目を閉じていると、怒声が聞こえてきた。
階段を降りる音が一段、また一段と大きくなり徐々に大きくなる。目を強く固く閉じても、意味はない。部屋のドアが乱暴に勢いよく開け放たれると、
「何、寝てんだ。気が利かねえな。」
乱暴に開かれたドアが壁にあたり、ガツツン戻る。どうしてこうなってしまったのかと思うと同時に、自分のすぐ横ですぅすぅと寝息を立てる息子を見て、自分が寝かしつけの際に一緒に寝てしまったことに気付く。
起きたばかりだからか、それとも怒声を聞いたからなのか頭がボンヤリとしている。怒声をなるべく聞かないように、さりとて話の要点を押さえなければ、更に怒られてしまうと思いながら、サンドバッグのイメージが浮かんできた。
洗濯機のボタンを何度も叩き、鋭い金属音が
響く。洗濯機から聞いたことないような音が聞こえてくる状況にキリリッと胃が痛くなるのを感じた。
突然、ドアが開かれた。
「何勝手に水入れてんだよっ!」
衣類用洗剤をふりながら、妻が詰め寄ってきた。
「こ、子供がさっきイタズラで落としたんだ。それ以外で触ってないよ。」
「嘘つくな。水入れたんだろ。ふざけんな。お前の洗剤捨ててやるよ。」乱暴にドアは閉じられた。
自分の洗剤が何故捨てられるのか。理解に苦しみつつ、以前もボディソープを勝手に補充したと言いがかりをつけられたのを思い出した。
謝らないとと思い、ドアノブを回すと、ドアノブが物凄い力で、抑えつけられ
「勝手に開けんじゃねえ!」と怒声が響く。
一方的に怒り、こちらからの働き掛けを拒絶する。こちらから出来ることなんてないんだ。ドアから離れる。でも、ドアから離れられない。怒声に対し、謝罪を続けると
再び、ドアが乱暴に開かれた。
「勝手に洗濯機回すなよ!!!!」
ドアが閉じられる。洗濯機が回る音と妻のシャワーの音がし始めても、その場を動くことが出来なかった。
妻の世界は、このドアのように伝えたい時だけ開き、それ以外は閉じきっている。そんな感想が頭をよぎると、ドアを開けることが急に怖くなり、一生ドアを開けられない生活をしている自分を想像し、暗澹たる気持ちになった。
部屋に戻ると子供が寝ている。変わらずすうすうと寝息を立てている。自分の心臓が締め付けられるように鼓動を立てていることに気付き、子どものため子どものためと何度も唱えた。心臓な鳴りやまず、気持ち悪さが込み上げてくるのを必死に抑え込む。どうしてどうして、、、こんなに辛いんだ