
今年、新しいコートを買いたいと思っていた。
でも、なんだかんだでもう年末も近くなり、結局去年と同じダウンを着ている。
コートがほしいなら、お店なりネットなり、探せばいいのだけど、そういう気にもならない。
次に買うコートは、本当に気に入って、何年も着たい!というものに出会いたいと思っているから、気合いが入りすぎているのかもしれない。
まあ、出会うときには出会うだろうと、今年は急がないことにしようと思っている。
それにしても、毎日おんなじダウンばっかりじゃつまらないなぁとぼんやり考えていたら、
ふと、普段は使わない2階のクローゼットに、コートが1着しまってあることを思い出した。
さっそく階段をあがって、クローゼットを覗く。
あったあった。
そのコートは、ピンクっぽいミルクティーのようなベージュで、
同色のファーがついたフードは、取り外しができるようになっている。
同じ布の大きなくるみボタンがついていて、
一番上のボタンだけが飾りボタンになっている。
この飾りボタンが可愛くて、すごく気に入っていたコートだ。
袖を通して、鏡の前に立ってみた。
・・・
・・・
すぐに分かった。
「これは、違う。」
体をひねって、いろいろな角度から見てみるけれど、
違和感は拭い去れなかった。
そして、考えてみた。
このコートを着ていた頃のわたしのことを。
あの頃のわたしは、夫とまだ恋人同士で、
なんとなく関係が悪くなってて、夫から距離をとられていた。
でも、クリスマスにはデートの約束があったから。
わたしは、新しいワンピースを買って。
ネイルサロンにも行って。
そして、このコートを買ったんだった・・・。
彼の気持ちが離れていかないように。
綺麗に綺麗に飾ったわたしで、久しぶりのデートに臨みたかったのだ・・・。
ということはだよ?
なんと、10年前のコートだよ!!
あれから10年。
ねえ、あの頃のわたし。
あなたは今、不安でいっぱいで。
大好きな彼が離れていってしまうのが怖くて。
必死に自分を飾り立てて、笑顔で。
頑張っていたね。
ねえ、あなたが望んだ未来を、今のわたしは、まるっと手に入れているよ?
すごくない??
そりゃあ、今のわたしには、このコートは似合わないわけだ。
流行りの形じゃないとか、そういうことは抜きにしても。
可愛くてお気に入りだったはずのコートからは、もう悲しいほど負のオーラしか感じなくて。
なんで今まで捨てずに取っておいたんかなぁ?なんて不思議にすら感じた。
けれど、あれから10年。
わたしは今、あの頃のわたしが想像しえない未来にいる。
なら、これからの10年。
わたしはまた、今のわたしが想像できない未来へ行けるということだ。
そんなことを思い、胸の中がふっくらとあったかくなるのを感じる。
そして、今わたしにある幸せ。
その大きさを思い、涙が出た。
向こうの部屋から、鼻をならすような泣き声が聞こえる。
娘が目を覚ましたらしい。
わたしは立ち上がった。
ぬくぬくとした幸せのかたまりを抱きしめるために。