「ごしゅじんさま、はやくー」
今日の たまごは物凄く張り切っていた。今日の結果次第ではもっと遠くに遊びに行けるからである。
「まてまて、これを首から下げておけ」
コインより少し大きな皮袋に皮紐が付いた首飾りを2匹に渡す。
「なにこれ?」「かっこわ・・・」
「あまいちゃん!」
たまごは学習したようだったが、あまいは相変わらずだ。
「袋の中に傷薬の軟膏が入ってるから怪我したら使うようにね。わかっていると思うが怪我をする場所に行っていいとは言ってないからな」
「はーい」「わかりました」
返事はいいけど、本当にわかっているのだろうか?とりあえずついて行くことにした。
「たまごちゃん、そこにいるよ」
「りょうかい・・・いたっ」
「たまごちゃーん、こけないでよー」
「しっぱい しっぱい、次は大丈夫」
多少の失敗はあったが狩りは順調に進んでいた。猪も正面から倒せるのには驚いた。俺は口も手も出さずに少し離れた場所から見ているだけだったが、そろそろ駄目出しをするかと思っていた。
「たまごちゃん、そろそろ帰ろうか?」
「そうだね、日も暮れてきたし」
いい判断だ。これなら自由にさせても大丈夫だなと思った瞬間
「たまごちゃん、注意して!」
「りょうかい」
何かの気配を あまいが感じ取って たまごに警戒を促(うなが)す。
森の奥から出てきたのは全長2mほどの熊だった。俺は2匹を逃がすために弓を構える。
「たまごちゃん、気をつけてね」
「あまいちゃんもね」
おいおい、ここは逃げるとこでしょ?と思いながら、何があってもいいように少し近づき弓を構える。
熊を中心に左右に2匹は陣取った。たまごは左側から攻撃を仕掛けたが熊の右手に弾かれた。しかし、熊は あまいに背を向ける形になったので、あまいが攻撃を仕掛けて右後ろ脚を切った。怯(ひる)んだ熊に たまごは追撃をかけようとしたが熊は たまごの足を齧(かじ)ろうとした。たまごは熊の鼻を足で蹴って回避した。
熊は鼻を押さえて悶絶している。
「たまごちゃーん!」
あまいの合図に たまごは、あまいに向かっていった。あまいの後ろ足に足を合わして蹴りだされた たまごが熊に向かって飛んでいき熊の両後ろ足を切り飛ばした。
後ろ足を切り飛ばされた熊は暴れ狂っていた。
暴れている熊の気を たまごが引き付けている間に、あまいが背中から小剣を刺した。あまいに気をとられた熊の隙(すき)をつき、たまごが正面から あまいの刺した反対側に小剣を刺す。
「いくよ?」「まかせて」
2匹は同時に自分達の刺した小剣の柄を蹴って熊にとどめを刺した。
「ごしゅじんさまー 心配しすぎー」
たまごに言われて近づき過ぎていた事に気が付いた。
「いやー 熊は心配するだろー」
「あぶなくなったら、にげるもんねー あまいちゃん」
「そうだねー たまごちゃん」
2匹は人の心配を余所に余裕だった。
「油断は禁物・・・・・たまご危ない!!」
たまごを抱え込み庇(かば)った俺は左肩から背中にかけて熊の爪で引き裂かれたが剣を抜き、熊の脊椎を貫いてとどめを刺した。
「たまご、大丈夫か?」
「だいじょうぶ・・・・・・ごしゅじんさま?」
深い傷を負った俺は痛みで気を失った。
つづく