「政治とカネ」に重大な疑問 小沢一郎だけが悪者なのか (日刊ゲンダイ2010/7/28)


自民党の大もとを結成した時のカネは一体どこから出たのかご存じか、公明党の資金源はどこなのか、小沢がカネを10億円持ち、鳩山が母親から遺産の前払いをもらって大騒ぎするのはなぜか

問題なのは国会議員になれば年に3300万円の税金からの収入を得て、議員特権もあって高等遊民化した旧政権時代の政治屋とそれと同じに堕落しそうな政権与党の成り上がり議員たち
もう、菅首相は限界ではないか。暑さにやられたのか、ほとんど脳死状態だ。民主党が政権を取って初めての本格的な予算編成。どんな方針で予算を組むのかと期待したら、財務官僚に丸投げしてしまった。自民党の予算編成とまったく同じやり方だ。民主党らしさを完全に失っている。なにをすればいいのか、分からなくなっているのだろう。
方向を見失った民主党政権を立て直すには、四の五の言わず、剛腕の小沢一郎に登場してもらうしかないのではないか。小沢前幹事長だったら、財務官僚に取り込まれることもない。「国民生活が第一」を掲げた本来の民主党の姿を取り戻し、「政治主導」で予算編成に取り組むはずだ。ここは、小沢一郎の経験と知恵が必要な場面だろう。
ところが、小沢一郎の復権を「政治とカネ」の問題が阻みつづけている。
自民党は、小沢前幹事長を封じ込めるために、しつこく「政治とカネ」を騒ぎ立てるつもりだ。早くも「参院で証人喚問する」と牽制している。さらに、民主党の「反小沢一派」までが、コトあるごとに「政治とカネ」を取り上げては、小沢一郎の復権を阻止しようと暗躍。菅周辺は、9月の代表選に小沢が出馬できないように、陰に陽に揺さぶるありさまだ。
これでは、小沢一郎はいつまでたっても力を発揮できない。

◇私利私欲で「政治とカネ」を騒ぐ愚劣


しかし、政界の最大実力者が表舞台に立てないなんて、こんなもったいない話はない。民主党にとっても大きな損失だろう。
「反小沢」の民主党議員は、いい加減、自分たちの私利私欲、利害得失のために「政治とカネ」を利用するのはやめるべきだ。
小沢一郎の「政治とカネ」は、一度決着がついている。東京地検がムリにムリを重ねて強引な捜査をつづけたが、結局、証拠もなく、起訴できなかった。
正体不明の市民団体が検察に告発し、クジで選ばれた一般市民が「検察審査会」で審査をつづけているが、たとえ強制起訴されても裁判で「無罪」になることは、専門家なら分かりきった話だ。
なのに、思惑絡みで、いつまでもネチネチやるのは、建設的じゃない。
「いま永田町では、細川護煕が書いた『内訴録 細川護煕総理大臣日記』が、小沢問題と重ねて読まれています。当時、細川首相に渡った1億円の佐川急便マネーを問題にし、辞任に追い込んだ野中広務の証言が出てくるのですが、『細川さんは気の毒だった……佐川の問題は総理が辞任するような話ではありませんでした』と、疑惑は“シロ”だったと認めているのです。自民党の総裁だった河野洋平も『……スキャンダルの追及? まあ、そのほうがわかりやすかったということでしょう』とふり返っている。要するに、なにも問題はなかったのに、政争の具とし、思惑だけで騒ぎ立てていたわけです」(政界関係者)
小沢一郎の「政治とカネ」も、まったく同じ構図というわけだ。

◇結党以来「カネまみれ」の自民党


そもそも、政界も大手メディアも寄ってたかって小沢一郎を糾弾しているが、小沢だけがワル者なのか。攻め立てている連中は、それほど身ぎれいなのか。
少なくとも自民党はエラソーなことは言えないはずだ。結党以来、カネにまみれてきたのが自民党の歴史である。結成資金からして怪しいカネだったのは、公然の秘密だ。
政治評論家の本澤二郎氏が言う。
「自民党の前身となった自由党の結党資金と運営資金を、政財界の黒幕だった児玉誉士夫が負担していたというのは、いまや定説になっています。もともとは、終戦のドサクサにまぎれ、児玉誉士夫が旧海軍の資産を中国から持ち帰ったものとされている。表に出せないカネだったのは確かでしょう」
結党以来、これまで、いったい何人の自民党議員が「政治とカネ」で逮捕されたことか。つい最近も、大物議員の重大疑惑が飛び交ったほどだ。
公明党だって立派なことは言えない。公明党の資金源はどこなのか。創価学会に依存していることは、日本中が知っていることだ。宗教団体に丸抱えされ、カネを集める必要のない連中が、利いたふうなことを言うのは片腹痛い。
小沢一郎が10億円のカネを持っているとか、鳩山由紀夫が母親から巨額資金を得ていたと大騒ぎする資格が、自民党や公明党にあるのか。

◇高額報酬に見合う仕事をしているのか

大新聞・テレビは、小沢一郎の「政治とカネ」を問題にするヒマがあったら、高額な議員報酬を受け取りながら、ロクな仕事もしない国会議員の方を問題にすべきだろう。
国会議員になれば、どんなボンクラだろうが、黙っていても毎月130万円の歳費と100万円の文書交通費が懐に入ってくる。ボーナスが年間548万円。年収は総額3300万円だ。
さらに、政党助成金だ、立法調査費だ、秘書給与だ……と、国会議員1人に年間1億円の税金がつぎ込まれている。しかも、政治資金の使い方はメチャクチャだ。女性用のキャミソールを買う現職大臣までいる。日本の政治全体を考えたら、議員特権を享受し、高等遊民のようになっている連中こそ問題だろう。
「民主党も自民党も中堅・若手が、うれしそうにテレビに出演しては、自分の能力も顧みず、政治とカネがどうしたこうしたと、ご託を並べているが、彼らがどこまで年収3300万円に見合う仕事をしているのか疑問だらけです。とくに松下政経塾出身の民主党の若手議員は、社会経験もなく、頭デッカチになっているのに、その自覚さえない。小沢一郎の政治とカネが問題にされていますが、よほど彼らの方が日本の政治を劣化させている気がします」(政治評論家・有馬晴海氏)
大新聞・テレビの記者だって、いかに自民党がカネにまみれてきたか、小沢批判をしている連中にどんな思惑があるか、分かっているはずだ。なのに、小沢一郎だけをワル者にするのは、いくらなんでも公平さに欠けるというものだ。