プレイヤーが魔法使いとなり、現代に解放された危険な<禁書>を封じて魔法災害を防ぐゲーム、マギカロギア。自動的に鬱展開になるシステムだそうである。
 そんな何だか全然勝手のわからないゲームを、いいからやってみようぜ、的なノリで今始める。
 今回集った魔法使いは以下の4名。


・ギョピ沢モケ夫
 力の魔法使いで経歴は書警(経歴の中では一番偉い)。
 魔法名(魔法使いの社会での名前。魔法戦の際には必ず名乗らなければならない、らしい)は『毎週水曜夜8時』。年齢は30歳。
 表の顔はおひつ喫茶のオーナー。普段はおひつ喫茶でコシヒカリとかヒトメボレとかオリジナルブレンド米とかを炊いている。どんなお米も待たせずお出しするのが売り。


・鈴本洋右山
 ギリギリの名前。訴えてもいいと思う。獣の魔法使いで経歴は訪問者(偶然、魔法が使えるようになった者)。
 魔法名は『欲望』で、年齢は26歳。
 表の顔は教師で、突然魔力に目覚め、自分が選ばれた存在だと調子に乗ってるらしい。自分の生徒をすぐホテルに連れ込もうとする。言うこと聞かない生徒は魔法で留年させるなどの悪行超人。


・辻 灯
 力の魔法使いで経歴は外典(特殊な魔道書で、魔法使い達の組織<大法典>の下僕と化している魔道書)。
 魔法名は『美しく輝く宝石の猫』。年齢は14歳。
 表の顔は中学生である。また彼のアンカー(魔法使いが現実世界に留まるために必要な楔となる人間のこと。その魔法使いと強い運命で結ばれているため、魔法使いに何か起こるとその反動がアンカーに行って不幸になったりする。でも、魔法使いにいいことがあっても、アンカーは幸福にはならないようだ)はメールアドレス黒服の男。彼を宿敵としてメールのやり取りをしている。多分、掲示板で煽ったり煽られたりして両者ともに顔真っ赤なのではないか。中学生っぽい。が、残念ながら今回はこの設定は使われなかった模様。


・螺子式メメクラゲ
 歌の魔法使いで経歴は外典。
 魔法名は『唯一絶対真理の町長』。年齢は17歳。
 表の顔はハーフの転校生(人間とクラゲのハーフ)。鈴本のクラスの生徒でもある。なお彼女のアンカーは紅ジャケ。間もなく故郷の川を遡って産卵を終え、静かに息を引き取る予定。が、残念ながら今回はこの設定は使われなかった模様。



 ゲームはまずはマスターによる導入フェイズから始まった。


◇導入シーン1 どっかの住宅街


 メメクラゲ(愛称は放送禁止用語になるので表記できない)が街を歩いていると、突然叫び声がする。
「もうこんな家にはいられないわ!」
 そう言って一軒の家から飛び出してきたのはメメクラゲのクラスメート、桜田ジェニファーであった。
「家にいられないならお城に住めば?」
 どうも穏やかでない雰囲気である。メメクラゲが桜田ジェニファーに事情を尋ねるに、これから家を出て1人で生活するのだという。
「よし、じゃあうちに来るか」
 なんかどっかから鈴本先生が生えてきて大変性的な意味合いの提案をしてきた。
「何だったらいい仕事紹介してやるぞ」
 とても聖職者とは思えない口調でそうも言い添える。
 だが、桜田ジェニファーは何か当てがあるのかメメクラゲ達には構わず、京王線で新宿へと消えてしまうのだった。
 後日流れてきた噂によると、桜田ジェニファーは新宿にあるコンビニキャバクラゴルゴ69にて働いているという。コンビニキャバクラとはミニ○トップみたいに、しゃべれる食べれる同伴できる、が売りのキャバクラだとか何だとか。酒飲んで気分悪くなった客がコンビニ部分でパピコ買って食ったりしてる。
 メメクラゲ的にはあんまり事情がわからない上にビッチ臭いのでどうかなとは思うのだが、桜田ジェニファーがメメクラゲのアンカーの1人となった。属性は恋愛。
 ここで桜田ジェニファーのハンドアウト(重要なNPCについて書かれたカード。表に人物欄、裏に秘密欄が書かれている)の人物欄が公開される。


