小石や埃まみれの石畳をスキップで歩く小さな足
頼りない小さな手で扉をあけると、何か異変に気づいたように、ゆっくりとした足取りで
暗い室内に入り込み、宝石のような瞳でゆっくりと見上げた


がたん


「痛った・・・うたた寝して変な夢見たかな」


休憩時間を使ってソファーで本を読んでいたっらいつの間にか意識がとんでいたらしい
中途半端に横になってたせいで首が痛い


「ん?」


足を下ろして何かが足元にあたって改めて足元を見ると
小さな体を丸めて眠っている、道化の子供・・・そういえばこの子の名前知らないな


体の動きから小さく深呼吸しているのがよくわかる


「猫か・・・」


起こさないほうがいいんだろうけどこんなところで寝てたら風邪ひいちゃうし
仕方なく抱き上げようと道化の体に触れた瞬間視界が歪む


色あせたような街並み 表情のない人々 活気のない暮らし
遠巻きに見える教会、その奥に大きな壁
無造作に放り出されている人形みたいな・・・。


「あれ?」


ふっと視界が元に戻る。
また夢でも見ていたのかな?最近疲れているのかも
というかこの道化の子と一緒にいるとすごく疲れる気がする

この前もすごく変な感じがした
でも、あの声は自分の声だったような・・・そんな事考えたかもしれないし…


「・・・・・・・・・」


そういえばあの人アリバイなかったのかな?僕ならもっとちゃんとした証拠だせーとか
・・・やってなければだけど・・・。
助け船も無さそうでびっくしりたな・・・。

最後まであそこにいなかったけど。



『あの人キライ?』

「え?」


気付くと道化の子が寝ころんだ姿勢のままこっちを見ている
ほんとお面のせいで解りにくい。


『キライ?』
「え・・・あの人?」


てか、あれ?この子喋れるんだ、口が殆ど動いてないからすごく不思議な気分
あの人ってもしかして昨日の大臣?


『アノ人』
「えぇと・・・どうかな?わからないごめん」


『・・・ウソツキ』
「!?」


声はそのままで急に機械的になった口調に思わず尻餅をつきそうになってしまう


「大人をからかうのはよくないよ・・・」


道化のおでこを軽くこづく仕草を見せると何故か楽しそうにきゃっきゃっと笑い出した


『ワルイ人は退治シテイイ?』
「・・・決めつけは良くないし、それに物騒・・・」


この子の真顔に見つめられてると、我ながら心に無いことを言ったような気がして来た・・・。
そんな心境を知らずかゆっくり右手をあげるとトリガーでも握るような仕草をする


「・・・それに言葉、解っていってる?」


口元で満面の笑みで頷くと人差し指を自らの頭に当てて急に大きな口を開け

『バン!』

言葉に合わせたように右手を弾かせるとぐったりとうなだれてしまう


「え?」
『・・・ナンチャッテ・・・フフ・・・アハハハハ』
「あぁ・・・え?遊び?」


急にお腹を抱えて笑い出す・・・なんだ遊び相手にされてたのか?

まったくどういう教育受けたらこんな子になるのかな?


「僕もう現場に戻る時間だから行くけど、そこらへんで寝てたら風邪ひくよ?解った?」


急に笑うのを止めると顔を隠すようにふて寝してしまう、言い過ぎたかな?いや、此処で優しくしたらまた調子に乗るかもしれないし止めておこう


道化の子をほっといて部屋を後にする事にした、一度だけ振り返っても見たけどそのままの姿勢だった、やっぱりちょっと言い過ぎたのかな・・・

しかし、あの子本当になんなんだろう。王様の血縁とか?いやそれならこんな放置っぽいことなんてしないだろうし。




毎日変わらないような生ぬるい軍隊の訓練が続く。
ふいに道化の子供が取った仕草を思い出した、けどそれもすぐに忘れて彼の存在そのものを忘れかけたころ、
僕は嫌でもあの行動の意味を思い出すことになる。