東北の現住所に引っ越してきて、早10年以上の月日が経過した。

 

思い起こせば、東日本大震災で少なからずダメージを受けた地元に貢献しようと、意を決して脱サラしたのは田中マー君の活躍で楽天が優勝した年だったと記憶している。

 

当時の楽天フィーバーは凄まじかった。

 

息子の入学式では、何故か楽天イーグルスの帽子が各生徒に配られていた。

 

私の母も孫(私の息子)にイーグルス愛をこれでもなく注入し、一人前のイーグルスサポーターを育てようと精魂を傾け、

「〇〇選手の地元はここで、キャプテンの銀次はこうで、、」と熱心に教育していたのを思い出す。

 

一方、私の妻の地元は福岡である。

 

福岡といえば言わずと知れた福岡ソフトバンクホークスのお膝元だ。

 

福岡に里帰りすると、義母は息子を福岡ドームに野球を見に連れていく。

そこでは福岡人のホークス愛を嫌というほど息子は注入され、応援歌「いざゆけ若鷹軍団」を歌えるまでに教育される。

 

息子も子供ながらに自分のアイデンティティに疑問を持ったに違いない。

東北に帰ったら若鷹軍団を歌わないあたりに息子の成長を感じた。

 

ある時、私の母と福岡の義母、息子の三者が顔を合わせる機会があった。

 

これは「パ・リーグ クライマックスシリーズ」が始まると悪い予感がした。

 

思った通り、母は「〇〇ちゃんはイーグルスが好きなのよね」と切り出し、福岡の祖母も「〇〇ちゃんは若鷹軍団の歌えるわよね」と応酬する。

「優勝したのはイーグルスだべした〜」「パ・リーグの一番はホークスたい!」という会話の末、両祖母から恐れていた質問が飛び出す。

 

「〇〇ちゃんはどこのチームのファンなの?」

 

小1には背負いきれないプレッシャーが小さい双肩に押しかかる。

 

そんなこと答えられるはずないじゃないか。小1が「野球よりサッカーでして」「どっちも好きですが、生まれは東京なのでジャイアンツです」なんて言えるはずもない。

 

鷹も鷲も鳥類同士、仲良くしてくれ・・と思いながら固唾を飲んで息子を見守った。

 

意を決して発した息子の答えは、

 

「ソフテン」

 

まさに中庸の精神。

 

ソフトバンクファンにも、楽天ファンにも角が立たない。

それでいてウイットに富んだ、完璧な回答であった。

 

まさに全米が泣く答えである。

生まれてすぐ放射能から逃げるために九州に避難し父を離れ、

関東に戻って慣れたと思ったらまた引越し、

色々あったが立派に成長していたのではないか、息子よ。

 

部活の送迎中、車内で爆睡する息子を見て、そんなことを思い出した。