アスペルガー症候群の離婚率
アスペルガー症候群の方の離婚率は80%が定説です。
さらに、『男性側がアスペルガー症候群の場合』に関しては、90%以上が独身※(結婚歴の有無問わず)という記載もあります。
※精神科医 杉山登志郎氏のデータとのことで拝見しましたが、書名など詳細は不明です。
アスペルガーに限らず、発達障害全体とした場合は72%という記載がありました。
発達障害全体で見ても離婚率は高いですが、その中でもアスペルガー症候群の場合はさらに高いので、アスペルガー症候群は、特に家族との関係を築くのが苦手な障害といって差し支えないでしょう。
一方、アスペルガー症候群ではない一般的な夫婦全体の場合は、離婚率35%が全国平均です。
https://toyokeizai.net/articles/-/405934
このことから、アスペルガー症候群は突出して離婚率が高いことがわかります。
アスペルガー症候群の離婚率が高い理由
アスペルガー症候群の離婚率が高くなってしまう理由は、やはり家族をカサンドラ症候群を始めとした精神不安に陥れてしまうためだと思われます。カサンドラ症候群は、家族との情緒的なコミュニケーションが取れず、ストレスを常に感じていることを、家族外の人(友人や自分の親世代等)に相談しても理解してもらえないという状態が続き、最終的にはうつ病などに発展していきます。
カサンドラ症候群はそれ自体は病名ではなく、『状態』であり、病名をつけるならそこから現れた『うつ病』などがあたります。
岡田尊司先生の『カサンドラ症候群』という著書によると、歴史上の天才を支えた妻たちもかなりカサンドラ症候群がいました。(川に身投げをした漱石の妻など。ショパンの恋人サンドなど。)
当時は歴史的にカサンドラ症候群という琴葉はなかったはずなので、夫を支えられない悪妻と捉えられることも多く相当に辛かったのではないかと思います。
アスペルガー症候群の相手と離婚すべきかどうか悩んでいる方へ
現在、カサンドラ症候群で悩んでいる方でこのブログを見ていただいく形もいるのではないかと思います。
離婚するかどうかで悩んでいる方も多いかもしれません。
そんな方に考えていただきたいポイントをいくつか書きたいと思います。
先にお伝えしておくのは、離婚や別居をすすめているわけではありません。
ただ、結果的に離婚や別居になってしまう家族が多いのは離婚率からも明らかであり、なぜそうなるのかという点を具体的に掘り下げたいと思っています。
・アスペルガー症候群は治癒しない
→アスペルガー症候群は脳の機能障害です。SST(ソーシャルスキルトレーニング)などで形式上のコミュニケーションを身につけたとしても完全には治りません。
しかも、未対策の場合、年齢を経るごとにアスペルガー症候群の傾向が悪化すると記載している本もあります。(これは年齢とともに前頭葉の縮小があり、より性格が固執的になるため等が理由と推測します)
ちなみに、ADHDには薬がありますが、アスペルガー症候群自体を治療する薬はありません。(アスペルガー症候群を起因とする『うつ病』『不眠症』などの症状を改善するための薬は除きます)
・特に、『困り感のないアスペルガー症候群』の場合は治療効果はほぼない
→アスペルガー症候群の方は、時に社会的にはエンジニアリングや研究、芸術などの領域で秀でた能力を表し、本人も困るどころか気づかずに過ごしているケースが多くあります。
特に現在の40代以上の場合、アスペルガー症候群を発見しやすい子どもの頃にこのような概念はなかったため、個性と捉えてくれる需要的な環境に恵まれると困り感がなくそのまま大人になる方が多いです。
こうした人たちは、カウンセリングやSSTを行っても暖簾に腕押しという状態でほとんど効果がありません。これらの治療は、本人の困り感や改善したいというニーズがあって初めて効果が出るものですし、そもそも通院が続かないでしょう。
・40代以上で困り感のないアスペルガー症候群の場合、自覚が困難
→現代、発達障害が増えていると言われますが、これに対する見解は2つあり、1つは妊娠中の女性を巡る環境などの変化により、本当に増えているということ。もう1つは、古い時代より求められるコミュニケーション力が高くなったので、発見されやすくなった。という2つだそうです。(杉山登志郎先生の『子育てに本当に必要なこと』から私なりに要約)
ある程度の高齢になるまで個性として認められたアスペルガー症候群には、困り感がなく、自分自身をアスペルガー症候群として捉えられない傾向があります。
かつ、アスペルガー症候群には『自分の興味のあることしか受け入れられない』という特徴があります。
