___ 寒い。
寒さに耐えつつ私が向かうところは友人の家である。何故向かうのか。聞かれてもどう答えればいいのかわからない。特に約束している訳では無いし、行っても意味などないのだから。きっと向かってもあの子はいないのだろう。
___ 暖かい物が飲みたい。
消え入るようにでたその声と共に私は自販機へと向かった。すっかり冬仕様の自販機には沢山の暖かい飲み物が並べられていた。お金を入れ私が買った飲み物はコーンスープ。冬になると必ずと言っていいほど手に取るものだ。中に入っているとうもろこしがなんとも美味しくて、意地汚いかもしれないが割と最後まで飲み干してしまう。
そして、コーンスープを買った私は再び友達の家へと足を進めた。歩いて20分ほどのところにあるその家は冬に行くにはとても寒かった。
___ 着いた。
家の前で立ち止まると私は大きく息を吸った。俗に言う深呼吸と言うやつだ。不安の募るその手でインターホンを鳴らすと中から明るい声が聞こえてきた。パタパタと走っている足を音が止まると玄関のドアが開いた。そこに居たのは焦げ茶色の長い髪が綺麗な友達のお母さんだった。
___ 今年も来てくれたのね。ありがとう。
___ いえ、これくらいしか出来ませんから、
今日は友達の命日。一昨年の今日、忘年会終わりのおじさんが乗った飲酒運転の車に轢かれた、即死だったと聞いた。あの頃は私は何が何だか分からなくなりひたすらに泣き叫んだ。友達は私が小さい頃からずっと一緒だった幼馴染みでもあった。心の拠り所出会ったその子が亡くなって、今年で2年。未だ癒えないこころの傷を見ぬ振りをして命日には顔を出すようにしていた。
___ 今年も冬至の時期が来たわね、莉緒ちゃんはおしるこ食べた?
___ いえ、今年はまだですね。家に帰ると母が作ってくれてるみたいですが。
___ あら、そうなの?莉緒ちゃんママのおしるこ美味しいものね。今度私も教えてもらおうかしら。
___ きっと喜んで教えてくれますよ。
仏壇にお線香をあげたあと、友達のお母さんとそんな話をしていた。他愛もない話ではあるけれど楽しそうに話す友達のお母さんを見るとほっと息を落とす。あの時から比べると痩せてしまったその姿を見るとあの時の生々しさが蘇ってくる。涙に明け暮れたあの日々が、
___ そろそろ、帰りますね。
___ あら、もうそんな時間?話し込んでしまってごめんなさいね。
___ いえ、私も楽しかったです。また来ますね。
その言葉を残して私はまた寒い外へと出た。もうすぐクリスマス。あの子は何が好きだったかなと考えながら家路を急ぐ私。自分の家が近くなると不意にため息が出た。玄関のドアを開け家に入ると甘い匂いがした。母のおしるこの匂い、その匂いを嗅いでお腹がなってしまったのは余談である。
___ おかえりなさい。
笑顔で出迎えてくれた母に私も笑顔で言葉を残した。
___ ただいま。
今日も今日とて平和に迎えられる今に感謝を。
