天使の羽の奇跡3
パン屋では…たいした事件もなかったので、はしょらせてもらうよ。
まぁ、雪の日曜日、人出は少なく店も暇だったし。
「申し訳ないけど1時に早上がりしてもらっていいかな?」
男性社員さんはしきりに謝りながらそう言ってきた。
全然ウェルカム。だって眠いもん。昼ご飯も食べて眠気MAX。
あっ、朝早いから、10時とか11時に取る休憩時間にお昼ご飯というか、朝昼兼用のブランチをいつも取っているんだ。
そそくさと片付けて着替えて帰る。
パン屋のある海浜幕張駅からは幕張本郷行のバスに乗る。
ここの路線のバスは、2輛の連結バスなんだ。
なかなかお目にかかれないと思うんだけど、そんなことないのかな?
君の家のそばでも走っているのなら、ぜひ、教えてほしい。
幕張本郷駅でJRで帰るか京成線で帰るのかしばし悩む。
「真っ直ぐ帰るのも早過ぎるよなぁ。また献血しようかなぁ。でもなぁ、ちょっと部屋片付けたりするかなぁ。」
優柔不断なダメニンゲン。
ようやく、京成線に決定。やはり、部屋片付けをすることに。
出張から帰ったばかりで、スーツケースの中もそのままだし。
改札を抜け、ホームへ降りかけると…。
「プルルルルル」
電車が出る。
猛ダッシュをかけるが無情にも扉は閉まった。
車掌はわざとらしく俺から目をそらし、電車は当たり前のことのように、俺をホームに残し滑り出して行った。
「チクショウじゃあ、JRだ」
すると、
あっ、上り線各駅停車の電車が入って来た。
あー、ツイてない。
今からダッシュしても間に合うわけがない。
すると今度は京成線千葉中央行きの電車がホームに入って来た。
「寒いし、とりあえずこれに乗っちゃえ。
電車がすれ違う駅で津田沼行きに乗り換えればいいや。」
そんな軽い気持ちでその電車に飛び乗ったんだよね。
でも、タイミング良く電車がすれ違う駅が無くて。
タイミング良くても、ホームが反対側だったり…。
「ツイてない。」
結局、千葉まで来てしまったんだ。
ここも上り線のホームは一度階段を降りて反対側へわまらなきゃならない。
改札まで降りてから上り線ホームに上がって時刻表を見ると、5分後には新京成線直通の電車が来るようだった。
「でもなぁ…せっかく千葉まできたからヨドバシカメラでも行ってプリンター見て来るかなぁ。」
天使の羽の奇跡2
「ふつかみっか」
この言い方が命取りだった。
僕は、
『にさんにちしかシフトに入れない』
だから、
『今回は条件を満たせないのでシフトに一日も出られませんよ。』
という意味で言ったんだけど、相手には、
『2月2日、3日はシフトに入れる。』
という風に取られていたらしい。
10月の後半も11月の前半も、
6回のシフト入りができなかった時には、
1日たりともシフトに入れてくれなかったのに、
このときばかりは、
入れて欲しくなかった日にシフトを組まれてしまったんだ。
2日までは地方へ出張。
だから、2日はどうしても休ませてもらわなきゃいけない。
問題は3日・・・。
千葉には帰ってきている。
午前12時を回ることは確実だけれどね。
君も知っていると思うけど、
パン屋さんの朝は、早い。
本音を言うと、休みたい。
「都合のいいようにシフト組みやがって。」
怒ってみても後の祭り。ここで貸しを作っておくのも悪くはないか?
自分の言い方の悪さも否定できないし。
っていうか、完全に僕の言い方が悪い(涙)。
そんなわけで3日は泣く泣くシフト入りすることになったんだ。
2日の夜。帰りの新幹線で気持ちよく寝過ぎたせいか、
ベッドに入ってもなかなか眠れない。
朝は4時に起きなきゃならないのに。
朝、何度目覚ましがなったんだろう?
時計を見るとすでに4時40分。
5分で準備をして出掛けないと遅刻する。
ゆうべ最後に見た時計は1時52分を指していた。
眠い。が、顔を洗う時間も無い。
慌てて着替えて部屋を出ると… 。
外は雪。
一瞬で眠気が飛んだ。
「この雪の中を歩くのか…。」
あー、パン屋辞めてぇ。。。
今日は日曜日だから、
蘇我経由で海浜幕張幕張まで行こうとすると、
電車が無くて遅刻する。
そういうわけで、寝不足の頭と身体を
冷気でかなりオーバークールさせながら
京成幕張から海に向かって雪の中をてくてく歩いたんだ。
天使の羽の奇跡1
僕は、ふたつのバイトを掛け持ちする、しがないフリーター。
イベントの運営スタッフとして地方を飛び回ること
もあれば、パン屋さんで発酵させた生地と戯れる日もある。
今日、2月3日は僕にとって最悪の日になる予感があっ
た。
パン屋には、月に2回、シフトの希望日を提出することに
なっている。
『半月に6回はシフトに入るように』
という条件が課せられて。
しかし、イベントの仕事で地方に出ていることもあり、
なかなか半月に6回のシフトに入ることも難しい。
そして、シフト提出日に地方にいることも、まま有る。
そんな時は、電話で希望日を伝えるということにしてもら
っている。
2月のシフトもそのパターンだった。
「すみません、2月もちょっと忙しくて・・・。
ふつかみっかしかシフトに入れませんので・・・。
申し訳ありません。」
「あっ、そう。」
ガチャッ、ツーツーツー。
仕事の掛け持ちをして、なかなかシフトに入らない僕を、
この上司は嫌っている。
最近は、6回の希望を出さないと1日たりともシフトに入
れてもらえなくなった。
しかも、その通告でさえ、この上司から直接ではなく別の
男性の社員さんから遠まわしにもたらされた。
『いじわるバアさん』
僕と、何人かのバイト仲間はこの36歳アラフォーの独身女
性をこう呼んでいる。
人に対しての好き嫌いが激しく、お気に入りの人とは楽
しそうにはしゃいでいるが、嫌いな人間、そう、まさしく
僕のような者が販売の女の子と話しながら仕事をしている
と、とたんにキレて文句を言ってくる。
それも、男性の部下を使って。
そんな人だから、僕とのコミニケーションは必要最小限。
いや、必要なレベルにまで達していない。
そして、この時の電話も僕の言い方が悪くて、突然シフト
に入るハメになってしまったんだ。
