生きていくには、夢や希望とは別に、
少量の「孤独」とある程度の「劣等感」も必要なはずだと心密かに信じてきました。
表現者であればそれが作品に注ぎ込む材料となり、栄養になると。
それは決して誰にも教えない、隠し味のようなものかもしれません。
今回インタビューさせていただいたのは、画家・絵本作家の田島征三さん。
一昨年73歳(2014年時)になった彼は、自身を「劣等感の固まり」と呼ぶ一方で、
その感情に背中を押されながらこの世界を生き抜いてきたことを話してくれました。
僕自身この映像を作りながらも、不思議と征三さんの言葉に励まされていくのでした。
自己を肯定し受け入れるためには、それと同じくらい自己を否定し敵対するような時間が人には必要なのかもしれません。
そう感じたとき、 自分の中に存在するこの得体の知れないモヤモヤも「きっと捨てたもんじゃないな」と、素直に思えたのでした。
創作は果てしない迷路です。
そして「迷い続けたい」と思えるものだけが、脱出できるのかもしれません。
「劣等感天国」。インタビュー中に征三さんが何気なく発した言葉でした。
なぜかとても心地よい響きでした。
「劣等感」と「天国」。その二つを上手に共存させる力を僕たちはみんな持っているんだと、
征三さんにそっと教えられた時間でした。
ああす
出演:田島征三
音楽・映像・撮影:Asu
「森の小径」
詞・曲・編・うた:Asu