参院選の結果次第で消費税政局、政界再編の可能性 [小沢一郎は何を狙っているのか]

(日刊ゲンダイ2010/6/21)

“その日”に備えて虎視眈々
菅首相に言われたからでもないだろうが、熊野古道で「自分をもう一度洗い直し……」などと言っていた小沢一郎前幹事長。参院選までは「一兵卒」として、選挙を支えるつもりなのだろうが、その後はどうか。政界では「消費税増税をめぐって、小沢一派が民主党を飛び出し、政界再編を仕掛けるのではないか」なんて物騒な情報も乱れ飛んでいる。「反増税」という大義名分を得た小沢は「消費税政局」を仕掛けるのか。
すでに政界では、選挙後の「消費税政局」が焦点になりつつある。民主党が単独過半数を逃せば、連立が必要だ。しかし、今の連立パートナーの国民新党の亀井代表は「消費税増税なら、連立離脱も」と明言。社民党や、みんなの党も増税反対だ。
「菅政権は消費税増税を引っ込めない限り、自民党を切り崩すか、増税に理解のある公明党や、たちあがれ日本、新党改革などと組まざるを得ません。そんな芸当が、菅首相や仙谷官房長官ら“脱小沢派”にできるのか。政権運営はドン詰まり。あらゆる政党とパイプを構築してきた小沢さんに泣きつくハメになる」(小沢派中堅議員)
脱小沢派がそれでも小沢をソデにすれば、小沢も動くのではないか。つまり、小沢一派が「反増税」の錦の御旗を掲げて集団離党し、他党の反増税派と手を握るシナリオだ。「まさか」だが、小沢の悲願が自民党の分裂と真の政界再編であることを考えると、「ない」とは言い切れない話だろう。いずれにしても、150人といわれるグループを束ねている限り、小沢は動ける。常に「政界再編」のキャスチングボートを握ることができるわけだ。
菅政権は参院選で過半数の議席を取っても、“小沢の影”に怯えることになる。9月の代表選があるからだ。緻密(ちみつ)な小沢は、 代表選で政治力を見せつけるべく、用意周到に準備を重ねてきている。
「今度の代表選は、2年の任期満了に伴う正規の選挙。複数候補が立てば、8年ぶりに『党員・サポーター投票』が行われます。小沢さんは、これにも自信満々らしい」(鳩山グループの議員)
現職議員の党員・サポーター集めのノルマは1000人。自己申告制で罰則がないため、多くの民主党議員は熱心ではなかったが、小沢一派は違った。
「小沢さんは一新会など自分に近い議員にハッパをかけて、党員集めを指示していた。中堅議員は、当選まもない議員のノルマを手伝うように言われた。特に、4月末から5月初め頃には、『仙谷・前原が政局を仕掛けてくるかもしれない。しっかり党員集めするように』と伝えていました。サポーター票は圧倒的に小沢支持で固まっているとみられています」(小沢に近い議員)
8年前は党員・サポーター31万人、国会議員183人で、党員・サポーター票が全体に占める割合は4割だった。この間、国会議員は倍以上に増えたが、それでも党員・サポーター票は全体の2割程度はあるだろう。かなりのインパクトだ。
小沢がその気になれば、原口総務相や海江田万里衆院議員を担いで、菅の対抗馬にすることもできる。検察審査会がシロ判定を下せば、自分が出ることも考えられる。菅がおかしな出方をするようなら、小沢はいつでも牙をむく準備は整えているわけだ。永田町では小沢の政治力低下がささやかれるが、小沢がそう簡単に“死ぬ”とは思えない。