放課後タイプライター

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紫色のクオリア 1~3巻(全3巻)
うえお 久光 (著)、綱島 志朗 (イラスト)



人間がロボットに見える少女と、
その友人が織り成す物語。

パラレルワールド(並行世界)を題材にした作品である。
友人の死なない世界を追い求め、
何度も時間を遡ってやり直す。

悲劇的な結末を何度も繰り返しながら、
その運命から逃れようと必死に立ち向かっていく。

そういう意味では、
ひぐらしのなく頃にや魔法少女まどか☆マギカ、
STEINS;GATEに共通する部分も多い。

私が大好きなジャンルである。

       *       *       *

こういったループものの作品はとても魅力的だ。

時間の繰り返しを別の角度から描くことで、
以前にあった会話の内容や行動の真実が明かされる。
見る側をハッとさせるトリックがある。

作品を一度見ただけではわからない時もある。
二度目の時に、なんてよく出来ているんだろうと感心する。
これがこのジャンルの一つの魅力である。

もう一つの魅力は、
時間を繰り返す観測者に対して感じる、
物憂い感情にある。

時間の繰り返しの中で、
記憶を保っている観測者の存在は重要だ。
何故ならば、そういう人物がいなければ、
時間退行をしても、また同じことを繰り返し、話が進まないからだ。

例えば、涼宮ハルヒのエンドレスエイトのように、
同じような内容を繰り返す作品も無いわけではない。
この場合は、観測者が時間の繰り返しの事実に気付きながらも、
何もアプローチをしないがために、
中身の進展がほとんど無いままであった。

何にしても、観測者にしてみれば、
実際の時間よりも膨大な時間を旅しているのである。
誰にも理解されることなく、
築いてきた仲間との関係もリセットされ、
この先もまた悲劇が繰り返されることを知りながら。

そんな長く空虚な時間を思い、
もの悲しさを感じずにはいられない。

それは時に、宇宙が誕生した130億年以上も前に遡り、
ただただ大切な人を思って待ち続ける。
そんな作品の世界に、時間の尊さや神秘を感じるのだ。

その観測者に読者自身がなれることも
魅力の一つだろう。

私は、吸血鬼や妖怪が出てくる作品も好きなのだが、
そういったものにひかれる理由の一つは、
やはり人間よりも長生きなところだ。
私たちにとっての幾世代の生死を
跨いで存在するところに、憧れがあるように思う。