※ここから先は 私の独断と偏見で無い知識と文才をいかして(?)好き勝手かいてますそれでも読んでみようかなった方だけ下へ(笑)
あまふらせたんまいな 3夜 ~指切~
「だめだよ あきちゃん落ちちゃうよ」
「花ちゃん中暗い」
隣にすまう花と呼ばれる女の子が心配するのを余所にあきは井戸の中に顔をつっこんでい
る
彩の家から少し離れた場所に井戸がある もう枯れてしまっていて軽く囲いがあるものの
小さい体なら下から入れてしまう
「もう…彩さんに怒られちゃうよ」
姉貴質か花も身を屈めると囲いの中へ入っていき後ろからあきにしがみつき だめでしょと叱る
「あ…」
びっくりしたのか握っていた小石を落としてしまい 小さい声を漏らした
石はひゅっと闇に消え ちゃぽんと微かに水面を弾かせる様な音を鳴らした
「あーあ…」
気に入ってたのか 残念そうに顔をあげえると何故か神妙な顔をして手近に石ころを見つけると井戸の中へと投げ込む花
すると さっきと同じように水面を弾く音がする
「嘘 この井戸枯れてるってお父さん言ってたのに」
驚いた様子で中をのぞくと また石ころを投げ込む ちゃぽんっと今度は強めになった
「あきちゃん すごいよ お水だよ」
「おみず?」
花のはしゃぎっぷりに首をかしげながらも楽しそうな仕草にあきも楽しくなったのか真似をするようにはしゃぎだす
井戸の周りをくるくると走ってまたジャンプする
「これ!!井戸に入ったらいかんて言っただろ!!」
「きゃっ」
罵声にびっくりし二人はその場こけてしまう
花の母妙 彩の母紗江に比べると体格が大きくてしっかりしている 普段は優しいが怒ると怖い
妙は囲いを空けると あきと花に拳骨を一戸ずつ 落とした こういう時分け隔てが無いのが彼女のいい所でもある
あきも花も痛そうに頭を抑える 花が言い訳をしたそうな顔をしたものの 妙が睨みをきかすと
慌てて首をふり言葉を飲み込んだ
「まったく……はやく出ておいで」
「待って お母さん 井戸水が枯れてたの嘘ついてたの!?」
「え?」
何のことと言いたげに眉をしかめる妙に あきも参戦する
「お水あるの ぽちゃんって落としたの」
「そんな分けないでしょ あきちゃん ここはずいぶん前から枯れてるの」
「じゃあ見て」
無理に引っ張る花に 妙もしぶしぶ 中を覗き込む 暗闇の底がきらりと微かに水面を映し出す
「まさか これはえらい事に… あきちゃん 花 あんたら家に戻ってるのよ そこで遊んでちゃ駄目よ」
念を押して言うと妙は走って行ってしまった
「お母さん遅いねー ……あきちゃん?」
返事の来ないあきに視線をむけると小窓からそわそわするように外を眺めている
花は直感的にわかったのかあきの隣に行くと頭を撫で
「彩ちゃんでしょ 大丈夫すぐもうすぐ帰ってくるよ ね?」
あきは 最近は花と遊んでもらってる事が多い でもふいに 夕暮れになると 落ち着きがなくなってくる
彩が戻ってくる時間を覚えだしてからだ
「……はなちゃん あの井戸ね本当は…」
「え?」
「あき!!」
花の腕を掴み何かを喋ろうとするあきに耳を傾けた刹那 慌てた様子の彩が部屋に入ってきた
「妙さんに聞いたわ 駄目じゃない 囲いの中入っちゃ 二人とも怪我が無かったから良かったけど…」
「…ごめんなさい」
「彩ちゃん うちの子の方が姉ちゃんなのに一緒になってたんだから あきちゃんばかり責めないでおくれ」
動揺するように謝るあきに 妙が続いて部屋に入ってくるとなだめる様に間に入る
「それに 井戸が生き返ったのも気付けたしね」
彼女が持ってている樽にはしっかり水が詰まれていた 今皆が大喜びして分け合っているらしい
「井戸が…?」
井戸が蘇るなんてあるんだろうか?そう思うも 現に水が湧き出ているのだし悪いことでは無いので
そんなに深くは考えなかった
「そういえば あきちゃんさっき何か言おうとしてなかった?」
ふと思い出したように聞く花に あきは首を振り 忘れちゃったとだけ答え彩の腕にしがみ付く
子供同士のやり取りだろうと彩も妙も首を傾げるも深く気には止めなかった
「一番きれい」
帰り道に水の入った筒を覗き嬉しそうにはしゃぐ 今までの濁り水に比べとても綺麗だった
沸いてきたというより 誰かが入れたんじゃないかと思うくらいに
もちろん 誰もそんなことしないし した所で何の利益も無い
「ねぇ…あき 明日 あきがいた場所に行こうか?」
「あの場所…?」
あきは顔をしかめると考え込んでしまった あまり思い出したくない事があったのかもしれない
「…あき いたら迷惑?」
足をとめると今にでも泣き出してしまいそうな顔になるあきに彩は慌ててしゃがみ
「そんなわけ無いでしょ ずっと一緒にいて…ね?」
「約束?」
「約束」
そういうと自分の指とあきの指を絡め 指きりの歌を歌う それにあきも声をあわして歌った
あきが誰であろうが関係ない それは変わらなかった
「約束♪約束♪指切拳万…お姉ちゃん」
「……」
はしゃいで先を歩く姿が咲の姿と重なる 何度かの瞬きでそれはすぐに消えた
ほんの少しの距離を二人はゆっくり歩いた 少しずつ 日は傾き 二人の影を飲み込んでいった