昨日、ソウルで行われたK-1ワールドグランプリ2008の開幕戦は、前評判通り非常に盛り上がる内容のものとなりました。

自身は地上波放送のテレビ観戦だったので、全ての試合を観る事が出来ませんでした。地上波で放送された試合についてのみ簡単に感想を書きます。

まずはジェロム・レ・バンナ選手VS澤屋敷選手。バンナ選手は非常にコンディションが良さそうな体つきをしていました。結果はバンナ選手の判定勝ちでしたが、澤屋敷選手は良いパフォーマンスを見せたと思います。連敗続きで澤屋敷選手のメンタル面でのコンディションが懸念されていましたが、吹っ切れていたようです。澤屋敷選手はバンナ選手と相性が良いのか、動きのある試合として成り立っていました。日本人選手でバンナ選手とあのような試合が出来るのは澤屋敷選手しか現状いないのではないでしょうか。試合は負けてしまったものの、試合内容としては一回目の対戦よりも良かったと思います。


ルスラン・カラエフ選手VSハリッド・ディ・ファウスト選手の試合は、開幕戦全8試合の中で唯一のKO決着となりました。下馬評通りの打ち合い、ダウンの応酬という熱戦を見せてくれました。カラエフ選手が打ち合いを制し、KO勝ちを収めました。カラエフ選手は穏やかそうに見えるのですが、やや熱くなり過ぎ、大振りになりがちな傾向があるようです。ハリッド選手から2回目のダウンを取った後に、ハリッド選手にもたれるように放った大振りの左フックは、バダ・ハリ選手にカウンターパンチでの逆転KO負けを喫した時と全く同じ軌道のものでした。以前から指摘されている通り、カラエフ選手はオフェンス面は申し分ないのですが、ディフェンス面で改善すべき部分が多くありそうです。一方のハリッド選手も強さを感じさせる試合でした。本業の片手間で格闘技に携わっているハリッド選手が、格闘技一本に絞ったらどの程度の選手になるのでしょうか。しかし、もしかしたらハリッド選手は本業で無いからこそ、あのように守りに入らないアグレッシブな試合を見せることが出来るのかもしれません。


ジマーマン選手VSグラウベ選手は、クラウベ選手の悪い癖が出てしまった試合だと思います。グラウベ選手は攻撃を貰い続けると、足を止めてガードを固め、亀になってしまうのです。特にヘビー級ですと、あのように亀になってしまうとガードの上、隙間から攻撃を効かされてしまい、ダメージが蓄積してしまいます。3Rまで圧倒的に劣勢に立たされていたグラウベ選手ですが、試合終了間際に意地を見せ、ジマーマン選手をダウン寸前まで追い込みます。グラウベ選手は、試合序盤で劣勢になりながら、終了間際で反撃するという試合が多いような印象を受けます。もう少し終了間際の反撃を早い段階で出来れば、勝利をモノに出来る試合も増えると思います。一方のジマーマン選手は判定勝ちを収めたものの、弱点も見せたと思います。勢いに乗っているときは良いのですが、攻撃を受けると動きが止まり、試合終盤になるとガス欠を起こすという脆さも見せました。PRIDEミドル級で試合をしていた頃の、アリスター選手を彷彿させる選手です。


バダ・ハリ選手VSチェ・ホンマン選手は、試合前の予想を覆すような試合展開となりました。試合開始直後は、ブランクもあってかホンマン選手がバダ・ハリ選手の攻撃に目を瞑り、かなり怯えているような印象を受けました。しかし、徐々に間隔が戻ってきたのか、フォームはめちゃくちゃながらもバダ・ハリ選手の攻撃にカウンターを合わせ、2Rにはダウンも取りました。その後、バダ・ハリ選手も手数を増やし、的確に攻撃を当て延長戦まで持ち込みました。ホンマン選手は延長戦を戦えず、セコンドからタオルが投入され、結果としては予告通りバダ・ハリ選手がTKO勝ちを収めました。ただ、今回の試合内容を見ると、バダ・ハリ選手がシュルト選手を倒せるかとなると、若干不安要素も露呈してしまったと思います。


アーツ選手VSシュルト選手は、アーツ選手の気迫勝ちでした。実際に的確に打撃を当てていたのはシュルト選手だったと思いますし、ダメージもアーツ選手の方が蓄積されていたと思います。しかし、常に前へ出続けるアーツ選手に対して、シュルト選手は後ろに下がりがちであったのが悪印象を与えてしまったのかもしれません。リングサイドにはバンナ選手や、レミー選手も駆けつけていました。それほどシュルト選手を倒すことは困難であったということだと思います。しかし、シュルト選手に関する問題は根本的には解決していないと思います。アーツ選手のような戦い方はもう通用しないかもしれませんし、来年のシュルト選手に勝てる選手がいるのかというと疑問符が付くところです。今回の試合でシュルト選手が若干気の毒に思えました。ただ試合に勝利して優勝という結果を残すという、自身の仕事を全うしているだけなのに、何故か悪者扱いされてしまっています。若干判定のジャッジもそのような流れに呑まれてしまった感もあると思います。シュルト選手のファイトスタイルが影響しているのと、勝ち続ける者の宿命なのかもしれません。シュルト選手はこれを糧に奮起して欲しいところです。(実際奮起されすぎても困りますが。。)


武蔵選手VSテイシェイラ選手は、武蔵選手が判定で負けてしまいました。武蔵選手のパフォーマンスは決して悪いものではなく、技術と言う部分ではテイシェイラ選手を上回っていたと思います。完璧に体格差・身体能力の差で負けてしまいました。武蔵選手の打撃は当たっているものの、ほとんどダメージを与えることが出来ず、試合を通してテイシェイラ選手に押されている印象を与えてしまいました。判定勝ちしたテイシェイラ選手ですが、やはりまだ経験が浅いので、依然動きに堅さが見られました。成長のスピードが評価されている選手なので、今後の更なる成長に期待したいと思います。



12月の決勝ラウンドも面白そうな組み合わせとなりました。

準々決勝第1試合:ピーター・アーツ選手vs.バダ・ハリ選手
準々決勝第2試合:エロール・ジマーマン選手vs.エヴェルトン・テイシェイラ選手
準々決勝第3試合:グーカン・サキ選手vs.ルスラン・カラエフ選手
準々決勝第4試合:レミー・ボンヤスキー選手vs.ジェロム・レ・バンナ選手

久々に誰が優勝するか予測のつかない、好トーナメントとなりそうです。