奇兵隊大臣の親の仕事 (日刊ゲンダイ2010/6/10)

庶民も参加 サラリーマン、個人事業主、農家、牧場… 国会議員の2世は1人だけ


こんな庶民的な内閣は久々に見た。
菅首相は、自らの内閣を「奇兵隊内閣」と命名。武士だけでなく、庶民も参加した高杉晋作の「奇兵隊」になぞらえたが、それもナットクの顔ぶれだ。
菅自身、「普通のサラリーマンの息子」と言う通り、宇部曹達工業(現セントラル硝子)の工場長だった父の転勤で、山口県の宇部高校から都立小山台高校に編入。東工大理学部に進んだ。親が政治家ではない“庶民宰相”は、94年の村山首相以来、16年ぶりだ。
国対委員長に就任した樽床伸二は、菅と戦った代表選のスピーチで「父は紳士服の仕立て屋、祖父は全盲のマッサージ師」と生い立ちを語っていたが、実家が中小・零細の個人事業主という閣僚は多い。
「特命担当大臣に任命された玄葉光一郎の実家は小さな造り酒屋。川端文科相は薬問屋で、小沢環境相は印刷会社です。荒井国家戦略相の父親は、高校教師をしながら幼稚園を創設。枝野幹事長の実家も零細企業でしたが、中学生の時に倒産してしまったそうです。イオンの御曹司として知られる岡田外相も、子どもの頃はまだ地方の呉服商だったので、裕福に暮らした記憶はないと言っていました。行政刷新相に抜擢された蓮舫の父親は、台湾出身の貿易商。母親は新宿でバーをやっています」(永田町事情通)
亀井金融相は農家の出身。東大時代はキャバレーのボーイなどをして学費を稼いだ。副大臣から昇格した山田農相も負けていない。長崎県の五島列島で生まれ育ち、早大に進学。地下鉄工事や皿洗い、ボイラーマンなどをしながら卒業した。実家は現在、牧場を経営している。

─前原、直嶋は母子家庭で
「前原国交大臣も、ああ見えて苦労人です。中学生の時に、京都家裁の総務課庶務係長だった父親が自殺。母子家庭で育ちました。高校から大学卒業まで奨学金をもらって通ったことは有名です」(民主党関係者)
直嶋経産相も、池田市の職員だった父親を幼少時に亡くし、母子家庭で苦労して育った。小学5年生から新聞配達で家計を助けていたという。


こうして見ると、叩き上げばかりだ。小学校から私立でノンビリ育ったボンボン政治家とは、たくましさが違う。
「財務相に就任した野田佳彦の父親は、陸上自衛隊第1空挺団の隊員。長妻厚労相の家はノンキャリの警察官、原口総務相の父親は佐賀県庁の職員、仙谷官房長官は父親が裁判所の書記官で母親が高校教師でした。菅内閣で国会議員を親に持つ閣僚は、中井洽国家公安委員長だけです」(前出の永田町事情通)
自民党のラストエンペラーとなった麻生政権では、閣僚16人のうち実に11人が世襲議員だったし、その前の安倍内閣、福田内閣も、ほぼ半数が世襲議員だった。
世襲だらけの自民党政権とは対極にある菅の奇兵隊内閣。庶民目線にかけては筋金入りだ。