例えば「あなたはアスペルガー症候群ですよ、何か普通と違って周囲が困ってますよ」という話は自分にとって聞きたくないことなので、アスペルガー症候群の人は真面目に受け取りません。よく、奥さんに怒られて喧嘩になっても、また次には同じことを繰り返してしまうアスペルガー症候群の旦那さんは、怒られても何故怒っているのかわからないし、対策しようという気持ちも起こらないので改善しません。
私も、パートナーに何度も『あなたはおかしい』と言い続けましたが、結局、自分がアスペルガー症候群であることを認めようとしませんでした。
こうした人たちには、病院を受診させようが言い聞かせようが無駄です。脳の機能障害のせいで自分の状況を認めることが出来ないのですから。
・対策は『周りの人が気を使ってあげる』ほかない
→よく『アスペルガー症候群の夫』に関する本には、「パートナーが具体的に伝えてあげると良い」をはじめとした家族側の努力についてしか書いていません。(例:野並ツナさんの波『家族のためのアスペルガー症候群との付き合い方』など…この系の本は他にもたっくさん…)
なぜかというと『それしかやりようがない』からです。
自覚できない、自分では治りようがないので、周囲の家族が、まるで赤ちゃんや障がいのある方に配慮するように何から何まで気を使ってあげないといけない。相手に愛情があるうちはいいと思います。しかし、カサンドラ症候群のような状態になって、相手に愛情もないのにそこまで気を使って生活するのは、大変な忍耐力が必要です。
・離婚率から考える
→カサンドラ症候群の回復は
1.アスペルガー症候群の相手にとらわれすぎない(自分の時間を持つ、相手は機能障害があると割り切る)2.相手からまず距離をおく(別居、実家に帰る、生活空間を分けるなど含む)
この2つです。80%というこの数字は結局2を選ばざるを得なかった人たちが如何に多いかということだと思います。
夫のアキラさんについて、あれだけ勉強して漫画にのろけ話もたくさん描いた野波ツナさんも、最終的には別居を選択されています。
私はさらに、離婚しなかった20%のうち、本当に幸せにしているカップルはほとんどいないのでは、とも思っています。
・子どもにも悪影響があることも
→これは、ある離婚相談のNPOの方に話を伺ったときのことです。アスペルガー症候群の夫が子育てで問題になるのは以下の2つの時期だそうです。
1.0~1歳の言葉が通じない頃
→表情や状況で子どもが嫌がって泣いているのか、笑ってるのかすら判断できず、嫌がることをしてしまう
2.5-6歳を過ぎて、自我と論理が発達する頃
→3-4歳の素直なうちは、アスペルガー症候群の夫は良い意味で素直さが子どもと同レベルなので良い遊び相手として問題になりにくいそうですが、自我が発達してくると、今度は子どもが『親がなんか変』ということに気づき始めます(女の子の方が悩みやすい)。その結果、思春期には子どもがカサンドラ症候群になるということが起こり得ます。
・離婚しても案外生活できる
→これも多くの離婚本にありますが、実際、離婚すると案外楽になります。経済面に不安を抱える人も多いと思いますが、これも多くの人が言及しているとおり案外、何とかなるんです。
理由はケースバイケースだと思いますが、私の場合、まず自分の活力が戻ってくることでした。自分が元気になることで、子どもの世話と仕事を両立する元気が出ました。
家事も圧倒的に減ります。私の場合、アスペルガー症候群のパートナーが部屋をとにかく散らかすので、別れて家がきれいになりました。
他には、とにかく食材を買ってくるのに、食べきれなくて腐らせるパートナーのせいで大量の料理をしなければいけなかった頃に比べて、1日の仕事が本当に早く終わるようになりました。(アスペルガー症候群の『見通しを立てられない』という特性で、食べるタイミングを考慮せず欲しいだけ買ってしまったんだと思います)
水も電気も大量に使う人だったので、経済的にも楽になりましたし。
これはやってみないとわからないところも多いですが、不安はあったものの、私は1歳の息子とお腹の中の赤ちゃんと一緒に別居して、元気にやれています。
アスペルガー症候群の相手とうまくやっている人とは
一方で、別れている人だけなのかというと、決してそうではなく、非常に少数ですがうまくやっているカップルもいるようです。
少ない例ですが、私が見つけられた事例について記載します。
「うまくいっている」の定義は『離婚していない』ではなく、『相手付き合っていることを前向きに捉えられる』としたいと思います。
離婚していないけど、どちらかだけが努力して我慢する方法をとっているカップルはたくさんいると思いますので…
・お互いにアスペルガー気質があり、興味分野が近い
どこかの本で読んだ例ですが、引用元を思い出せませんでした。すみません。
