2005年6月18
そもそも何で別荘を建てよう、ということになったのだろう。
以前からHさんに別荘へ誘われていた。2004年7月お言葉に甘えて一家四人で出かける。良く晴れた気持ちの良い日であった。
海ノ口自然郷に到着し、アプローチを目にして、余りに素晴らしい景観に圧倒された。真直ぐに延びた唐松並木の車道、その両脇の良く刈り込まれた芝生、そしてその奥天空に聳える八ヶ岳連峰。この景観でこの別荘地の価値を理解できた。別荘地は八ヶ岳連峰の東斜面。横岳の尾根沿いに広がる。
この日は途中にある高原ロッジまで迎えに来て頂いたが、Hさんの別荘はずっと上の自然郷の最高地点に近い富士見地区にある。標高は1750mである。
玄関へのアプローチはかなりの坂道である。駐車スペースの脇に数段の階段がある。そこから先は踏み固められた砂利道である。凡そ700坪ある敷地は唐松と白樺、それに櫻など何種類かの木々の疎林になっており、下はびっしりと熊笹で覆われている。
数段のステップを上がると、玄関前から南側にデッキが広がる。色はチョコレート。玄関の扉にステンドグラスが嵌め込まれている。ご両親からの寄贈とのこと。
別荘の中は全体にシンプルに纏められている。子供の玩具などが溢れ返っている我が家とは全く雰囲気が違う。大人の住まい、と言ったところか。
この日は泊めて頂いた。デッキでBBQをしたり、朝食を頂いたり。空気は澄んでいてとても気持ちが良い。ここは八ヶ岳の眺望もある。ただ、こんな高地でも蛾などの虫は多い。
管理事務所のYさんとはこの時初めて面識を得た。独身で若く見えるが、もう子供が一人二人いて良い年とのこと。
夏帆は生まれて始めての遠出である。観た様子では全く問題無い。来る途中も良く眠っていて、むずがる事も無かった。麻生はいつもの通りシャイだが段々慣れてくる。
翌日はHさんのお勧めで自然郷内の売りに出ている別荘、土地を見て廻った。案内はYさん。その後幾度か案内して頂いたが、この日だけで15件前後の物件を見たように記憶している。数を見るとともに眼が肥えて、中々すっきりこれが良いという物件に辿り着かない。もっとも最初はほんの冷やかしの積りであったのだが。
やはり中古物件は難しい。欲しい土地と建物がマッチングしない。幾つか見る内に、要件が纏まってきた。土地に関しては、先ず傾斜が緩やかであること。麻生と夏帆が転がり落ちてしまうような傾斜地では困る。それに道路から家へのアプローチをほぼ平坦にできること。荷物の運搬など利便性を考えてのことである。また、建物については、部屋数は少なくても良いからシンプルで明るい大きな部屋を確保していること。
この後も何度か自然郷を訪れて様々な物件を見せて頂いたが、結局建物付きで気に入ったものは無かった。
それで土地に絞って探し始めたが、なぜかこの頃には八ヶ岳自然郷に別荘を持つことに何の迷いも無くなっていた。
最終的に二つの土地が候補に残った。一つはSさんが自然郷でベストの眺望と評価している区域の一区画であるが、残念ながら隣の区画のオーナーが眺望確保のため保有しているとの事で、売る気は無いらしい。もう一つは購入した小丸地区の1003坪の大きな区画である。ここはたいした眺望は無いが南に緩やかに傾斜した土地でとにかく広い。広い分だけ値段も高く、半分だけと言うことも考えたが、後々買い増すとかえって高いものになりそうなので思い切って全て購入した。2004年の10月である。
ところで、Sさんだが、彼はHさんの友人でもあり、自然郷でHさんの別荘の斜め裏に敷地続きで別荘を持つ隣人でもある。また、Hさんの知人が経営するコンサルティングファームの常務である。Sさんは、とにかく良く歩くようだ。八ヶ岳自然郷には凡そ2000区画の別荘地があり、そこに1200戸ほどの別荘が建っている。高低差は標高1350mから1850mまでの500m。これをほぼ全て走破されているようだ。良くご存知である。Sさんにも今後親しくお付き合い頂きたいと思っている。
ところで小丸の我が別荘地だが、私は二人目のオーナーである。最初の方(会社所有)は昭和43年、1968年に購入し直ぐに別荘を建てている。私が購入した時は既に取り壊されていたが、敷地にその痕跡が残っている。敷地の中心より少し北側に位置していたらしい。
この区画を当初見た時は下草も潅木も伸び放題で大部分は足を踏み入れることもできなかった。買う気が有りそうだと見たのか、価格交渉をしている内にきれいに手入れされ見通しの良い土地になっていた。
最終的に土地の購入を決めるに当って、H、S両氏は勿論、Mさんにも見て頂いた。皆さんポジティブな反応であることに力を得て契約に至った。
土地を確保すれば当然建物が欲しい。漠然と予算と思っていた数字をかなり超えるが中途半端な物にはしたくない。そんなこんなで結局結構な費用になりそうだ。
建物の概略設計が始まった。弥生とあれこれ議論しながら纏めた一案がある。Mさんには全体の大きさ、部屋数、幾つかの必須スペックをお話した。それらを考慮したMプランも出て来た。手書きの簡単な間取り図である。
居間が狭い、キッチンが狭い、和室が無い、洋間は広過ぎるし隔離されすぎ、などの不満を表明する。一方、成る程と思い積極的に取り入れた提案も数多くある。車寄せを北側玄関前に造る。Mさんは出入り口辺りで雨に濡れるのが嫌いである。横浜の自宅ガレージ戸口もガラス2枚で覆われ一畳半ほどの雨に濡れない空間を造っている。同じく南側のデッキも一部板ガラスで覆う。玄関は独立した空間とし、居間側に扉を付ける。これは寒さ対策である。
議論の上Mさん案に寄せたスペックもある。和室は、私の勝だが、意匠はM案の洋風になりそうだ。押入れの扉は木製ルーバー。窓に障子を付けない。床は居間と高さを合わせる。要は、居間の延長にある和風コーナーである。何が和風かというと、八畳間に六畳分の琉球畳が入っているから。和室の南掃出し側二畳分は桜材の板張りである。その他は洋間と同じ造り(?)だと思う。
階段とロフトの手摺りを金属でと言う要求をしているが、これは頑として受け入れられない。従って木製になるらしい。キッチンはMさんが探してきたアメリカ製の物が入る。アイランドもセットになっている。これは納得。大いに気に入っている。洗濯機置き場は扉が付く。この提案も歓迎だ。和室を含め全室に、玄関にも浴室にも、床暖が入る。燃料は灯油で意見一致。居間と洋間の西側の窓はまだ揉めている。風呂、トイレ、洗面について、詳細はさて置き、イメージは一致している。
ところで資金だが、ストックオプションの一部を充当する。老後の資金と麻生、夏帆の教育資金に、と考えないでもなかったがある程度の収入の目処が立っていれば、むしろ家族4人一緒に豊かな気持ちで過ごす空間を確保する事もまた大いに価値のあることだと思う。それに麻生も夏帆も暑がりだ。