私は、学生の頃、ある経験をしました。


パスポートを都庁で申請し、受け取りのために必要であると言われていた書類について電話で問い合わせました。


私はその書類を用意することが、出来ていなかったのです。


その電話に出た人は、『知らない』、『分からない』は言いませんでした。


何も迷うこともなく、


「その書類は必要ない」


と言ってくれました。私は、念の為に


「前に窓口では必要だと言われましたが、必要ないんですね」


と、もう一回訊ねてみました。


その人は、やはり間をおかずに


「はい、必要ありません」


と、断言してくれたのです。


私は、安心してその書類を持たずにパスポートを受け取りに行きました。


しかし、窓口では


「その書類がなければ受け取りはできません」


と、これまた断言されました。


当然、私は電話でわざわざ問い合わせをしたこと、答えてもらったこと言いました。


しかし、それで『必要な書類』は、『不必要な書類』には変わりはしませんでした。


結局、私は


「その書類がなければ、これこれを代わりに持ってきてください」


と言われて、出直さなければならなくなりました。


代わりに持って来いと言われた『これこれ』は、私のアパートにありました。もし、電話で答えてくれた人がそのことを言ってくれたなら、私は『これこれ』を持って、窓口で無事にパスポートを受け取ることができていたのです。


私は、電話で嘘を教えられた上に、代替案を聞く機会も失っていたのです。


 


さて、電話口の人は何故、私に嘘を言ったのでしょうか?


 


①その書類が必要なことを知らなかった。


②その書類が必要か否かを知らなかった。


 


同じような答えですが、全く違います。


①は必要ないことを信じて「必要ない」と答え、②は必要ないかどうか分からないことを自覚しながら、『分からない』と言わない為に、なんとなく、或いは適当に「必要ない」と答えたことになります。


どちらが質が悪いでしょうか?


②のような気もしますが、実は①です。②の場合は、私に嘘を言った後に「必要であるか否か」を確かめる可能性があるからです。①は、「必要がない」ことを知っているつもりなので、それが間違っていることに気付くチャンスは薄いと考えられます。


 


 


でも、知らないなら、知ってるふりをして答えるのはやめてくれよ。


分からなかったら、周りの知ってる人に確認しようよ。


周りに知ってる人がいなかったら、いったん電話を切って、調べてから折り返し電話しようよ。


と、若き私は思ったものです。


 


 


で、今の私は、そうしてます。かなり、見苦しく。。。


 


 


しかし、待たされるのは迷惑?


たとえ間違っていたとしても、即答してくれた方がいい?


 


そんなこときくなって?


そりゃそうだ。