「ちょっと、冗談言わないで姿を見せてくださいよー」
俺は声の主に言った。
「冗談なんて言ってないぞ」
よく見ると刀が喋っているような? まさか、魔剣なのか? ありえない。
「またまたー こんな朽ち果てそうな刀が喋るなんてないから、冗談はやめて下さいよ」
「ばっかもーーーーーーーん!!」
「ちょっ静かにしてくださいよ」
俺が生きていると言う事は、ダンジョンボスに吹っ飛ばされて壁に穴を開け死にかけたのだから大きな声を出すのは危険だ。
「わしは大丈夫だ。あやつに何度も声をかけたが無視されたからな。それより、命の恩人に向かって朽ちそうな刀とはなんじゃ!!」
命の恩人って・・・断ったよね? 親切の押し売り? 朽ちそうな刀だから無視されたんだと思うよ。
「まぁよい。でじゃ、わしの主になる件じゃが なってくれるよな?」
本当に朽ちかけた刀が喋っている。
「無理ですよ。刀なんて使った事ないし、魔力もありませんから」
そう、これが惨めに生きてきた理由だ。この世界は剣術から料理、果ては農作業まで魔法で行うのだ。通常、生まれた時に魔力を持ってるいが、持っていなくても魔法を使えるのなら 5歳までに魔力が発動するのだが俺は発動しなかった。
極稀(ごくまれ)に魔力を持たない子供が生まれるが、ほぼ0だ。この世の中で魔力を持たない奴がいるとすれば、犯罪を犯して魔力を永遠に封じられた罪人だけだ。だから俺はゴミ扱いなのだ。
「ん!? 何を言っておるんじゃ? 魔力を持ってなくても、わしの主になれるぞ? 逆に持っていない方が、いいと思うのじゃが?」
「何を言ってるのか、わからないんだけど?」
「質問を質問で返すのでは なーい!!」
「静かにしろよ!! お前は無視されてるかもだけど俺はヤバイからな」
「おう、すまん すまん。わしは・・・」
この魔剣が言うには、魔法を無効にする能力があるらしい。ここには約3000年前からいて 約1000年前に人に抜かれたが、魔法が使えなくなると言う理由で抜身のまま捨てられて地面に突き刺さったそうだ。
「だから、魔力が無くても いいのじゃ!!」
3000年前は魔力の無い人も多くいたらしいが、今は ほぼ0だ。魔力が無くても墓標のように刺さった朽ち果てそうな刀を使おうと思う人はいないだろう。
つづく