蜘蛛と蝶

蜘蛛と蝶

今までのことはけして消えることはない。それは悪しき過去として刻まれている。でも、これからのことは作っていける。

Amebaでブログを始めよう!

バイトではじめたキャバクラが日常になっていく。

それはそうだ。

とくに忙しくしなくてももらえる月給と違い、

自分次第で格段に増えるバイト料。


そして、夜の・・・というよりは、

女社会では自分がいかに働きやすいか・・・

ということはひつじには絶対的な重要度だった。


それまでもそうだった。

元旦那と結婚したのも、

元上司たちと不倫したことも、

前回のバイトで客に遊ばれたことも、

ぜんぶ自分の居場所を作るためにやったことだった。


その失敗をわかっている。

だから今度は大丈夫。

そう「きょう」に言い聞かせて、そして自分に言い聞かせて、

ひつじは頑張った。


だから、徐々に夜の仕事が重くなっていく。

そして・・・

それまで頑張っていた検査員としての仕事も、

出張できなければ、

出世の道はないに等しいとつきつけられ・・・

完全に夜に落ちていく・・・


ひつじは自分が昼の仕事でいかに影響力が強いか、

どれだけ周りに「実力」を認められてきたか、

それを自分だけがわかってなかった。


そんなひつじを夜のバイトが蝕んでいく・・・

日常が変わっていく。

会っても話すことはバイトの話しが主になる。

2週間たって、

2人の客が指名するようになり、

さらに指名はないものの、

パチンコ屋のグループにも呼ばれるようになった。


バレンタインには、手作りのチョコを持ってきたが、


蜘蛛と蝶-チョコ


実際にそれは、客にも配っているかと思うと、喜べない。

そして情けないような気持ちになる・・・


なんでオレはこいつと別れないんだろう?

なんで捨ててくれないんだろう?

なんで捨てないんだろう?


何度も考えた・・・

しかし答えはでなかった・・・

ひつじが初出勤した。

はじめての同伴は当然「きょう」だ。


以前にこの店でバイトしたのはもう5年ほど前。

要はそのときの「バカな遊び」が今の苦境を招いている。

もちろん、それがなければ、

平穏ではあったろうが「きょう」にも出逢えていない。

それは理解できるものの、やはり「バカ」であったと思う。


それをまた繰り返す。

しかし、強引にやめさせる経済力も強制力ももたない。

ならせめて別れる前に、

道筋だけはたててやろうかとも思っていた。

客がつくまでの何回か。

そしてわかれる。

その見立ては3ヶ月だった。


そしてこの日。

初めての同伴をし、仕事をする美しい彼女を見守り、

私はひとりで店を後にした。