【桜の鬼】


桜の季節が廻る。
冬の終わりにして、春の到来を告げる。


川の清らかな流れと、涼しい新緑の香りを風が運ぶ。
川沿いの桜並木は、毎年盛大に艶やかな色とりどりの花を咲かせる。
邪気の気配を吸い込むように、瘴気の空気を消し去るように。


人知れずその桜を、そして川を守り続ける。
宿命に抗いつつも、その運命を受け入れている。
何人たりとも逆らえぬ定めを。


桜は知る。
全てのものの愚かな所行の数々を。
花びらが散るのと同時に昇華する。


桜は舞う。
全ての感情を受け入れながら。


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《朔羅》
桜に宿る神にして鬼。「桜鬼」とも呼ばれている。
多くの穢れを祓い、多くの災禍から守ってきた。
人間・妖の中立の立場で助言を行う。
高峯の良き理解者。


※【天地の絆】の続き。