菅直人政権は、「消費税アップ」で支持率急低下を招き、小沢一郎前幹事長に大逆襲、反転攻勢の口実を与える

(板垣 英憲「マスコミに出ない政治経済の裏話」10/06/23 01:52)

◆菅直人首相は、首相番記者との朝のぶら下がり会見を禁止している。鳩山由紀夫前首相が記者から同じテーマの質問を受ける都度、微妙に言い方を変えていたため、「ブレる首相」のレッテルを貼られて、国民から信用を失い、支持率低下を招き、自滅したことを見て、前車の轍を踏みたくないと警戒したのが原因らしい。


◆確かに、番記者につぶやいた発言で、自分の首を絞める結果になった首相は、鳩山前首相ばかりではない。私の経験で言えば、福田赳夫首相が大平正芳幹事長とが争った総裁選挙の予備選挙の際、内閣調査室長が「福田優勢」という情報を福田首相に報告し、これを真に受けた福田首相が、番記者とのやりとりのなかで、「予備選挙で2位以下になった候補者は、本選挙に出るべきではない」と発言した。ところが、党員党友が全員参加する予備選挙の結果、大平幹事長がトップに立ち、福田首相は2位になっていた。このため、自ら発言したことに反することができない「禁反言」の罠にかかり、福田首相は、本選挙に出馬できず、退陣して大平幹事長に政権を移譲せざるを得なかった。こうした前例を想起すれば、菅首相が「うっかり発言」「不容易発言」などをしないように警戒するのは、理解できるけれども、若い番記者たちは、菅首相を引っかけてしまおうと、意地悪質問をじっくり仕込んで、記者会見のチャンスを狙ってくるであろう。
また、番記者たちとの良好関係が築かれなければ、森喜朗元首相時代のような不穏な関係になり、わざと激怒させるような質問を仕掛けてくる可能性は大である。菅首相の朝のぶら下がり会見禁止が、却って裏目に出ることも十分に予想できる。

◆菅首相は、消費税アップを公約し、かつ参院選挙の「勝敗ライン」について聞かれ、前々回得た「54議席を目標とし、これに積み上げていく」と記者会見で発言している。ところが、著名な政治情勢調査機関の予測では、「1人区29のうち、民主党は18議席」という。これは、3年前の前回参院選挙では、民主党が獲得した「23議席」からは、5議席減となる。比率で言えば、7%の減である。この数字を全体の傾向として使うと、「54議席」という数字が弾き出される。辛うじてセーフということになるけれど、情勢はそう甘くはない。「消費税アップ」を嫌う有権者が増えていけば、菅内閣の支持率がさらに減少し、獲得議席も、「50議席前後」にならないとも限らない。とくに複数区に2人以上立候補させようとしている小沢一郎前幹事長が設定した現在の選挙戦術が完璧に成功する保証はない。もちろん、選挙結果の責任は、菅首相と枝野幸男幹事長が負わされる。


◆消費税の扱いに関して、小沢前幹事長は、「消費税アップに反対」の立場を堅持しているので、菅首相や仙谷由人官房長官、玄葉光一郎公務員制度改革担当相、枝野幸男幹事長らが、結託して勝手に「消費税アップ」を決め、マニフェストに書き込んだことを、「自分との決別宣言」と捉えている。従って、小沢離れして、脱小沢色を鮮明にした挙句に、消費税アップが国民有権者の反発を呼び、参院選挙に敗北したのであれば、それはすべて菅首相らの自業自得と考えている。
このときこそ、小沢前幹事長が、まさしく「大逆襲」あるいは「反撃に出る時」、つまりは「反転攻勢の時」と考えているようである。