教室前


教室からは賑やかな声が聞こえて来る



「う~久々だから緊張するなぁ」



俺の後ろに隠れてしまった




「……、舞美なら大丈夫」




手を引き教室に入った





ガラッ






「…………」






さっきまで賑わっていた教室の空気が一変して静まり返った





コソコソとした雑音がきこえてきた


(あれが舞美さん?私ちゃんとみたのはじめてかも!留年とかしてないんだ~)

(てっきりもうやめたのかと思ってた~)


(うわ~いきなり男連れかよ(笑)


(てかすぐ休むならもうやめちゃえばいいのに(笑)



コソコソ




クスクス…





…最悪だ…胸糞悪い…






おおまかの事情しか知らないくせに





何も知らないし知ろうともしない奴ら







ただただ面白半分の奴ら








何故人は表面や他人の口伝えだけでこうも決めつけ見下そうとするんだろう



自分よりも劣る存在を決めたがるんだろう





自分の保身を考えていざとなれば友や恋人、家族さえもすぐにあけ渡す









力をもつものにのみ尻尾をふる











偏見かもしれないが


学校とはそういった負の塊だと俺は思っていた



まわりは全て敵だと思え


四面楚歌など、昔の人は上手いこと言うもんだなとおもった







肌寒い朝




俺はブレザーの上にコートとマフラーをまいて自転車を走らせていた













「よーしーきーー!」





彼女の家の前まで来たとこでとまると



コートの前をとめずブレザーが顔を覗かせる恰好で舞美がすぐに出てきた



「良樹!…おはよう!」




寒いのか少し鼻と頬が赤みがかかっていた



にかっと笑うと白い歯を覗かせていた

















「おはよう、舞美」








思わず釣られて笑ってかえした








「こら!コートの前はちゃんとしめなさい。ほら…」




「うぇ~…良樹、おかーさんみたーい」




ブーブー言う舞美のコートのボタンをとめてやる







「ありがとー!む~今日は寒いね~」



手を顔に被せ息を吹き掛けていた






「…はぁ……


じゃあもっと暖かくしてこいよ…





ほら!」








自分が巻いてたマフラーを舞美に無理矢理巻き付けた




「うぇふぅ!?…あったかーい」



などアホっぽい声をだしている






「ほら…早く乗って…」






「はいは~い!」



自転車の荷台に舞美はドサッと乗ってきた





「ん~良樹は寒くないの?」






「ん?俺は今からおもーい積み荷を乗せて必死に学校まで自転車漕ぐんだから平気だよ?」





ゴスッ!!


「イタッ」





後ろから殴られた






「女の子に!仮にも彼女に重い…とか…馬鹿じゃないの!?…殴るよ?」







もう殴ってるが



突っ込むと次がきそうなのでやめておこう





「はいはい、すいません。舞美様はかるうございますよ」








「むぅ~なんか納得出来ないなぁ……あ!」










舞美が何かひらめいた様子で手をあわせてた







次の瞬間視界が何かに一瞬奪われたあとその何かが首に巻き付いてきた







マフラーだった








「はい!はんぶんこー!」




ニコニコしながらマフラーの半分を俺に巻き付けてきていた





「はぁ…舞美はホントにずるいなあ…」







「ん?なにかいった?」










「ほらー何時までもイチャついてないで早く学校行かないと遅刻よー?」






舞美のお母さんが見てられないと言う感じで声をかけてきた






「………」



二人して赤面してしまった













「じゃ…じゃじゃあ…行ってきますっ!ほら良樹はやく!」






「お、おう!じゃあ…行ってきます…」







「はい、行ってらっしゃい…」









舞美のお母さんが見送る中、自転車を走らせた






背中には舞美の温もりがあった











一晩中泣き腫らした








泣くのはここまで








一時は折れそうになった自分に葛をいれた













今日は土曜日だ







学校もない



















舞美の自宅に電話した










「もしもし…舞美のお母さんですか?

