『日曜日の探偵 Ⅱ 』🐈⬛RBミシュカの事件簿
Ⅱ - 1章 ミッション・インポッシブル?⑦
ボブの元カノ、米国農務省(USDA)のトレイシー・オブライエンは赤毛のカールがオシャレなスラッとした美人だった。インテリっぽい気の強さも感じるが、カメラ目線の笑顔は紫外線に弱そうな白すぎる肌、ソバカスの痕が子供っぽい印象も受けるキュートな34歳。
(なんか赤毛のアンがオトナになったらこんな感じなんだろうなぁ)と篤人は見惚れた。
『テイスト・オブ・アメリカ』のプレゼンテーションも終わって会食スタート。ゲスト達はお目当ての料理ブースに列を作り群がった。
「ロビー、今回はホントに助かったわ」とトレイシーはボブにハグして感謝の言葉を述べた。彼女はボブ(ロバート)を「ロビー」と恋人時代の愛称で呼んだ。
「あぁ、今回のパーティ用に用意したワイン全ての中身が入れ替えられていたようなんだ。毒物では無いようなんだがアメリカワインの魅力を伝える今回のイベントの趣旨が台無しになるところだったよ。これも今、僕が日本で世話になっている組織の名探偵のおかげさ」とボブは探偵夫婦を紹介した。
「初めまして。お役に立てて光栄です」と篤人は英語で言って握手。「それから私のワイフのトモミです」と朋美を紹介しようとしたら…
「…ダーリン…あかん…ウチ…ウチ…」と朋美はフラフラと倒れそうになり篤人と後ろに控えていた愛が素早く抱えた。
「どうしたんだ。トモ!」
「朋ちゃん…ウェルカムドリンクのシャンパンをさっき3杯立て続けに呑んでたから…」
「…ダーリン…ごめん…」と朋美は酔っ払ってフラフラだった。
「あっ、トレーシーさん。失礼しました。妨害工作を未然に防いだので安心して飲み過ぎちゃったみたいで…」と篤人と愛は早々に朋美を引き摺って会場隅のソファに移動した。
「まったくもう…」と篤人の膝枕で真っ赤になった朋美を介抱した。ミシュカも籠から飛び出して朋美の胸の上で心配そうに眺めていた。
そうこうするうちに、エンターテイメントの時間となり、赤と青の星条旗をイメージした胸元の大きく開いた華麗なドレス姿の夢香が登場した。髪もくるくるっと大きく巻いて凛々しい。
「レディース・アンド・ジェントルメン。私達は紹介します。14歳のピアノの妖精。ユメカ・サクラザワの演奏をお楽しみください」とピアノの前の夢香にスポットライトが当った。
夢香は観客の拍手を受けて丁寧にお辞儀をし、英語でスピーチした。
「本日はパーティにご招待いただきありがとうございます。アメリカ大使館の歴史ある建物に敬意を表しましてジョージ・ガーシュイン、コール・ポーターの名曲をメドレーで弾かせていただきます。どうぞ美味しいお料理を楽しみながらお聴きください」とホントに立派なコメントに篤人も目を細めた。あの後、大使館にあった楽譜をサラサラと暗譜して練習していた。その才能、ビジュアル、タレント性はクラシックのピアニストとしての専門技術や芸術性はともかく、明らかに輝く異彩を放つ少女だ。
そして最初の曲、ピアノソロとして演奏された『ラプソディ・イン・ブルー』の夢香の音は、ザワザワと料理皿を手に歓談していたホールの全ての客が息を飲む圧巻のパフォーマンスとなった。
朋美もやっと目を醒まし、篤人と愛に挟まれて会場隅のソファに座ってパーティをぼーっと眺めていた。
「ダーリン。ごめんな。またまたお酒で失敗や」
「良き良き。オイラ達の仕事はパーティを妨害工作から未然に防ぐ事だったんだから。またまたお手柄だな。ミシュカ」と篤人は朋美の膝の上で眠っているミシュカの額をクシュクシュっと撫ぜた。
「にゃ!」
一曲目のガーシュインの演奏に万雷の拍手を浴び、夢香は起立して深々とお辞儀をした。
「ありがとうございます。次はミズ・オブライエンのリクエストでコール・ポーターのスタンダードナンバーを演奏致します」
【You'd Be So Nice To Come Home To】
You'd be so nice to come home to,
You'd be so nice by the fire,
While the breeze, on high, sang a lullaby,
You'd be all that I could desire,
Under stars, chilled by the winter,
Under an August moon, burning above
You'd be so nice,
You'd be paradise to come home to and love.
<和訳>
『あなたがいるハズのところに、私が帰れたら素敵だわ』
あなたの元に帰れたら素敵なのに
あなたが暖炉のそばにいてくれたらいいのに
そよ風が空高く歌い上げる子守唄を聴きながら
私の望みはあなただけ
凍えそうな冬の星空の下も
燃えるような8月の月の下でも
あなたは素敵でしょうね
愛するあたなの元へ帰れたら天国のようだわ
「だけど…彼女、なんでこんな事、テンペストに依頼したんだろう」と愛は呟いた。
「やっぱそーなんやねぇ」と朋美。
二人は夢香のピアノのそばでボブと昔のように恋人同士に戻ったトレイシーを見つめていた。
「日本でのイベントが決まって ボブとの事がどうしても忘れられへんかったんや無いんかなぁ…せやから彼に守ってもらえる何かを仕掛けたんやろな」
「なるほどねぇ。女心って複雑ね」
「にゃう」
「えっ?何の話?」と篤人は女子軍の会話が理解出来ない。
「なんでもあらへん。ウチはミシュカと一緒にダーリンのそばにおって、こうして日曜日に遊べるんが嬉しいんやぁ。夢香やマブダチの愛ちゃんもおるしね」と朋美は篤人の肩にぴとっと
頭をくっつけ、愛の膝の上の手に自分の掌を重ねた。
「まっ、なにわともあれ、RBミシュカ探偵社初の内調非課税バイトが無事遂行出来て良かった。これにてミッション・コンプリート!」と篤人はガッツポーズ。
夢香の演奏中、ボブとトレイシーは抱き合い、見つめ合いキスを交わしていた。2人にどんな過去があって、何がボブをゲイに走らせたのかはわからないが、2人の大学の先輩でもある同性愛者の作曲家コール・ポーターがリンダと幸せな結婚生活を送っていたようにように…愛の形ってのは複雑なんですね。
ふたたび拍手。
「皆様お待ちかねのボブ・ディランさんもまもなく到着されるとの事ですので、次で私の最後の曲となります。最近見てインスパイアされたこの曲で締めたいと思います。どうぞお聞きください」
こうして、アメリカ大使公邸のパーティ妨害事件はRBミシュカ探偵社の活躍で無事解決したのでした。
【章完】
4月に入ったら本業が忙しくて更新遅くなりました。(/. .\)ゴメンナサイ
恋して無いとなかなか良い文章書けないんですよねー…φ(・・)アレェ…?!
次の事件もお楽しみに!



