政治はなぜ何もしないのか 政治の劇的変化のためもう一度選挙を

(日刊ゲンダイ2010/8/5)

9月14日の民主党代表選が終わるまで、与党も野党も時間を浪費しているだけで空白があと1カ月半も続く奇怪な政情

民主党は内部向き、野党は自民も公明も政権復帰だけが目的で国や国民生活に降りかかっている難題解決の姿勢も方策もなしにアキレている選挙民いったい、与党も野党もなにをやっているのか。
参院選が終わり、やっと政治が動き出すかと思ったら、日本の政治はまるで“開店休業”だ。せっかく4日間も予算委員会を開いているのに、白熱した議論はゼロ。意味のある法案は一本も提出されていない。
菅首相の覇気のなさが問題になっているが、政界全体が活気を失っている感じだ。
「“ねじれ国会”となったのだから、本来なら野党は次々に政策を打ち出し、民主党も国民の支持を取り戻すために、大胆な政策を矢継ぎ早に提示するのが当然です。ところが、与党も野党もヤル気が見えない。菅首相は論戦に強かったはずなのに、発言を控え、ひたすら低姿勢。いっさい具体策を示さず、野党に協議ばかり呼びかけている。かと思えば、野党は野党で意味のない追及ばかり。質問に立った自民党の谷垣総裁は、あとから『もう少しパンチを利かせてもよかったかな』と漏らしている始末。国会議員には、年間3300万円もの歳費が払われているのに、これでは税金ドロボーと批判されても仕方ありませんよ」(政界関係者)
その裏で、官僚はやりたい放題だ。天下りの裏ルートを確保するなど、決まるのは官僚支配の復権ばかり。政治主導どころか、日本から政治そのものが消えている状態だ。

◇9月14日まで政治はお休み

日本の政治が開店休業状態になっているのは政界全体が9月14日に行われる民主党の代表選が終わるまで、身動きが取れなくなっているからだ。
すでに民主党は政策などそっちのけ、代表選一色になっている。海江田万里、原口一博、小沢鋭仁、松本剛明……などが候補者に取り沙汰され、連日連夜「会合だ」「勉強会だ」と中堅・若手が集まっては、誰を担げばいいのかと代表選に向かって突っ走っている。
「民主党は代表選の結果が出るまで、新しい政策はなにもやれなくなっています。いま、菅執行部があれをやる、これをやると打ち出しても、9月14日の代表選に敗れたら、すべて見直しになる可能性が高いからです。なにより、首相自身が代表選のことで頭がいっぱいで、国民生活や政策にまで気が回らない。それに代表選で不利になる恐れがあるから、具体的なことを言いたくても言えず、ますます前向きな発言が少なくなっている。民主党議員も、1カ月半後に総理をクビになるかもしれない菅首相に対して半身になり、誰も積極的に政策提言しない。民主党内は『すべて代表選が終わってからだ』という空気になっている。9月14日まで政治は動かないでしょう」(政治評論家・有馬晴海氏)

自民党も、民主党の代表が誰になるのか、新総理に誰が就くのか、小沢一郎はどう動くんだと様子見の状況だ。◇「政治空白」を大不況が襲う
しかし、ただでさえ通常国会が閉会した6月16日から、実質2カ月も“政治空白”が続いているのに、さらに9月14日まで1カ月半も時間を浪費するなんて許されるのか。
もちろん、日本になにも問題がなければ、政治空白が何カ月続こうが構わない。しかし、日本は政治も経済も問題だらけ。難問山積だ。一日だって、政治空白は許されない。「いま日本が直面している課題は、官僚では解決できない難問ばかりです。年金、医療、格差拡大……。政治がどうにかするしかない。とくに懸念されるのは、秋以降の経済です。まだ病み上がりの日本経済は、輸出がなんとか下支えしてきたが、とうとう1ドル=85円まで円高が進んでしまった。輸出業界の自動車や電機が大ピンチに陥るのは間違いない。しかも、内需を支えてきたエコポイントが廃止になる。自動車、電機はやっていけるのか。6月の完全失業率も、5・4%と4カ月連続で悪化しています。ここまで景気の悪化がハッキリしてきたら、緊急の雇用対策やエコポイントの延長など、追加の経済対策を大急ぎで実施する必要がある。なのに、与党も野党も、民主党の代表選が終わるまで身動きが取れないなんて最悪です」(政治評論家・本澤二郎氏)
景気対策は先手、先手で実施するのが鉄則だ。不況が悪化した後では、なにをやっても効果が薄れるからだ。
なのに、このまま1カ月以上も放置されそうなのだから、日本経済も国民生活もガタガタになりかねない。

◇民主党は解散で活路を開け

民主党は代表選で政治空白をつくっているくらいなら、思い切って国会を解散し、もう一度、総選挙を実施すべきだ。ねじれ国会で動かなくなった政治を劇的に変化させるためにも、その方が得策というものだ。
「9月の代表選は菅首相の再選が濃厚ですが、誰が首相になろうが、ねじれ国会は変わらない。野党が反対したら法案は一本も通らない。いずれ行き詰まり、総辞職か解散に追い込まれるのは目に見えています。だったら、迷わず解散に踏み切った方が、よほど展望が開ける。民主党が自分たちの掲げた政策を自信を持って実行できないのは、やはり参院選という『直近の民意』でノーを突きつけられたことが大きい。野党時代の民主党も『直近の民意を尊重すべきだ』と訴えてきた。だったら、いま一度、民意を問うしか突破口はない。民主党が総選挙で過半数を取ったら、たとえ野党が参院で過半数を握ったままでも、野党も直近の民意に従わざるを得なくなります」(本澤二郎氏=前出)

最悪なのは、このまま代表選まで政治空白が続き、代表選後も「ねじれ国会」のために政治が動かず、結局、来年の通常国会で解散・総選挙となることだ。政治空白が延々、半年以上も続くことになってしまう。そんなことになったら、日本は沈没、国民生活はズタズタである。