幹事長を入閣させられなかった管首相のジレンマ

(日刊ゲンダイ2010/6/15)

不完全な「政府・与党一体化」

◇官邸に部屋は置いたが…
政治主導から後退し、官僚を「プロフェッショナル」と持ち上げた菅直人首相。国家公務員法改正案の廃案も決まり、脱官僚路線はすっかり色あせてしまったが、民主党の看板「政府・与党の一元化」でも菅首相はジレンマに陥っている。 民主党と自由党が合併した03年。党首だった菅直人と小沢一郎が共著で「政権交代のシナリオ」という本を出版している。そこには、「菅内閣が誕生したら何をするのか」というビジョンがつづられているのだが、「政府・与党の一元化」について菅は、こう記している。
〈私は以前から民主党が与党となった場合、幹事長を入閣させようと考えています。そうすることにより、内閣の決定イコール与党の決定、与党の決定イコール内閣の決定とする一元化が実現できるからです〉
ところが、菅政権で枝野幹事長は入閣せず、玄葉政調会長が入閣した。枝野幹事長は、官邸の首相補佐官室に机を置く、「中途半端な官邸入り」(民主党議員)となった。
「昨年の鳩山政権発足時、小沢幹事長が副総理として入閣するプランがありました。しかし、反小沢勢力が『小沢さんが入閣したら、政府も党も牛耳られてしまう』と難色を示し、当時の鳩山代表―岡田幹事長ラインは、小沢さんを党務に専念させるようにしたのです。小沢幹事長を入閣させなかったのに、枝野幹事長になったら一転、入閣させるわけにはいかない。露骨すぎますからね」(民主党事情通)
昨年の政権交代時に小沢幹事長が入閣していれば、党の決定イコール内閣の決定となり、「鳩山首相と小沢幹事長の意思疎通ができていない」などと批判されることはなかっただろう。
反小沢勢力が小沢排除の論理に固執しすぎたことで、結局、菅首相は長年思い描いていた「政府・与党の一体化」を正しい形でスタートさせられなかったのだ。
民主党はいい加減、「小沢か反小沢か」で動くのを終わりにしないと、矛盾だらけの政治から抜け出せない。