9月代表選の復権シナリオ [小沢一郎は何を狙っているのか]
(日刊ゲンダイ 2010/6/17)
「日本改造計画」を超える理念を準備
菅首相から「しばらく静かにしていただいた方がいい」と通告された小沢一郎は、ほとんど人前に姿を見せなくなった。
しかし、このまま引っ込むつもりはない。9月に行われる代表選で勝負をかけてくるのは間違いない。
小沢グループ150人の「数の力」をバックにすれば、十分に勝機はある。ところが、小沢本人は数の力に頼らない、まったく違う戦略を考えているという。小沢側近がこう語る。
「93年に出版した『日本改造計画』がベストセラーになったように、もともと小沢一郎は“政治理念”で売っていた政治家。中小企業の経営者を中心に、いまだに『一度は小沢総理を見てみたい』という声が根強いのも、単なる権力者とは違うと分かっているからです。ただ、政権を取らなければ理念を実現できないと考えている小沢一郎は、3年前の参院選、昨年の衆院選と“選挙至上主義”で突っ走ってきた。しかし、9月の代表選では、もう一度、政治理念を掲げて勝負するつもりです」
小沢が政治理念で勝負する気になっているのは、自分が代表時代に打ち出した「国民生活が第一」という党是を、菅執行部が次々に引っくり返していることに我慢ならないことも大きい。小沢が否定していた「消費税増税」まで打ち出している。政治理念で勝負すれば、負けないという自負もある。「反小沢」一派の議員でさえこう言う。
「菅首相、仙谷官房長官、枝野幹事長の3人は、政策通とされているが、政治理念で争ったら、小沢一郎には勝てないと思う。とくに仙谷、枝野の2人は、弁護士出身が陥りやすい欠陥がモロに出ている。弁護士はクライアントが原告なら原告の、被告なら被告の利益にあわせて理論武装する。常にポジショントーキング、自分というものがない。実際、2人ともその場しのぎの論争には強いが、骨太の政治理念を聞いたことがない」
すでに、少数の小沢側近は政治理念の再構築に動きだしている。
「小沢一郎は、旧自由党時代に『日本一新11基本法案』をまとめている。『日本改造計画』を究極まで進化させたもので、小沢はいまでも自分のホームページに載せている。
9月に打ち出す政治理念は、11基本法案をバージョンアップさせたものになるはずです」(民主党事情通)
小沢一郎が新たな政治理念を打ち出したら、世論も大きく変わるかもしれない。