先週、秋山選手のUFC電撃参戦が発表されました。

これに対して、各方面から反響の声が上がりました。秋山選手に関しては、良い評判よりも非難の声を聞くことのほうが多いと思います。しかし、今回の反響をみて、改めて現在の日本格闘技界における秋山選手の影響力の大きさを実感しました。しばらく息を潜めていた秋山選手ですが、その動向には依然注目が集まっていたことの表れだと思います。


個人的に秋山選手のUFC参戦は非常に意外でした。DREAMに参戦した頃から、韓国での人気が急上昇し、DREAMでは柴田選手や外岡選手といった、比較的楽に勝てると思われる相手としか対戦をしていませんでした。歌手として曲を出したり、韓国の放送局で北京五輪レポーターを務めるなど、タレント活動に精を出していたため、格闘技・強さに対するモチベーションは低下しているものだと思われました。

更にDREAM6では、外岡選手との試合後のマイクで何故か他団体にいる吉田秀彦選手との対戦を希望するといった行為にも及びました。吉田選手は階級が上の選手ですが、ピークを過ぎているので楽に勝てると踏んだのでしょうか。もし実現して吉田選手に勝利しても、日本や世界でのアピールになるとは到底思えませんでした。
しかし、日本の元柔道金メダリストを倒したということで、韓国では恰好のアピールになります。これは韓国での更なる人気獲得を狙った対戦要求に思えました。この時点で、韓国で圧倒的人気(本人は一時マイケル・ジャクソン並と言っていましたね)を掌握していた秋山選手に、もはや格闘技に対するモチベーションは無いものだと感じていました。強さを追求し、強豪と試合をして敗戦のリスクを負うよりはリスクのない相手と試合をして自分の地位を守ろうとしているように見えました。


2008年度末にDREAMとの契約が切られた時点で、UFCも次の団体として候補が上がっていたものの、秋山選手がリスクを負ってUFCに参戦するとは到底思えず、吉田選手も所属する戦極に参戦するのは時間の問題だと思っていました。ところが、ここに来て秋山選手のUFC電撃参戦。一体、何が彼をUFC参戦に駆り立てたのでしょうか。秋山選手はアメリカでは日本ほどの知名度はありませんし、彼をプロテクトするようなカードは組んでもらえないはずです。成功すれば多額のファイトマネーが手に入るので、金銭的な部分でも心を動かされたのかもしれません。しかし、多額のお金を稼ぐ手段が、タレント活動や楽な相手との試合から、強さを追求していかなければならないものになったことで、秋山選手の格闘技に対するモチベーションは再燃したものだと捉えています。


個人的にも秋山選手のUFC参戦は非常に楽しみです。
秋山選手には格闘技の競技者という観点では、大っぴらに褒められない部分はもちろんあります。しかし、そのファイターとしての実力は確かなものがあると思います。最近は楽な相手としか試合をしていないので、その実力を疑う声も多く飛び交っていますが秋山選手の打撃のセンスにはやはり目を見張るものがあります。柔道出身ですが、打撃で相手を倒せる数少ない日本人選手の一人だと思います。勝負勘も良いと思います。UFCは強豪揃いで、一筋縄でいかない相手ばかりだと思いますが、その中で秋山選手がどのような戦いを見せるのかは本当に楽しみです。DREAMのように楽な相手とは組んでもらえないはずなので、純粋に試合を楽しめるという部分では、格闘技ファンにとって秋山選手のUFC参戦は喜ばしいことではないでしょうか。秋山選手は12勝のうち、判定勝ちは1度のみです。このファイトスタイルでUFCでも勝ち続ければ、アメリカで人気が出る可能性はあると思います。


秋山選手はUFCで対戦したい選手として、UFCミドル級への転向を示唆しているヴァンダレイ・シウバ選手の名前を挙げてます。ご存知の方も多いと思いますが、シウバ選手はPRIDE時代に絶対王者として君臨し、数々の日本人選手が挑みましたが誰一人として勝てなかった選手です。桜庭選手も3度対戦し、3度ともKO負けを喫しています。桜庭選手の快進撃を止め、一線から引き摺り下ろした男といっても過言はないと思います。逆にシウバ選手は桜庭選手に勝利したことにより、名声を手にしていきました。奇しくも秋山選手は、その桜庭選手との試合での反則行為により圧倒的数のアンチファンを作りました。知名度は飛躍的に上がり、結果として秋山選手の格闘家としてのブランド価値も高くなったのかもしれません。秋山選手とシウバ選手の対戦が実現すれば、色々なファンの感情が交差する試合となりそうです。日本人選手がシウバ選手に勝利する姿を観たいという想い、一方で桜庭選手に対して卑劣なことをした秋山選手を懲らしめて欲しいという想い。両者が対戦する際に、どちらを応援する声が多く飛ぶのかは非常に興味深いところです。





秋山選手はUFCでも柔道着を着用して入場するようです。
柔道着を着用しての入場はUFC史上初となるようです。