小沢一郎の検察再捜査は自民党政権復活を狙う右派勢力の策謀  (日刊ゲンダイ 2010/4/28)

検察審査会などの不当な組織
小沢一郎・民主党幹事長の政治資金の疑惑について、検察審査会がきのう(27日)、「起訴相当」の結論を出したことで、野党は大喜びだ。谷垣自民党総裁は「東京地検は真実解明を」と叫び、みんなの党の渡辺喜美は「証人喚問を」。たちあがれ日本の平沼代表は「職を辞せ」と言い出している。
おそらく、新聞、TVも似たような論調になる。小沢一郎は政治的に追い詰められていく。こうなると、素朴な疑問が浮かぶのである。

「検察審査会って何なのか」ということだ。
「起訴相当」は国民から選ばれた11人が出した結論だが、もちろん、彼らはズブの素人。しかも、議論を尽くしたのであればいざ知らず、審査会は今月複数回開かれただけ。そのうえ、11人の氏名は公開されないし、彼らに取材することや、彼らが取材に答えることも許されていない。
要するに、審査会の中身を検証する手段は何もないわけで、そんなのが小沢一郎の政治生命を左右し、実際、小沢は追い詰められている。まったく納得がいかない話なのだ。
まず、今度の結論について、郷原信郎・名城大教授が言う。
「政治資金規正法違反で責任が問われるのは会計責任者です。それなのに、検察審査会は小沢氏の共謀共同正犯が『強く推認される』とし、起訴相当とした。会計責任者ではない小沢氏の共犯を問うには、詳細な共犯の裏づけが必要なのに、ムチャクチャです。検察審査会がこうなったのは、小沢氏の不起訴をめぐり、『東京地検内部でも賛否が分かれた』などと報じられたからでしょう。こういうことが起きると刑事司法は今後、どうなっていくのか、と思います」

そもそも、検察審査会は戦後、GHQが検事の公選制を導入しようとし、あわてた法務官僚が代案として国民によるチェック機関をつくることにしたのがルーツだ。
法務省だってつくりたくなかったのが本音で、検察庁法の立法者のひとりである出射義夫・元検事正は「率直に言って廃止した方がいい。それによって失うものはほとんどない」と書いている。
法務省だって、折を見て廃止にするつもりだったのである。それが司法制度改革で検察審査会の権限が強化され、さしたる議論もないまま、モンスターのような存在になってしまった。それが今回、強権を振るったのである。

≪ポピュリズムの横行する日本では"両刃の剣"≫
司法制度の歴史に詳しい中島政希代議士は言う。
「検察審査会はうまく機能させれば、検察のチェックになる。しかし、ポピュリズムといっしょになり、被害者への同情が犯人への報復主義につながったりすると、非常に危険な存在になってしまう。米国の大陪審制度は、起訴しても裁判を経なければ推定無罪だし、社会もそれがわかっているが、日本は違う。起訴されると、犯人のように見られてしまうところも問題です」
実際、小沢は完全に極悪人扱いだし、本来は冷静になるべきメディアが小沢=犯人で攻め立てている。
その裏では、検察審査会を利用して、小沢一郎を抹殺しようとするメディアの思惑がチラつく。小沢を政治的に殺して、自民党政権復活を狙う策謀が見え隠れする。
検察は改めて、事件を再捜査するというが、証拠や証言の精査、場合によっては小沢の再聴取の可能性もあるという。膨大な時間と税金の無駄遣いだ。

検察審査会というド素人に“物言い"をつけられた検察にもおそらく、プロの意地みたいなものはあろう。従って、不起訴の方針は変わらないとみる関係者は多いが、だとしたら、よけいに検察審査会の存在理由が問われる。政治謀略に利用されるだけの存在であれば、百害あって一利なしだ。