良樹です…はい……

折り入ってお話ししたいことがあるのでそちらにお伺いしてもいいですか?

…はい、出来ればお父さんも……では。」



















舞美のいない舞美の家に向かった









行くと舞美のお母さんがすぐに出迎えてくれた






「良樹君…いらっしゃい…どうぞ」








舞美のこれからの話しを聞いた








来週には病院をでるらしい







残りの時間を少しでも多く家族や大切な人達と過ごすための配慮だそうだ










ただし容態が悪化した場合は直ぐさま入院らしい















あとからお父さんも揃い三人になった















「いきなり押しかけてしまい、すいませんでした…」












「いいえ…大丈夫よ、舞美の事…よね?」









お母さんは俺の様子を伺っていたが

お父さんは何も言わないでジッと空(くう)をみていた







「はい…今から俺が話すことを

出来れば最後まで聞いてください…

そしてどうするかはそのあと…

決めてください…



殴られる覚悟はあります」













呼吸を整えて真っ直ぐに舞美の両親に向き直った









「まず…ちょうど舞美が退院してから学校は一ヶ月程で冬休みに入ります…



舞美を学校に行かせてあげてもらえないでしょうか?










学校での事はすべて俺が責任を持ちます










そして冬休みに入ったら





残りの時間すべてとはいいません…




せめて舞美が元気な間







俺に舞美の時間をいただけないでしょうか?







俺は…

舞美とは長い付き合いなのはわかっていただいてると思いますが…








舞美の身体の事を気にかけるばかりで







彼女に何も…



何1つ…らしいことをしてあげてられなかったんじゃないかと思います










いろんな物を舞美に見せてあげたい






やりたい事をやらしてやりたい








色んなものに触れさして






舞美に






思い出を






楽しい時間をあげたい








そしてその時を一緒に過ごしてやりたい




これは俺の我が儘です





そういう時間なら家族と一緒に居たほうがいいんではないかとも思います















俺が今、舞美にしてあげれる総ての事を…





時間が足りないのがわかっていても




だからこそ









時が許すかぎり









俺の持てるものすべて舞美に捧げたい











これは

一晩かけて考えた結果です












お願いします!




俺に…



舞美さんの時間を下さい!



ご迷惑なのは百も承知です!




でも…


俺は



それでも



舞美と一緒にいたいんです!!」









全身全霊で土下座をした




頭に後が残るんじゃないかというくらい床に押し付けた








我が儘なのはわかってる








大切な家族の時間を裂いてしまうのも











俺は学生で






力も知恵もない癖に







無茶苦茶な事を言っている












それでも












「良樹君…顔をあげて?

あのね実は舞美も学校に行きたがってるの…


本当は辛いけど

学校は行かせてあげるつもりなのよ。


学校にも連絡して許可を得てるから良樹君にあとで学校側からお話しがあると思うわ。




良樹君も…


私達と考える事は一緒なのね…




本当によかった…




舞美の最初で最後の大切な人が良樹君で…」





舞美のお母さんは

そこまで口にすると泣き出してしまった










するとこれまで一言も発しなかった舞美のお父さんがいきなり立ち上がって俺の前まで来た








そして手を振り上げた









殴られる!!













と思った瞬間


抱き寄せられた





お父さんもいきなり泣き出した





「良樹君!…そんな他人みたいに自分を言わないでくれ!

君は立派なうちの家族だ!!


私達も、もちろん舞美と共に過ごしたい…




しかし舞美も良樹君と一緒にいたいと願っている!




良樹君もこんなにも舞美を思ってくれる!




それを私達が…




家族が…望む未来を


拒むわけがないじゃないか!




拒む事なんて出来るわけないじゃないか!!」









俺の頭を強く抱き抱え


嗚咽を噛み殺すように


ただひたすらに



泣いていた








一時でも多く一緒いたくないわけがない






それでも






これがこの人達が舞美の幸せを考えた結果だったんだろう










そして俺はこの気持ちに必ず答えなければならない












舞美の両親も





舞美も












俺にとって大切な家族だから