研究者夫婦などで、お互いに似たような気質で、趣味や興味分野、仕事の領域が近いと、夫婦というよりも仕事のパートナーのような関係でうまくいく例があるとのことです。この場合子どもがいない夫婦の方が、家族のコミュニケーションが複雑になりにくいので、よりうまくいきやすいようです。
・アスペルガー症候群側が自分の状態を理解し、努力している
カウンセリングやSSTを受けながら、家族とノンバーバルなコミュニケーションをとれるように訓練することで、うまくいっているカップルもいるようです。
ただし、アスペルガー症候群は脳の機能障害なので、完璧に定型発達の人と同じようになることは無理があります。
アスペルガー症候群側からしてみると、(例としては乱暴ですが)足の不自由な障がいのある方に「走れ」と言っているに近いような状態なので、自覚をもって訓練やカウンセリングを受けても、コミュニケーションの問題が全くなくなることはないでしょう。
かつ、不自由な足で走ろうとするわけですから、そんな努力し続けるだけで相当に大変であろうことがわかります。
・パートナー側がアスペルガー症候群について学び、対応している
上のアスペルガー症候群当事者側のカウンセリングや訓練とあわせて、パートナー側も勉強している場合はよりうまくいきやすいようです。
通常は、『当事者側』は自覚がなく、『パートナー側』だけが手探りで苦労している状態になりがちですが、お互いに『当事者側は自分の状態について学び、改善の努力を行い』、『パートナー側は相手の行動に理解を示す』ことでうまくいくようです。
アスペルガー症候群側だけが努力するのは前項の通り完璧は難しく、やはり足りない部分に受容的に接するパートナーの力が不可欠のようです。
・婚前契約書をガッツリ作っている
アスペルガー症候群は、察して動くことは苦手なので、『こういうときはこうする』というルールに落とし込むとうまくいきやすい、という方法に着目したらやり方です。
例えば、何度言っても、子どもが寝ている時間に家中を歩き回ったり掃除機をかけたりして、うるさくしてしまうパートナーに対して『○時以降は、自室とトイレ以外の部屋に入らないように過ごす』など。
内容は、カップルに合わせて適宜作成し、定期的に追加や削除、変更など見直すことが必要です。そして、もちろんアスペルガー症候群の当事者側だけでなく、パートナー側も約束は守ります。
海外の事例ではこれでうまくいっているカップルもあるようですが、ちなみに私たちの場合は失敗しました。
失敗理由は、
・ルールの抜け穴を見つけがちな男性だったこと。
・一般常識すら危うかったので、そういった項目までいれたら膨大になってしまった。(野波ツナさんの『旦那さんはアスペルガー』で、夫のアキラさんが「平服で」という結婚式に普段着で行ってしまい顰蹙を買う例がありましたが、ああいった常識まで補完しようとしてしまいました)
・膨大のうえ、本人の中で優先順位が出来てしまい、『守りたい項目は守る。気に入らない項目は守らないかズルする。でも全部に違反してるわけじゃないから、自分はルールを守っている』という論理で、結局全てのルールが円滑に遂行されることがなかった。
婚前契約書は、項目をあまり膨大にせず、必要なことだけまとめ、溢れる部分はお互いに目をつむり、歩み寄る姿勢があって有効なのかもしれません。
最後の例は私たちの失敗談も入れてしまいましたが、参考にしてください。
以上が私が探せたうまくいっているカップルの事例です。
ヒントになる例はありましたでしょうか。
まとめ……カサンドラ妻は腹をくくるしかない
アスペルガー症候群の離婚率80%という現実から、離婚すべきかどうかを考えてきました。
現実として、アスペルガー症候群の相手とやっていけるには
1.『相手の特性について嫌な気にならない、許せてしまう』パターン
2『お互いに理解して歩み寄る』パターン
のどちらかしか根本的な解決はないと思います。
しかし、アスペルガー症候群は、そもそも『自分や相手のことを理解する』ことが難しい障害です。
私の場合も、何度話をしてもパートナーはこちらの状況を理解することは出来ませんでした。
きっと、パートナーからは「なんでひとりでずっとイライラしてるんだろう」と思われたことでしょう。
自分の人生は自分の物で、パートナーのものではありません。
私は、相手に気遣い続けたり、パートナーが家を散らかしたり、食べ物を腐らせたり、お金を浪費したりする後始末を今後もずーっとし続けるのが辛くなってしまいました。
そこで、ここに書いてあるような本を読んだり、アスペルガーについて学んだりした結果、別居を選びました。
同じような状態にある方の参考になれば幸いです。