●衆院「中選挙区制」導入が民主・公明連立の焦点


(リベラルタイム 2010年8月6日) http://bit.ly/9enRMh
 
「党として主体的に政策を発信する。民主党からのアプローチには応じないし、こちらからもしない」──。公明党の山口那津男代表は、七月十五日の党中央幹事会でこう語り、民主党との連立どころか、政策協議も行わない考えを表明した。
 実は参院選後、民主党の閣僚や党幹部が、公明党議員に対して、個別に政策面での協力を打診していたという。こうした事例が会議で報告され、党内がざわめいた。それを抑えるため、山口代表が民主党との連携を否定したようだ。山口代表は「菅政権にレッドカードを突きつけてきた。連携するとか、連立を組む考えは持っていない」と再三語っている。
 今回の参院選では「公明党が候補者を立てなかった一人区で、公明票の大半は自民党候補に流れ、自民党の勝利に貢献した。公明党は自民党を見限ってはいない」(自民党選対)との証言もある。
 だが、山口代表の発言を額面通りに受け取る向きは少ない。関係者が「これがキーワード」と口をそろえるのは、選挙制度改革だ。
 民主党は参院選で、小選挙区比例代表並立制のいまの衆院議員定数について、比例代表定数を現行の百八十議席から百議席に削減するとした定数削減策を、今回の参院選マニフェストに掲げた。しかし、小選挙区定数は三百議席のまま。比例代表定数だけ削減すれば、公明党等、民主、自民以外の政党が大打撃を受けるのは確実だ。
 一方、かねてから公明党は、衆院への中選挙区制復活を訴えている。
「民主党は、国民の理解を得やすい国会議員の定数削減を盾に、公明党を揺さぶる腹だ。そこで公明党が有利になる選挙制度で、両党が妥協すれば、民・公連立政権が実現する」。こう語る政界関係者も多い。
リベラルタイム9月号「confidential」



●「参院選の勝者」は公明党民主党が擦り寄るのを待つ


(FACTA 2010年8月4日) http://bit.ly/bchV5E


「最大の勝者は、実は公明党なんだ」
 
公明党関係者は、こうつぶやいた。公明党は比例区では過去最低に並ぶ6議席にとどまったが、選挙区では東京、大阪に加えて埼玉でも勝利し、9議席を獲得。非改選と合わせて19議席となり、参院第3位の座は確保した。民主党は改選を10も下回る44で、非改選と合わせても106議席。国民新党の3と民主系無所属1を加えても110で、過半数の121に12議席も足りない。このため民主党は国民新党のほかに、今回10議席を獲得したみんなの党と組んでも過半数に届かない。逆に公明党の合意さえ得られれば、国民新党の3議席がなくても、何とか過半数をクリアできることになった。これは公明党だけが、政局のキャスチングボートを握ったことを意味する。
 
参院選後、公明党の山口那津男代表は「レッドカードを突きつけた相手と組むことはない」と明言しているが、民主党と徹底的に距離を置くかと言えば、そうではない。公明党の支持母体である創価学会幹部は「むしろ来春の統一地方選挙に向けた実績作りが大切。そのためにも単独キャスチングボートの地位を徹底的に利用する。要するに民主党を公明党に擦り寄らせることだ」と話す。消費税増税に強い拒否反応を示す支持層に対して、公明党が「消費税封じ」の存在感を示す絶好のチャンスとの見方もある。
 
その一方で、公明党は民主党を早期解散・総選挙に追い込むことには否定的だ。「我々が望むのは中選挙区制の復活」と公明党関係者は言い切る。創価学会の池田大作名誉会長(82)が高齢となった今、陣頭指揮は執れない。「学会員の選挙運動へのモチベーションを維持するには、負担の大きい小選挙区制より中選挙区制が望ましいに決まっている」と、先の創価学会幹部も言う。
 
問題は「小泉政権(当時)には創価学会員がいる」などと攻撃を繰り返してきた菅首相に拭いがたい不信感があること。公明党内には「民主党代表選で、小沢一郎前幹事長が菅首相を退陣させてくれた方が連携しやすい」との声もある。かつての市川雄一元書記長との「一・一ライン」復活とはいかないまでも、創価学会には小沢氏との復縁を望む幹部もいるようだ。民主党の代表選では「ねじれ国会」を乗り切るうえでも、公明党・創価学会とのパイプの太さが隠れたポイントになりそうだ。
 
(月刊『FACTA』2010年8月号、7月20日発行)