・桜田ジェニファー
 17歳の高校生。父親はアメリカ人。離婚した母と西六分儀市に住んでいる。現在は家出中。年齢を偽って新宿のコンビニキャバクラゴルゴ69で働いている。雑居ビルの上の階に住み込み。


◇導入シーン2 新宿アルタ前とかそこら辺


 ギョピ沢モケ夫が合羽橋におひつを買いに行った帰りである。
 雑踏の中、ギョピ沢は足の悪いホームレスが謎の人物とぶつかるのを目撃した。ホームレスはよろめきつつも謝る。と、その謎の人物は「その足はどうした?」とホームレスに興味を抱いた様子。何だか治してやると言っているようだ。いつ「ん~? 間違ったかな~?」とか言い出すか見守っていると、どうも本当に治してしまったらしい。触れただけで治療。
「おお、あなたは高名なお医者様ですか? ありがたいありがたい」
「なんか新興宗教の勧誘みてえ。絶対サクラだよね」
 ギョピ沢は懐疑的な眼差しでそれらのやり取りを見る。と、謎の人物がにやりと口元を歪めて、
「これで君も働けるだろう。この世で何だってできるさ。必要のない人間を殺すとかね」
 物騒なことを言いだすではないか。その言葉を受けてホームレス、やにわに目の色を変え早速自分の首を締め始めた。ということは無かった。一瞬目の色が変わったようだったが、すぐに元に戻り戸惑い気味。それをよそに謎の人物は新宿西口方面へと消えた。
 ギョピ沢はそのホームレスに敢えて体当たり。転がるおひつ。
「ああ、あの落としましたよ」
 おひつを拾ってもらったことでそのホームレスから話を聞くことにした。
 ホームレスは権蔵と名乗り、新宿駅付近で寝泊まりしているという。
「そうか。じゃあ、うちの店で新しいメニュー作ってるから、それ試食させてやんよ」
 ギョピ沢は新規メニュー、必須放射性セシウム入りご飯(普段の生活で不足しがちな放射性物質を自然に摂取できる)を食べさせてやるのだった。
 こうして権蔵がギョピ沢のアンカーの1人となった。属性は恩人。おひつ拾ってくれたから。
 ここで権蔵のハンドアウト人物欄が公開される。

・権蔵
 67歳。新宿駅付近で寝泊まりしているホームレス。足が悪く仕事ができなかったが、通りがかった謎の医師に治してもらった。


◇導入シーン3 都庁内部の会議室か何か



 権蔵とギョピ沢の出会いから二週間。
 魔法使い達は<大法典>の新宿地区担当者から呼び出されて都庁の一室にいた。
 呼び出したのは万田リン子。表の顔は28歳都庁職員だが実際はもっと年寄りだという。魔法名はマダムデトロイト。中国系アメリカ人らしい。
 万田の言うことには、昨日歌舞伎町で起きた殺傷事件に<禁書>『死に歪められし法典』が関わっているらしいということだった。その殺傷事件とは新宿ネリチャギ組の構成員2名が突然後ろから切りつけられた通り魔事件である。
 魔法使い達は『死に歪められし法典』の断章(禁書が分割された姿)をかき集めて封印の儀式を執り行わなければならない。もし3日以内に断章を全て集めることができなければ、街に住む住人を含めて新宿ごと封印することになるという。
 魔法使い達は書警であるギョピ沢をリーダーとした文科会を結成し、『死に歪められし法典』の断章を探す任に就くのだった。


 

 こうしてメインフェイズが始まる。
 プレイヤーは、ハンドアウトのある人物の秘密欄を明らかにする調査、アンカーとの関係性を変化させたりする事件、魔力を決め直したり変調を治す調律、それに誰かに魔法戦を挑む戦闘、のいずれかを行うことができる。


