首相が鳩山前首相と会談、「挙党態勢に異存はない」などと言い出したからだ。人事で小沢グループを処遇し、自分は生き残る。そんな算段なのだろうが、それはダメだ。そもそも、なぜ、代表選になったのか。菅が小沢を排除したからではないぞ。菅が想像以上に無能だったからだ。それで、小沢が手を挙げた。なのに、代表選は中止、菅は続投……なんて冗談じゃない。
評論家の佐高信氏が今度の代表選について、うまいことを言っていた。
「毒があるが力のある政治家と、毒はないが何もできない政治家の戦いだ」
今度の戦いは、煎じ詰めていけば、こういうことなのである。日本が直面している国難の大きさを考えれば、どちらが日本の首相にふさわしいのか。一目瞭然なのに、民主党の一部はてんで分かっていないし、大マスコミや、それに踊らされる世論もヒドイものだ。いまだに小沢の“毒”を問題視するのだ。例えば、小沢が代表選出馬を決めた途端、経済無策で脳死状態だった菅内閣の支持率がピョコンと跳ね上がった。小沢憎しの反動だ。「首相にふさわしい人は?」の問いにも菅が8割、小沢は2割。理由はというと、「政治とカネで辞任したばかりの小沢が代表選に出るのは納得できない」が81%(読売新聞)もいるのである。

◆金銭感覚も人間性もセコイ菅直人

政治とカネに関して言えば、国民より百倍も小沢を敵視する検察が、あれだけ調べてシロ判定をしたのに、まだ国民は許さない。
その背景にあるのは、小沢の資産への疑念、邪推の類だろう。検察が「ゼネコンからの裏ガネじゃねえか」と調べた世田谷区の不動産購入費4億円について、小沢はタンス預金だと言った。

とだ。歴史を動かした政治家は、清濁併せのむのである。政治評論家の浅川博忠氏はこう言う。
「政治家に求められているのは国の行く末を長期的に見る目です。そのためにはある程度の財力がいる。市民政治家は庶民感覚があるが、目先の人気を気にするあまり、長期的な国家観が欠落してしまう。両者を併せ持つ政治家、つまり、国家観と倫理観をバランスよく持っている政治家が理想になります」
庶民感覚だけでは町内会のような政治しかできない。2000万円の菅に対し、19億円の小沢は、その財力も含めて、政治家としての実力の一端なのである。
それなのに、民主党は小沢が代表時代の帳簿の洗い出しまでやっている。子供みたいだ。
かと思うと、ある閣僚はひとしきり、小沢の政治手法を批判したあと、何百ページもある資料に目を落とした。こうして、予算の無駄を見つけようとシャカリキになっているのである。
1億円の無駄を見つけて、1億円の景気対策を打つ。これが政治だと思っている。この“金銭感覚”は何なのか。これじゃあ、先が思いやられるのだ。


◆100兆円のカネを出させるのが仕事

「政治家の仕事とは財源がないと言う財務官僚を向こうに回し、カネを出させることですよ。官僚は『景気対策をするなら、その財源を手当てしてくれ』と必ず言う。それに応じていたら、予備費の範囲内でしか景気対策は打てません。そうではなくて、不退転の決意で100兆円くらいの景気対策をやる。『ない』と言ったら『出せ』とやる。それが政治です。ところが、野田財務相は財務官僚の言いなりで、埋蔵金はないと言い、菅首相はきのう、まとめた景気対策の基本方針も予備費の残額、9200億円で対応するという。これじゃあ、自民党の政治家以下です。菅首相はもはや首相の資格はない。この首相の下では日本経済は死んでしまう。代表選を回避するのではなく、菅首相が辞任すべきです」(経済アナリスト・菊池英博氏)
政府は新卒者を雇用した企業には奨励金を出す方針を固めたが、いかにも付け焼き刃だ。こんな対策のオンパレードだから、株はちょっと上がったが、また下がった。
自分の延命しか頭になく、官僚の言いなりでチマチマ政治しかできない菅は、しょせん、宰相の器ではないのである。
代表選回避で、この国が良くなるとは思えない。国の危機的状況を考えた時、小沢待望論は高まるばかりだ。