永田町が注目する菅と加藤紘一の“怪しい関係”  (日刊ゲンダイ2010/8/19)

権力亡者の2人が手を結べば大連立

9月の代表選に勝っても、その後はねじれ国会で悶絶死しそうな菅首相。そんな中、永田町がひそかに注目しているのが、菅と自民党“大物議員”との「親密関係」だ。橋本政権で幹事長を務めた加藤紘一のことである。
菅と加藤は、村山連立内閣の自社さ政権で、ともに政調会長だった。以来、食事したり、酒を飲んだりしたらしいが、2人の緊密さがクローズアップされたのは、2000年秋の「加藤の乱」である。
「森政権の倒閣を狙った当時の『加藤の乱』をウラで応援していたのが、民主党幹事長だった菅です。この時、加藤が『私は菅さんに5秒で連絡が取れる』と野党との連携を匂わせたのに対し、菅も『加藤さんとは多少懇意だ。思い切って民主党の若い仲間と政権をつくる気はないか』と応じてみせたのです」(事情通)
菅は当時の状況を07年9月の雑誌「論座」でこう振り返っている。
〈加藤さんとは何度かは直接会って意思を確認した。もしも加藤さんや山崎拓さんたちが自民党を飛び出して我々と一緒にやろうということになれば加藤首班でもいいかなと思っていた〉
〈(不信任案採決の直前に加藤に電話して)国会に来てくださいよ。不信任案に賛成しましょうよ。そのあとのことはそれからじゃないですかと言った〉
結局、加藤は本会議を欠席。倒閣運動は失敗するのだが、菅は加藤を担ぐことを本気で考えていたのである。
だとすると、ねじれ国会の秋の政局、菅―加藤ラインによる大連立がチラつくのだ。
「加藤の乱の最終局面、『アナタは大将なんだから』と涙ながらに慰留したのが谷垣禎一・現自民党総裁です。この時の涙が物語るように谷垣にとって加藤は裏切れない親分。今も関係は悪くない。それを知っている菅が加藤を通じて谷垣に『連立』を持ちかけるかも知れない。それで菅、加藤の関係が改めて注視されているのです」(民主党関係者)
元毎日新聞記者で、政治評論家の板垣英憲氏はこう言う。
「菅首相が夏休みの軽井沢で読んでいた故・大平正芳元首相を描いた小説がヒントです。大平元首相は、首相就任後に大蔵省に乗せられて『一般消費税』構想を打ち上げ、総選挙で惨敗。その後、自民党内で40日抗争が起きるのですが当時の官房副長官は加藤氏です。加藤氏は、同じように消費税引き上げを訴えて大敗した菅首相の状況をよく理解しているだろうし、ともにリベラル思想だからウマも合うと思います」
谷垣はすでに国会同意人事などでは民主党に協力することを示唆している。権力亡者同士の大連立には警戒が必要だ。