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ashcafeのブログ

映画、音楽、ミステリー、SF.カフェと街のぶらぶら散歩が好き。

3年前に、ぼくはこんなブログを書いた。当時かなり気に入っていたこのガーデンシネマは今はもうない。本屋がなくなるのには慣れてきたが、映画館がなくなるのは慣れない。寂しくてたまらなくなる。昔ほど映画館にいかなくなった今でもその気持ちは変わらない。

2009年6月
恵比寿の再開発地区(もうそんな風に呼ぶのはおかしいか)のガーデンシティのあたりは、歩いている人たちもこぎれいで、どこか余裕がある。たまたま木曜、金曜日と恵比寿あたりにいたものでそんな風に感じたのかもしれない。

できたての頃の、人であふれていた感じとはほど遠い。

新しい開発でできあがった高級マンションなどが醸し出す高級感なのか、それとも、もともとこの街にある余裕なのか。

もう通算20年近く東京に住んでいるが、いまだにそういったところはStrangerのままで、この大都市の持つ街の固有名に伴う歴史や記憶などとは無縁だ。

大学の頃、東京育ちの友人たちが、義務教育のころの、定番の記憶、たとえば高尾の遠足のような、地域にまといつく記憶の共有を語りあうのに、疎外感というほどの強さはないが、どことなく、ああぼくは彼らとは遠いところにいるという気分は抱いたものだった。

恵比寿のガーデンシネマで、麻生久美子という女優の「おと・な・り」という映画を見た。監督は熊澤尚人という人。

http://www.oto-na-ri.com/index.html


この小さな映画館にとても似合った静かな佳品だった。麻生久美子という女優の魅力が画面いっぱいにみちあふれていた。

この女優、深く意識したことはなかったが、日本映画ファンのぼくのスクリーン的記憶の中の片隅にいつも存在していた。新しい世代の日本の映画監督が、この女優を好んで使うということは4月ごろに情熱大陸が彼女を扱ったときに、はじめてああそうなんだと自覚したぐらいだった。

黒沢清などの新世代監督の映画の中に彼女の記憶がちりばめられている。でも、そんなに、観客の目をとらえて離さないという役だったようには思わない。

そんなタイプの女優のような気もしない。

麻生は、フラワーデザイナーを目指して、花屋で働くちょっと孤独感の漂う30代。試験が終わったら、フランスへ留学することになっている。数年前に、一斉に取り壊されてしまった同潤会のようなレトロなアパートに住んでいる。壁は薄い。だから隣人の発する物音が筒抜けだ。

隣に住むのは、トップモデルを友人に持ち、彼の写真を撮ることで、有名になってきたカメラマン岡田准一。でも、自分が本当に撮りたいのは自然写真。今のキャリアを捨ててカナダの自然を撮りに行こうと考えている。

岡田が珈琲豆をひく音や、麻生がフランス語のテープに合わせて、フランス語会話の練習をする声にそれぞれが、聞きいる夜。見知らぬ隣人が、なぜか気になってしまう。

そして、麻生久美子が鼻歌で歌う、「風をあつめて」。

岡田が、アパートに突然、飛び込んできた、モデルの親友の恋人に、「中学の時、コーラスで歌わされたんだ」とぽつんと呟く。

そんな、淡い色の、静かなラブストーリーだ。

少女のようなとき、30代そのものの憂鬱さなど、麻生は自分の素の部分と、演技の広がりを綯い交ぜにしながら、輝いていた。とてもきれいな子だが、そういえば、どこかにいそうな感じがする。不思議な空気が漂った。

しかし、「風をあつめて」は、学校の音楽の授業で使われるような歌なんだ、もう今は、と思わずしみじみしてしまった。

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