小沢一郎が辞めたら自民悪政復活の悪夢 (日刊ゲンダイ 2010/4/24)

参院選前に辞めた場合

―――そうなると政治的シロウトの民主党大臣や議員たちの勝手気ままな放言が混乱を招いているこの国の事態は更に深刻化し、自民悪政が復活する悪夢―――

永田町に緊張が走っている。民主党の小沢一郎幹事長の政治資金収支報告書虚偽記載の一件で、近く、検察審査会の結論が出るからだ。
検察審査会の日程は極秘だが、4月末でメンバーの半分が入れ替わる。そのため、4月中に結論を出すとみられている。審査会は火曜日に開かれるケースが多いので、Xデーは27日。そして、多くの司法関係者は「不起訴不当ではないか」と予想する。だから、緊迫しているのである。

「検察審査会は起訴相当、不起訴不当、不起訴相当の3つの中から議決を出す。起訴相当には11人中8人の賛成が必要。それ以外は過半数です。世論調査を当てはめると、まだまだ7、8割が小沢クロとみている。となると、不起訴不当になる可能性がもっとも高いわけです。検察はこの事件で、小沢事務所の秘書や元秘書を逮捕、起訴したが、小沢氏本人は不起訴にした。審査会が不起訴不当の結論を出せば、もう一度、検事が起訴すべきかどうかを再チェックすることになります」(司法関係者)

もちろん、審査会の結論が即、小沢の起訴につながるわけではない。検察だって、一度、不起訴の結論を出したのだ。メンツもあるだろうし、検察審査会から差し戻しを食らったからといって、不起訴は変わらないとみられている。 しかし、メディアがどう報じるか――。タダでさえ小沢憎しの大新聞・TVだ、鬼の首を取ったように騒ぐのは見えている。
つまり、国民も疑念を持っている。そんな幹事長で参院選を戦えるのか。参考人招致だ、証人喚問だ、と書きまくる。応じなければ「辞めろ辞めろ」の大合唱。こんな展開になるのだろう。

◇謎が謎を呼んだ岩手2000人大法要
このとき、小沢はどうするのか。辞めるんじゃないか。そんな心配がよぎるのだ。
小沢は18日、地元岩手の水沢地区で両親をしのぶ会を開いた。2000人規模の人が集まる大法要で、「年忌法要でもないのになぜ?」といぶかる声が多かった。

◇バカばかりの民主党議員には付き合い切れない
小沢は「本当に最後の総仕上げ、最後のご奉公のつもりでなんとしても日本に民主主義を定着させる」と挨拶したが、これもちょっと仰々しい。何か異様で不気味な法要だったのである。
取材に行った本紙記者は「マスコミが殺到しましたが、誰もが小沢氏の真意を測りかねた会でした。総理への決意を固めたという見方も出来るし、選挙に向けた決起集会にも見えた。

検察審査会を意識して、その前に地元で力を誇示したかったのかもしれないし、その逆で、今の権勢を誇っているうちに地元に帰りたかったのかもしれない」と言う。

検察審査会の結論次第でメディアが騒ぎ、党内も浮足立ったとき、小沢一郎はどうするのか。日本に民主主義を定着させるために、参院選前に自ら身を引くこともあるのではないか。こんな見方をする政界関係者は決して少なくないのである。

小沢辞任説にはもうひとつ、根拠がある。小沢を取り巻く状況だ。勝手に吠えるバカばかり。小沢自身、ほとほと嫌気が差しているのではないか。
アホな大臣、言いたい放題の反小沢派、選挙に怯え、浮足立つ候補者。加えて、なーんにも分かっちゃいないメディアが連日、小沢批判を繰り広げるのだ。
小沢ならずとも「もー辞めた」とブン投げたくもなるだろう。 高速道路騒ぎにしたって、民主党はマニフェストで無料を約束したのである。それを値上げする方がおかしいのに、前原はガキみたいにブンむくれ、辞任をちらつかせるバカぶりだ。
しかも、トチ狂っているのは前原なのに、新聞は小沢の政治介入を非難する。庶民のために「値上げするな」という小沢の主張を「選挙目当て」と批判するのだ。どうかしているのではないか。国民生活よりも財政のつじつま合わせの方が大事だというのだ。こんな連中と連日、付き合わなければならない小沢は気の毒だ。いつ辞めてもおかしくない。

「政治の目的は最大多数の最大幸福です。だから、選挙で支持を集めた政党が最大多数のための政治を行う。これが民主主義の大原則です。小沢氏はそれを忠実に行おうとしている。それを選挙至上主義と批判するのは、民主主義の原則が分かっていません。もちろん、最大多数のための政治を行うには政治的力学や知恵がいる。選挙に勝つためにも工夫がいる。それが政治ですよ。文句ばかり言う大臣や議員は、それでは今までどんな仕事をしてきたのか。小沢氏にしてみれば、『冗談じゃないよ』でしょう」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏)

ダム問題でも言いっ放し、日航処理でも迷走。そんな大臣が高速道路の値上げを言い出した。小沢が「待った」をかけるのは当然だ。 メディアは小沢の政治介入は2度目だと書く。去年の暮れも官邸に乗り込み、ガソリン税の暫定税率廃止を撤回させた。このときもメディアは横暴と非難したが、暫定税率の廃止を公約に掲げたのは実は小沢だ。だから、自分の責任で引っ込めたのに、大マスコミはこうした事情を一切書かない。
「政治とカネ」の批判を続け、小沢の横暴、独裁、選挙至上主義を叩く。これじゃあ、やってられないだろう。

◇小沢がブン投げれば民主党は分裂の恐れ
こうした状況に検察審査会の結論が重なれば、本当に小沢のブン投げ辞任が頭をかすめるのだが、そんなことになったら、民主党は終わりだ。
素人集団がマトモに政治を動かせるとは思えないし、小沢辞任は民主党分裂に発展する可能性がある。
政治評論家の浅川博忠氏が言う。
「小沢氏が辞める場合、完全に失脚するケースと、余力をもって退くケースがあります。前者の場合、小沢一郎という、いい意味でも悪い意味でも大物を失って、民主党政権は迷走する。まだまだ頼りない大臣ばかりだし、小沢一郎という重しがないと、みんなが勝手なことを言い出し、大混乱になる恐れもあります。後者の場合は、次期幹事長を小沢派が取るか、反小沢派が取るかで、政争になる。分裂含みとなり、敗れた方が飛び出す可能性も出てきます」

せっかく、政権交代が実現したのに、そんなことになれば、飛び出した方が自民党とくっつき、自民党が息を吹き返してしまう恐れがある。国民にとっては悪夢のような展開だ。
しかし、その可能性はないとはいえない。子供のような民主党議員を見るにつけ、小沢がいつブチ切れるか、ヒヤヒヤするのだ。