仕事の帰り道
酷いスコールのなか車を走らせた。
まるで霧に包まれているような錯覚に
陥るほどの雨で、
なんというかそれは、
美しいものだった。
私はスコールが好きなので、特に仕事帰りの
土砂降りは大歓迎だ。
辺りが次第に暗くなると
ヘッドライトが路面に乱反射し、
信号機の光がぼんやりと空中に浮かぶ。
雨と音楽は、自分のなかでもしかしたら
切り離せない存在であるのかも知れない。
雨の夜は、ショパンの夜想曲を聴くことが多い。
21曲の中でも私は、少し暗いのが落ち着くので
それらばかりを聴いている。
暗いと言っても、感傷的になり過ぎることがなくちょうど良い。
6番の中間部のコラールは、
何度聴いても息をのむうつくしさがあるように思う。
有名なので多くの方が演奏されていると思うが、私はアルトゥール・ルービンシュタインの演奏がなんだかしっくりくる。
かくいう私も、中学生の頃にピアノの先生の前で
弾きながら頭を前後左右にカクカクさせてしまっていたことを、2番を聴くたびに思い出しては行き場のないおもいになる。
本当にここちよいのだもの... 。
もう一つ聴きたくなるのも
ショパンのソナタ第2番
葬送の第3楽章である。
重々しい和音の行進が進んで行くと
まるで回想シーンの様な旋律がやってくる。
柔らかな風が、何度も何度も、
優しく頬を撫でて行くような
遠い遠い世界だ。
そしてそれが次第に去って行く
すると再び行進がみえてくる。
私はこの時の最初の一音を聴くと、
うっすらと鳥肌が立つ。
和音はクレッシェンドして行き
聴く側をゆっくりと、
陰鬱なグラウンディングへと導いて行く。
こちらも、ルービンシュタインの演奏が好きだ。
心に残る喫茶店も、
もしかしたらこの曲の回想シーンのような場所だったのかも知れない。
この曲を灯ひとつの暗い部屋で寝転がって聴いていると、雷鳴が響き、激しい雨粒が窓を打つ音が外の方から聴こえてきた。
なんてうつくしいのだろう。!!!
また会えたね。
今日は少し、うつくしいを使い過ぎた。