「消費税」から逃げ始めた管首相

(日刊ゲンダイ2010/6/22)
予想外の支持率急落「財政再建」支持は金持ちの理屈

「菅さん脂汗が出てたねえ」――。きのう(21日)官邸で行われた菅直人首相の記者会見を見て、自民党中堅議員がほくそ笑んでいた。「消費税増税は国民の理解を得られる」と踏んでいた菅首相の期待を裏切るように、V字回復した内閣支持率はアッという間に下がり出した。焦る首相は、「消費税導入は早くて2、3年後」と支持率下落にブレーキをかけようとしているが……。参院選投票日まであと3週間、逃げ切れるのか?
NHKの内閣支持率の12ポイント下落には、さすがの菅も青くなったことだろう。たった1週間でこの下落なのだ。
鳩山政権時代の民主党マニフェストを“バラマキ”と批判し、財政再建の必要性を唱えてきた大マスコミや学者が、こぞって消費税増税を歓迎している。だから菅は、国民も当然受け入れてくれると思っていた。しかしそれは、5%の消費税が倍になったって、たいして困らない高給取りたちの理屈。リストラや給料カットに耐えるサラリーマン家庭は、奥さんがパートやアルバイトに出て家計を支えている。増税に簡単にYESとは言えないのだ。年金世帯やワーキングプアには死活問題だから、なおさらである。
だから、消費税が参院選のテーマになり、マスコミが騒げば騒ぐほど、支持率は下がっていく。NHKや新聞各社は、これから投票日まで、トレンド調査と称して毎週支持率を調べる。「毎週3~5ポイントずつ下がって、それが記事になるとツラい」と、民主党の改選組は頭を抱えている。
とにかく、菅首相の「増税」発言は唐突すぎた。週末の街頭では、辻立ちの参院候補がまともに説明できずシドロモドロ。日曜朝の報道番組で玄葉光一郎政調会長は、「総理の発言は公約」と言っていたが、夕方に支持率急落の一報が伝わると、内閣のマスコミ対策を担当する福山哲郎官房副長官は大慌てだった。
そのため21日の会見で菅首相は、「参院選後にすぐ消費税を上げるという見方があるとすれば、間違ったメッセージだ。参院選後から超党派で本格的な形で議論をスタートさせたい。それが民主党の公約だ」と、自らの発言を微妙に修正。「逆進性を改めるために複数税率や還付を議論する」「少なくともこれから2年、3年、あるいはもう少しかかるのではないか」と、逃げの姿勢を見せたのだ。
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏がこう言う。
「菅さんは自分の演説や議論に自信を持っている。消費税増税も、上手に言ったつもりかもしれないが、そこに落とし穴があった。22日に日本記者クラブで行われる9党首討論を皮切りに、公示後のテレビ討論などで、野党は消費税問題を突いてくるでしょう。菅さんがブレたりしないか。民主党は爆弾を抱えることになは爆弾を抱えることになりました」
野党は、菅首相がボロを出すのを、今か今かと待ち構えている。