◇メインフェイズ第1サイクル 新宿上空 ギョピ沢モケ夫

 ギョピ沢は自分のアンカー、権蔵を探して空を飛びまわっていた。空を飛ぶなど、魔法使いには造作もないこと。ただ、なんで空飛ぶことにしたのかは覚えてないが。
 と、すぐに雑居ビルの裏側にいる権蔵を発見。その手には血の付いた包丁が握られていた。
 ああもう、こりゃ完全に犯人だなー、と思いつつ権蔵を調査。権蔵の秘密欄を公開する。


・権蔵
 新宿で起きている通り魔事件の犯人。断章<犬死>に憑依されている。

 断章<犬死>

 攻:2 防:2 魔力:4

 魔法:火花

 特技:死


 断章に取り憑かれている時間が長いと、断章を魔法戦で倒しても取り憑かれていた人物は正気に戻らないという。権蔵に取り憑いている断章<犬死>を速やかに回収しなければならない。


◇メインフェイズ第1サイクル 辻 灯

 なんか最初に決めた魔力があんまりにも低すぎたので、調律で決め直した。ただ、そのために手番を1つ使ってしまったのが吉と出るか凶と出るか……。


◇メインフェイズ第1サイクル コンビニキャバクラゴルゴ69 螺子式メメクラゲ

 メメクラゲは桜田ジェニファーの後を追って新宿へと来ていた。向かうは噂で聞いたコンビニキャバクラ。自分もそこで勤める振りをしてジェニファーと出会おうという目論見だ。
 というわけで、早速からあげクンの店番などしていると、果たして40代の会社員と同伴出勤するジェニファーの姿が。化粧の濃いジェニファー、驚いた様子で、
「どうしてここに? ……人は皆変わっていくのよ」
「そうか。それはともかくお前の秘密を吐け」
 メメクラゲは魔道書なので人間の機微とかどうでもいいのだ。アンカーであるジェニファーに問題が起こると自分が現世に存在できなくなるから、仕方なく追ってきただけである。
 そういう感情の細やかさとは無縁なのに、恋の魔法でジェニファーの脳を快楽物質で満たし秘密をべらべら喋らせる。

・桜田ジェニファー
 中井店長との結婚を夢見ているが喧嘩して出てきた。母親のことが内心では気になっている。最近よく、高橋と山口に指名されている。


 ジェニファーの秘密が公開されたことで、新たなNPCのハンドアウト人物欄が公開された。

・中井亨輔
 34歳のイケメン。ゴルゴ69のコンビニ店長兼キャバクラの黒服。ジェニファーと肉体関係を持っている。客の隙を狙ってクレジットカードのデータをスキミングするなどの犯罪をしている。

・高橋信彦
 新宿区役所につとめている37歳。ジェニファーを良く指名している。ゴルゴ69の隣のゲイバーにも時々行くことが多い。中井が不正な行為をしていることを知っている。


・山口一
 45歳の会社員。妻子あり。ジェニファーにぞっこんでゴルゴ69に通い詰めている。最近、身に覚えのないクレジットカードの請求が多く、警察に相談した。


 メメクラゲは実はユニコーンと関係があったりなかったりするので、この時点でジェニファーが乙女でないことを知り、もう別にこの人死んでもいいかなーとか思っている。ひどい奴だ。


◇メインフェイズ第1サイクル 路地裏 鈴本洋右山

 鈴本先生、権蔵に魔法戦を仕掛けることに。
 早速真の姿を解放する鈴本先生。真の姿を解放して戦うと戦闘に有利な効果が得られる。鈴本先生の真の姿はエントロピーであるという。どうやって表現すんだこんなもん。しょうがないからブラックホールで相手を包み込んで何でものみ込む、とか何とかそんな感じで戦闘開始。
「死んで死んで~」とかお願いするエントロピー。
 対する権蔵は犬の死骸の精霊をにょっこり出しながら構える。
「欲望と犬死の戦いか。どう考えても欲望の方が上だよね」
 魔法戦の立会人となったギョピ沢が運命の流れを読んでそう予言した。
 実際、鈴本先生はノーダメージで犬死を撃破。断章を手に入れるのだった。


 以上でメインフェイズ第1サイクルは終了。
 こうやって第3サイクルの最後までに残りの全ての断章を集め、クライマックスフェイズで禁書の封印が叶うかどうか。時間があったら続く。